みなさんは投資のお手本にしている、もしくは投資スタイルを尊敬している投資家はいますか?特定の偉大な投資家を意識しているという人もいれば、自分が吸収した知識のルーツを辿ったら以外な著名投資家の投資理論だったということもあると思います。
例えば「強気相場は、悲観の中に生まれ、懐疑の中に育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく」という投資格言。これはバリュー投資の天才「ジョン・テンプルトン」が残したとされる名言です。
みなさんの投資手法の中には、かつての著名投資家のアイデアが凝縮されているのかもしれません。
裏を返せば、歴代の名だたる投資家の生い立ちや投資スタイルを学ぶことで、自分の投資に活かすことも可能になるはずです。
今回は、前述の投資格言で有名な「ジョン・テンプルトン」について紹介します。
バリュー投資の名人「ジョン・テンプルトン」の経歴
「ウォール街でもっとも賢明な投資家」とも称されるジョン・テンプルトン氏は、どのようなキャリアを積んできたのでしょうか。
▼ジョン・テンプルトンの主な経歴
1912年:アメリカ、テネシー州のウィンチェスターに生まれる学生時代:イェール大学に通学、学費の一部をポーカーで稼いだお金で賄う。 イェール大学を首席で卒業後、オックスフォード大学の奨学生として通い、米国の証券アナリスト資格である「CFA (charactered finance analyst)」の資格を取得。 1930年代の世界大恐慌:ニューヨーク取引所に上場している企業の株を購入し、第二次世界大戦後まで保有することで莫大なリターンを得る 1954年〜1959年:テンプルトン成長ファンドを設立、その後原子力エネルギーや化学関連といった特定産業を対象にしたファンドの設立も行う 1960年代半ば:日本への投資を行う 1984年:テンプルトンレリジョントラストという宗教信仰関連の慈善活動も行う 1987年:ジョンテンプルトン財団を設立、科学や宗教学に関する功績に対して「テンプルトン賞」を授与している。受賞者には助成金も贈呈される。 2007年:タイム誌の「最も影響力のある100人」に選出される、また慈善活動も引き続き行い自身の名がついたテンプルトン大学などを設立 2008年:数々の功績を残し永眠 |
大学を首席で卒業したり、学費をポーカーで稼いだりと数々の目を惹くエピソードがあるテンプルトンですが、一番注目したいのが人並み外れた「逆張り投資のセンス」です。
テンプルトンは、大恐慌や第二次世界大戦前の株価が軒並み暴落している際に大量の株式を買いつけ、終戦後に株価が上昇した時点で売り抜け。また、後にバブル相場がやってくる日本の株式市場に一足先に投資を開始していたりと、比類を見ない投資家であったことがわかります。
また、テンプルトンは非常に道徳や善行を重視する投資家でもあり、自身の資産を使い慈善活動も多く行なっていたという一面も持っています。
テンプルトンは、聡明かつ道徳的な、まさに投資家のお手本のような人だったのです。
テンプルトンの投資スタイルは「バリュー投資」がメイン
テンプルトンの投資スタイルは「ジョン・テンプルトンの10の投資理念」という10項目に色濃く表されています。
▼ジョン・テンプルトンの10の投資理念
- 実利を目指して投資をする
- 偏見は持たない
- 大衆の後追いをしない
- マーケットは常に変化する
- 人気株を避ける
- 過去の誤りに学ぶ
- 悲観で買い、楽観で売る
- 価値ある掘り出し物を見つけ出す
- 世界中を探す
- 全てを知ることはできない
この10項目に共通していることは、「思考の柔軟性」と「大衆と同じ行動をしない」、そして「実力を過信してはいけない」ということではないでしょうか。
特に、変なこだわりや「持ち株はまだ上がるだろう」と根拠のない思い込みをしてしまうと損失は避けられないとテンプルトンは教えてくれています。
8番目の「掘り出し物を見つけ出す」というのは、分析力やビジネスセンスなども関連してくるため、なかなか難しいですが、その他の「損しないため」の教えは今からでも実践できるのではないでしょうか。
PEGレシオを重視
企業の適正な価値を測る際、テンプルトンはPEGレシオを重要視したとされています。
10年間の平均成長率がPERの1倍以下(PEGレシオ1倍以下)であるかどうかが、企業の割安を判断する基準となります。
ただし、PEGレシオほかにも、業界平均の売上高成長率・収益力や負債比率、ブランド力や経営者の株主還元姿勢などを考慮し、総合的に判断したようです。
大恐慌の最中の第二次世界大戦開始時に株を買い付けた逸話も
実際にテンプルトンは、大恐慌真っ只中で、マーケットは悲観ムード一色だったときに、ニューヨーク市場に上場している企業の株を104社の株を買い付け、その後大きな利益を出したという逸話も残されています。
当時は第二次世界大戦が開始され、株式市場の環境は最悪でした。それでも、「悲観で買う」というテンプルトンの言葉通り、株を買い利益を得たのはさすがの一言です。
近年では、コロナショックで株価の大暴落が起きましたが、大暴落時に大きく買っていた投資家は大きな利益を獲得しています。
日本のバブル相場でも大きな利益を獲得
もう一点、テンプルトンの逆張り投資の才を強く感じるエピソードが「日本株への投資」です。テンプルトンは自身のグローバルファンドを設立後、1960年代半ばから1987年まで日本株への投資を続けていました。
1970年代では、日本株のバブルを予想し、運用資産の半分ほどを投資していたそうです。これだけでも十分すごいのですが、テンプルトンの凄さはここでは終わりません。
売り時もバブル崩壊前の「1887年」とバブル最盛期に売却を行なっていたんです。そして知っての通り、その後に日本株バブルは終焉を迎え、株価は大暴落していきます。
まさに、「世界中を探し」「偏見を持たず」「悲観で買い、楽観で売る」というテンプルトンの投資スタンスを色濃く表すエピソードですね。
ジョン・テンプルトン~まとめ
ジョン・テンプルトンが残した言葉は、日本の相場格言「人の行く裏に道あり花の山」と近しいものがあります。逆張りはリスクが高いといわれますが、群集心理を理解すれば正しいタイミングで購入することができ、高い利益をあげることができることを証明しています。
暴落相場での売買に困った場合は、テンプルトンの言葉を思い出して相場を俯瞰してみると相場の底打ちが見えてくるかもしれません。