伝説の投資家の一人ピーターリンチはどんな人物なのか、生い立ちから投資スタンスまでわかりやすく紹介

ピーター・リンチという投資家を知っていますか?彼は、マゼランファンドというファンドで記録的な好成績を残したり、さまざまな投資名言を残した伝説の投資家のひとりです。

特に、機関投資家や専業トレーダーに限らない、全投資家に共通する投資スタンスや考え方を残している学ぶことの多い投資家です。

今回は、そんな米国の超有名投資家ピーター・リンチの生い立ちや、投資に対する考え方をわかりやすく紹介していきます。

ピーター・リンチの経歴

まずは、ピーター・リンチの経歴を簡単に紹介していきます。

▼ピーターリンチの人生年表

1944年:マサチューセッツ州ニュートンで生まれる

1951年:リンチが7歳のときに父が癌にかかる

1954年:父が死去、リンチが働く必要がでてくる

父の死後(リンチが10代前半のとき):家計を助けるためゴルフのキャディーとして働く

1964年:初めて株式投資をする(貯金を使いフライングタイガー航空に投資)

1965年:ボストン大学を卒業

1966年:有名投資信託運用会社「フィデリティマネジメント&リサーチ社」でインターンを開始

1969年:フィデリティの正社員として採用される

1974年〜1977年:フィデリティのリサーチディレクターを務める

1977年~1990年:マゼランファンドのファンドマネージャーに就き、年平均リターン29.2%の好成績を納める

現在:フィデリティの副会長を務めるかたわら、非営利団体や同社のアナリストに対して投資教育をしている

この経歴をみるだけで、リンチの真面目さや投資に関するスキルの高さが伺えます。

特に入社8年後にはファンドマネージャーになり、S&P500の成績の約2倍のアウトパフォームを誇る成績を残したという事実には驚かされます。

しかし少年時代には父を無くし、家計を助けるために10代前半からゴルフ場のキャディーとしてアルバイトをしていたという苦労がりました。

しかし、このキャディーの経験こそ、投資人生が大きく変わるきっかけとなりました。リンチは、キャディーとしてビジネスマンとゴルフコースを回るなか、ビジネスマンの成功話や株式市場に関する話を聞いて株式市場に興味を持つようになったそうです。そして、フィデリティの社長であるD.ジョージ・サリバンのキャディをしていたため、フィデリティインベストメントのインターンとして働く機会を得たのです。

もし、キャディーではない他のアルバイトをしてビジネスとは無縁の生活を送っていたら、現在の伝説の投資家ピーター・リンチはいなかったのかもしれません。

投資の利益で教育費を支払い

大学の2年生の時に、初めてフライングタイガー航空に投資しました。その時の株価は約8ドルでした。そして、リンチが大学院への資金作りとして売却したタイミングにはなんと約80ドル、テンバガー(10倍株)を達成していました。

初めて投資をした銘柄で、テンバガーを達成していることからも、類稀なる分析力と審美眼がうかがえます。

それから2年後、リンチは、投資信託の運用・販売をしている「フィデリティマネジメント&リサーチ社」にインターンとして働き始めました。このインターンで「企業調査・レポート作り」の業務を担当し、投資に関する実務経験を積みました。

そして、フィデリティ社の正社員になると、繊維、金属、鉱業、および化学産業のリサーチ業務を中心に担当。そのリサーチ能力が買われ、2年後には、かの有名ファンド「マゼラン・ファンド」のファンドマネージャーに就任しました。

ファンドマネージャーとしての功績は次節で詳しく紹介するので、ここでは割愛します。

そして、現在はフィデリティ社の副会長をしながら、自身の財団や同社のアナリストに対しての教育や助言を行なっています。

また、リンチは多くの著書を執筆しており、投資家のバイブルとして根強い人気があります。

リンチの経歴だけでは、彼の人柄を全て測ることはできませんが、緻密な分析能力と、情報収集力の高さからは、コツコツと努力を積み重ねることのできる真面目な人物像が思い浮かびます。

ファンドマネージャーとしての偉大な功績

ピーターリンチの功績といえば、マゼランファンドの運用実績が有名です。

リンチがファンドマネージャーに就任したとき、マゼランファンドの預かり資産1800万ドルほどの比較的規模の小さいファンドでした。

リンチは一部のセクターに投資をする集中投資を行い、公益セクターにファンドの25%にあたる金額を投資しました。また、PBRが0.5未満で推移していた金融機関400銘柄をポートフォリオに加えました。

この集中投資が功を奏し、規模の小さかったマゼランファンドは、リンチがファンドマネージャーを務めていた13年間のうちに、預かり資産140億ドルを超える超大型ファンドへと成長しました。

単純計算で、ファンド規模を約777倍にまで成長させたのです。この功績を受け、リンチは全米No.1ファンドマネージャーとしてその名を全世界に知らしめました。

ピーター・リンチから学ぶ投資に対する考え方

リンチはこれまでに、数々の投資に関する金言を残してきました。そこで本節では、投資家であればぜひ知っておきたい彼の「投資に対する考えを表す言葉」をいくつか紹介していきます。

①一度に保有するのはせいぜい5銘柄

このリンチの言葉は、投資資金があまりない個人投資家にとって、資産を分散させることは「資産を築く」という観点からはあまり効率的ではなく、資産を増やしたいと思っている場合は、銘柄を絞ってそこに集中投資をするのが良いという意味合いを持っています。

この言葉を残した際に、リンチは銘柄を子供に例えて、面倒を見ることができるのはせいぜい5人が限界で、投資でも同様のことが言えると話したそうです。

分散投資は、資産をインフレなどのリスクから「守る」投資で、集中投資は資産を「築く」投資であるというリンチの言葉には、ハッと気づかされるものがありますね。

②知っているものに投資すべきである

自分がよく知っている会社で、さらに調査・分析をしっかりと行った銘柄に投資をすべきだという教えです。

注目を浴びているテーマ株は、一時的な利益を生み出してもブームが去ったり、機関投資家の空売りを受けるリスクがあります。

そのため、自分の身の回りのものをしっかりと観察し、この企業なら今後も成長していくのではないかと自分で判断できるものに投資をしようと、リンチは言っているのです。

この話の通りに、リンチはダンキンドーナツに客として訪れた際、出されたコーヒーの味に感銘を受け、 同社に投資したという話があります。

③成功の99%は努力の賜物である

2つ目の名言と通ずるところがあるのですが、地道なリサーチや企業分析をしっかりと行わなければ、投資家としての成功はほぼ不可能だという意味でしょう。

楽に儲けようと考えれば投資の成功はかえって遠ざかってしまうもので、急がば回れともいうように、日々の勉強や自分のトレードの反省が投資の成功には必要不可欠なのです。

④株は買いたいが、下調べは面倒だしその時間もないという場合は、株式投信に投資すること

集中投資のイメージがあるリンチの言葉と聞くと、少し意外に感じます。

しかしリンチの聡明さを表すように、全投資家に同じ投資手法を進めるのではなく、知識や分析スキルがないけれど投資がしたいという方には、インデックス投資としてS&P500などの指数に連動した投資信託に投資をするのが良いといっています。

こうしたリンチの投資の教育者としての優れた一面が、こうした名言に現れていると言えます。

ピーター・リンチが挙げる完璧な株の条件

投資対象として素晴らしい会社は、誰からも注目されていない会社だとしています。

  • 面白みがなく退屈な名前の会社
  • 単純な事業を行っている会社
  • 感心しない業種
  • スピンオフ企業
  • 機関投資家が保有せずアナリストがフォローしない会社
  • 悪い噂の出ている会社
  • 気の滅入る会社
  • 無成長産業の会社
  • ニッチ産業の会社
  • 買い続けなければならない商品を販売する会社

これを聞くと絶対に買ってはいけない会社のようです。しかし、そのような銘柄にこそチャンスがあることを、倒産秒読みだと言われていた自動車メーカークライスラーへの投資で実践し、成功させています。

まとめ

ピーターリンチは、投資を行っていれば誰もが知ることになる名前ですが、ウォレット・バフェットのように一般の人には知名度が低いでしょう。しかし、マゼランファンドのパフォーマンスはバフェットに負けておらず、厳選銘柄に集中を行うことで資産を大きく増やすセオリーだと分かります。

リンチは「誰もが株式市場を理解する知力を持っている。小学校5年生までの算数をやり遂げていれば、あなたにも絶対できる。」と株式投資は難しくないと語っています。

ここには書ききれない、数多くの投資のアドバイスを語っています。

それらは「ピーター・リンチの株で勝つ」や「投資で一番大切な20の教え」等の本に書かれていますので、興味のある方は読んでみてください。

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