パウエルFRB議長~最大雇用まで金融緩和継続

パウエルFRB議長の発言の要旨

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は2021年2月10日、ニューヨーク経済クラブで講演し、「失業者数と、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)後の就職難の可能性を踏まえると、最大雇用の実現と維持には緩和的な金融施策以上の取り組みが求められる」と言明した。

1月の米失業率は(実質的には)10%近い」などと指摘して、雇用の弱さに改めて懸念を示した。統計上の失業率は14.8%(2020年4月)から6.3%まで下がったが、労働参加率も1年で約2ポイント低下。職探しを諦めて労働市場から退出した生活者が多数おり、潜在的な失業率はさらに高いとみる。

さらに「堅調な雇用市場の恩恵を十分に実現するには、短期的な政策と長期的な投資による継続的な支援が必要」とし、「そうすることで職を求めている全ての人が技能と機会を与えられ、繁栄に貢献するとともに、繁栄の恩恵を享受できるようになる」と述べた。パウエル氏は「雇用の最大化まで現在の政策金利を維持し続け、最大雇用へ十分な進展がみられるまで現在の量的緩和政策も続ける」と長期の金融緩和を改めて宣言した。

FRBは最大雇用の目安となる数値として、4.1%の失業率を挙げており、その達成は23年までずれ込むと予測している。FRBはこれまでも、景気支援に向け借り入れコストを低水準にとどめると確約してきたが、パウエル議長は、昨年春に始まったパンデミックで引き起こされた雇用危機に一段と包括的な対応が必要と強調。バイデン大統領とイエレン財務長官の路線と歩調を合わせるものだった。

コロナ危機発生後、FRB当局者は連邦債務水準よりも現時点で経済のために行う必要がある対策に注目。パウエル議長もこの日の講演で、第2次世界大戦後の状況に言及し、現時点では誰もが職に就けるような雇用市場にはまだほど遠いとの認識を示した。

「物価は30年間にわたって低位で安定してきた」と述べ、インフレへの警戒感に言及することは一切なかった。インフレリスクよりも雇用回復を優先する姿勢を強調し、当面は2%を上回るインフレ率をめざすとした。質疑応答では財政悪化への懸念も問われたが「まず経済を強くするのが優先で、財政問題はその後の議論だ」と指摘した。

バイデン大統領が提案している1兆9000億ドル規模の新型コロナ救済法案に関する直接的な言及はなかったが、質疑応答で、米経済の可能性を満たすためには系統的で的を絞った戦略が必要との見解を表明。「米経済を可能な限り大きくし、米国の繁栄を可能な限り広範に共有するための国家戦略があれば素晴らしい」とした。

米国株式市場などの反応

パウエルFRB議長の水曜日のコメントは、米国は強い労働市場から「まだ非常に遠く」離れており、FRB政策の支援を撤回したり、バランスシートの縮小を考えたりすることは考えていないと述べたことで、FRB政策にはドーヴィッシュ、株式には支持的なものとなった。

株式市場は、原油価格上昇を受けエネルギー関連が上昇したが、テスラも含め自動車株が下落した。VIXは21.99で引けた。株式指数はまちまちで水曜日の取引を終えています。

ダウ工業株30種31437.80+61.97+0.20%
ナスダック総合13972.53-35.16-0.25%
S&P総合500種3909.88-1.35-0.03%

米10年国債金利は1.135%に低下。一時1.176%に上昇する場面があったが、8日に付けた11カ月ぶりの高水準である1.20%には届かなかった。ブレークイーブン・インフレ率(BEI)も2.20%に低下。序盤には2.21%に上昇し2014年以来の高水準となった。

出所:日本経済新聞、ロイター記事をもとにまとめました。

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