ITバブルはなぜ起きたのか?当時の社会背景と崩壊の理由を解説!

株式市場はその歴史の中で「バブル相場」と呼ばれる、株価が急激に上昇する局面をなんども経験してきました。

そのバブルの中でも記憶に新しいのが1998年から2000年まで続いた「ITバブル」です。ITバブルはインターネットバブル、ドットコムバブルとも呼ばれます。

投資家であれば、一度はバブルの恩恵を授かりたいと考えたことがあるのではないでしょうか。「ITバブル」とはなんなのか、また、バブルが起きた要因はなんだったのかを解説していきます。

1.ITバブル(インターネットバブル)とは?

ITバブルは、アメリカを中心として1990年代前半から2000年代初期までつづいた、インターネット関連銘柄が急騰したことを指します。

ITバブル時の「NASDAQ100指数」の月足チャートをご覧ください。

1996年あたりから価格の上昇が目立ってきて、1998年から2000年初頭までは4倍以上と急激な上昇があったことがわかります。

NASDAQ100指数は、アメリカの通信関連企業が多く組み込まれた株価指数ですから、ITバブルの株価急騰を顕著に表しています。

▼ITバブル時のNASDAQ100指数の価格変動(終値ベース)

1996年3月1997年3月1998年3月1999年3月2000年3月
価格609.69$797.06$1,220.66$2,106.39$4,397.84$
前月比+30.73%+53.15%+72.56%+108.79%

1996年3月の終値と2000年3月の終値をくらべてみると、上昇率は脅威の+621%。

インデックス投資をしていれば、この4年間で資産は7倍になったことになります。

この異常なまでの「株価の急上昇」がバブル最大の特徴です。

日本にもITバブルの恩恵

日本もアメリカが中心地となったITバブルの恩恵を受けました。

◆日経平均株価(月足チャート)1996年~2001年

ITバブルがより顕著になってきた「1998年後半から2000年初頭」の間では、日経平均も60%以上と大きく上昇しています。

国内の有名企業では、ソフトバンクGと光通信を筆頭に、楽天、ライブドア、Yahoo! JAPANなどの通信系企業が大きく株価を伸ばしました。

◆ITバブル時のソフトバンクグループの株価

出所:株探

◆ITバブル時の光通信の株価

出所:株探

2.ITバブルが起きた社会背景

ITバブルの概要がつかめたところで「なぜITバブルが起きたのか」、「ITバブルが起きた社会背景」に焦点を当てていきます。

ITバブルが起きた要因として、主に以下の3点があげられます

・e-コマースの隆盛
・アメリカの低金利政策(1998~1999)
・投資家の過度な強気姿勢

e-コマースの隆盛

1980年代後半になると、いままでの対面販売ではなく、インターネットを通じて消費者と商品やサービスのやりとりをする「e-コマース」と呼ばれるビジネスモデルが出現しました。

実店舗をもつことなく、対面販売よりも多くの消費者に対してアプローチができるe-コマースは人気を集め、その結果として情報技術に長けている「IT企業」に多くの資金が集まりました。

低金利政策

e-コマースブームを後押ししたのが、1998年から1999年の間行われた「アメリカの低金利政策」です。低金利になるということは、起業家や企業はお金が借りやすくなるということです。

この低金利を背景に、IT関連のベンチャー企業が多く設立されました。そして投資家たちもネット化の流れを信じて疑わず、IT企業やITベンチャーに次々と投資していきました。

投資熱の過熱

ITバブルのように、特定の分野への投資熱が異常に加熱してくると、企業本来の適正株価をはるかに超えた株価をつけている企業や、赤字にも関わらず時価総額が拡大する企業も増え始めていきます。

以下はITバブルで株価、時価総額ともに急上昇した「INTC(インテル)」の月足チャートです。ITバブルピークの2000年はじめには、66.84ドルという上場来高値を更新し、当時の時価総額は4016億ドルでした。

こうした、「e-コマース市場の拡大」「アメリカの低金利」「投資熱の過熱」が重なることで、「ITバブル」が形成されていったということです。

3.実際にITバブルで株価が急騰したあの有名企業!

本節では、実際にITバブルで株価が高騰した有名米国企業を3社紹介していきます。

・Apple Inc.
・Amazon.com Inc.
・Ebay Inc.

アップル(Apple Inc.)

アップルは、音楽プレイヤーの「iPod」や人気スマホシリーズの「iphone」、タブレット端末の「ipad」など、私たちの生活になくてはならない電子機器を常に開発してきた超有名企業です。

現在(2020年8月)は440ドル前後の株価をつける世界最大手の企業となっています。しかし、ITバブルの前の株価は1ドルにも満たない状況でした。

◆ITバブル期のAppleのチャート

1998年の初頭の株価は0.75ドル程度でしたが、ITバブル最盛期の2000年3月の終値は「4.85ドル」で、株価は約7倍に膨れ上がりました。

バブル崩壊とともに株価は急落しましたが、その後、iPodやiPhoneなどの端末で成長をつづけ、ITバブルの高値を突破。2020年には株価が400ドル超えであることから、1998年時点にアップルの株を買っておけば、今ごろ400倍以上になっていたことになります。

アマゾン(Amazon.com Inc.)

ECサイト最大手「Amazon.com」は、誰もが一度は買い物で利用したことがあるのではないでしょうか。今では世界各国で利用されているAmazonですが、ITバブル時にはe-コマース企業として大きな注目を集めました。

1998年1月の終値は4.95ドルでしたが、1999年12月には一時113ドルという高値を記録。およそ20倍もの値上がりとなりました。

しかしながら、現在(2020年8月)の株価は3000ドルを超えており、Amazonは、テンバガー株が霞んで見えるほどの成長を遂げてきたことがわかります。

イーベイ(eBay Inc.)

最後に、190カ国を対象に商品を出品できる大手オークションサイト「eBay」を運営している「eBay Inc.」を紹介します。

日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、世界的には知名度は高く、多くのユーザーが利用しています。

eBayの株価も、ITバブルの加速にともない上昇をつづけていきました。1998年10月には1ドル前後でしたが、バブル崩壊直前には9.26ドルという高値をつけました。

しかし、現在(2020年8月)の株価「55ドル」と比べれば、まだまだ成長段階であったことが伺えますね。

米国と日本のITバブルの際にもてはやされた銘柄の大きな違いは、バブル時の高値を更新しているかどうかです。

米国株は、多くの銘柄がITバブル時の高値を大きく更新していますが、日本株は未だに当時の高値に届かない銘柄が多数あります。このあたりも、日本と米国の成長基盤の差が大きく影響しているようですね。

4.ITバブル崩壊とそのきっかけ

バブル相場というものは、その名の通り、泡のように膨らみいつか弾けて消えて

しまいます。今回のテーマである「ITバブル」も例外ではありません。

ここからは、ITバブルはどのようにして崩壊していったのか紹介していきます。

米国ITバブル崩壊の原因

ITバブルの中心地アメリカでは、「FRBの米ドル利上げ」がバブル崩壊のきっかけとなりました。

つまり、金利が引き上げられた分、お金が借りづらくなってしまったのです。そうなると、今までの異常なまでの投資熱が冷め、株価は急落という結果になりました。

株価が急落すると投資家たちは、一気に冷静になり売り注文が次々と出され、ITバブルは崩壊するに至りました。

先ほどのNASDAQ100指数のチャートを見ても分かるように、2000年のピークを境に、価格が暴落していったのがわかります。さらに2001年9月の「アメリカ同時多発テロ」が株価下落に拍車をかけました。

先ほど例としてとりあげた「INTC(インテル)」の時価総額は2002年の10月には、ピーク時の4分の1以下の「945億ドル」まで下がってしまいました。

日本のITバブルはいつ弾けたのか

それでは、日本のITバブルはいつ、何が原因で終わったのでしょうか。

ITバブル崩壊の引き金を引いたのは、光通信社による携帯電話売買の不正発覚です。光通信は、ITバブルで最高値「241,000円」という値をつける超人気銘柄でした。

そんな超大型株の企業で不正が見つかったとなれば、多くの株主たちは下がる前に持ち株を売っておこうと考えます。光通信は20日連続ストップ安となるほどの暴落を演じました。そのほかのIT・通信関連株への影響も大きく、日本のITバブルも終わりを告げました。

結果的に、光通信の株価は、2002年1月には「970円」まで値を下げました。ピーク時の株価と比べると、約250分の1になってしまったのです。

バブル相場では、「大儲け」と「大損」が紙一重に存在していることがよくわかります。

5.まとめ

今回はITバブルが起きた背景から、崩壊の原因まで紹介してきました。バブル相場はその名の通り、一気に膨れ上がったあと、泡のように儚く弾けてしまいます。

しかし、急騰銘柄の中には、アップルやグーグル、アマゾンなどのその後の爆発的な成長性を秘めた銘柄が眠っていることもあります。

バブル相場は「目先の急騰に飛び乗る」ことは大事かもしれません。しかし、どこまでが実態なのか、また企業の成長性やビジネスモデルを吟味し、長期を見据えればどの段階にあるのかなどを考えながら投資を行うことが良いのではないでしょうか。

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