バフェットの師匠でありバリュー投資の父 ベンジャミン・グレアム

バリュー投資の理論を考案し「証券分析の父」と呼ばれるベンジャミン・グレアムをご存知でしょうか。世界一の投資家であるウォーレン・バフェットの師匠でもあるのです。

そんなグレアムは、どのような人物だったのでしょうか。

そして、50年以上経過した今でも読まれている2冊の名著を参考に、グレアムの投資方針とバリュー投資の分析方法を紹介します。

ベンジャミン・グレアムとは

出所:en.wikipedia

ベンジャミン・グレアム(1894年~1976年)は、米国のアナリストであり投資家です。今日でも「バリュー投資の父」、「ウォール・ストリートの最長老」とも呼ばれ尊敬を集めるています。

優秀な成績であったグレアムは、名門コロンビア大学を飛び級で卒業しウォールストリートで仕事を始めます。

ニューバーガー・ヘンダーソン・アンド・ローブ証券でメッセンジャーとして、株式や債券の価格を黒板に書き出していました。その後に調査レポートを書くようになり、短期間で会社のパートナーに昇格します。そして25歳の時には、年収60万ドル(現在価値:800万ドル)を稼ぐほど成功を収めていました。

1926年に、ジェムローム・ニューマンと共同で投資会社を設立。約30年後に、ここでウォーレン・バフェットが働くことになります。

しかし、1929年に起こったウォール街の大恐慌で破綻。この経験から、1934年に時が経っても読めれ続けることになる『証券分析』が書き上げられることになります。また、1949年には『賢明なる投資家』が出版されました。

証券分析:適切な価格で株式を買い、十分に検討して分散されたポートフォリオをつくれば、健全な投資が可能

賢明なる投資家:割安株の見つけ方とバリュー投資を成功させる方法

グレアムとバフェット

グレアムは、億万長者の投資家ウォーレン・バフェットの育ての親として知られています。ふたりの出会いは、グレアムがコロンビア大学で教鞭をとっている時でした。バフェットは優秀な成績を収め、グレアムの教え子の中で唯一A+をもらった生徒です。

そんなバフェットは、グレアムの会社で働くことを希望しました。一度は就職枠の関係で断られるものの後に雇用され、会社が解散するまで働きグレアムの知識を吸収しました。

バフェットはグレアムを信頼し、父親に次いで影響力のある人物だと語っています。そして、自らの子供にグレアムと名付けています。

グレアムの投資方針

グレアムが投資を行った株式の大半はバリュー(割安)株でした。多くの投資家が気づいていない企業の本来の価値を算出し、その価値以下の株に投資を行う方針を取っていました。

これには、1929年の暴落の教訓が生かされています。

成長株には、企業本来の収益力をはるかに上回る株価がつくことがあります。将来への期待感が過度に高まると、収益力から大きく乖離した株価がつく傾向があります。

しかし割安株の株価は、企業のもつ評価額よりも安い状態にあるため、下値余地が小さく、株式市場の急転の際にもリスクが小さい安全域であるがと説いています。

つまり、グレアムが重視している指標は、会社の将来の成長性ではなく、下落局面で耐え得る能力があるかどうかという点なのです。

そして、分散投資を推奨しています。しかし、過度にならない程度であり、目安として10銘柄以上30銘柄以下程度が望ましいとしています。

▼グレアムの投資の定義
投資とは詳細な分析に基づいたものであり、元本の安全性を守りつつ、かつ適正な収益を得るような行動を指す。

▼守るべきこと
投機的な要素を最小限に抑え、いつやってくるか分からない株価の下落に対して、財政的・心理的に備える必要がある。

企業の有形資産価値を大幅に上回る価格の株には投資を行なわない。

過去10年以上にわたってその企業が安定した収益を上げており、将来起こりうる低迷に備えた十分な規模と財政的な力を備えていることを確認しなければならない。

バリュー投資

企業の利益や保有する資産に対して、正しく評価されておらず株価が割安に放置されている銘柄に投資する手法のことをバリュー投資といいます。

株価が割安かどうかの判断は指標や分析方法により大きく異なり、絶対的なものはないといえます。そのため、投資対象となる企業の本来の価値を見極めるための分析が必要となります。同時に、将来への期待も含めて分析する必要があります。

ベンジャミン・グレアムの割安株7つの基準

株価が割安かどうかの判断は、具体的にどのように判断すれば良いのでしょうか。

『賢明なる投資家』では、割安株の基準について7つの基準を挙げています。

1.適切な規模

小規模な企業は、株価が市場平均以上に影響を受けやすいため除外するのが賢明。

大体の目安として製造業では年間売り上げが10億ドル以上、公益企業では総資産500万ドル以上であることが望ましい。

2.財務状態が十分に良い

製造業であれば、流動資産が流動負債の最低2倍(流動比率2:1)以上。

また長期負債が純流動資産を超えないことが重要。

流動資産1年以内に現金化される資産。1年以内に現金化できない資産は固定資産。
流動負債1年以内に支払いのある負債。支払いが1年以上先の負債は固定負債または長期負債。
純流動資産流動資産からすべての負債を差し引いたもの。

ベンジャミン・グレアムは機械設備などの資産価値を全く評価しません。長期、短期の負債は全て差し引きます。残るのは流動性資産のみとなります。

3.20年以上の継続配当

最低過去20年間、継続的に配当があることとしています。

継続的に配当を出している企業のスクリーニングは難しいですが、米国株には30年以上増配している企業が86社もあります。

※2021年2月17日時点

4.過去10年間で赤字決算がない

継続的に配当を出している企業のため、赤字決算では厳しいでしょう。継続して利益を出し、なおかつ直近10年堅調な収益をあげている企業が安定しているとしています。

5.1株あたり利益が10年間で最低1/3以上伸びている

企業の成長性を計る指標として、1株あたり利益(EPS)を確認します。過去10年間におけるEPSのうち、直近3年間の平均が最初の3年間の平均より少なくとも3分の1以上伸びている企業を、確実に成長していることの裏付けとします。

6.株価が過去3年の株価収益率の15倍以下

割安・割高を計る代表的な指標である株価収益率(PER)。

現在の株価が、過去3年間のPERの15倍を上回っていないかどうかを確認します。

7.株価が純資産価値の1.5倍以下

企業が持つ資産から、株価の下値を探る株価純資産倍率(PBR)。

現在の株価が、純資産額の1.5倍を以下の銘柄を投資対象とします。

ただし、PERが15倍以下の場合には、次の式を満たせば、PBRが1.5倍を超えていても許容範囲とします。

PER × PBR < 22.5( = 15 × 1.5)

そのため、最初にこの式を満たす銘柄に絞り込み、その中からより詳細な分析を行うという方法が良いでしょう。

ベンジャミン・グレアム~まとめ

グレアムには、絶対忘れてはいけない2つの投資のルールがあります。

「1つ目は、負けないこと。2つ目は、1つ目のルールを忘れないこと」

これはとても有名な言葉ですが、後にバフェットの投資の格言として受け継がれました。

まず負けない、相場で生き残るというルールは、安定した投資運用を行うための基礎中の基礎です。投機家ジョージ・ソロスも「生き残れ。儲けるのはそれからだ」という言葉を残しています。

リスクを抑えた安定した投資運用を行うために、グレアムのルールと投資法を参考にしてみてはいかがでしょうか。

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