商品市場急落~中国の動向に注意

中国による戦略備蓄の放出で商品市場が急落の恐れ

商品市況について中国政府が戦略備蓄を放出するかもしれない懸念が出てきました。そうなると商品市場は急落するかもしれません。しばらく商品市場は要注意です。

今週中国の生産物価指数が発表されました。一部に中国初の世界的インフレ懸念の声が上がる中、前年比9%という数字は、中国当局が最も懸念していることでしょう。5月より中国当局は商品価格の上昇を懸念し始めており、一部消費先物市場での取引制限など投機的動きをけん制し始めています。世界的な商品価格上昇の大きな要因として、中国政府一体となった備蓄増加を目指した買い付けと言われています。鉄鉱石、銅、農作物など商品全般で中国筋の買い付けが報告されています。

世界の鉄鉱石や銅の需要の約半分(50%)は中国が輸入しています。商品市場参加者はいつ中国の戦略備蓄が放出されるのかを戦々恐々として見つめています。実際、3月以降の商品市況上昇の大部分は、生産者や加工業者のショートカバーを言う側面がシカゴ、NYのCFTC報告から見てとれます。5月になってからは、投資目的のファンド筋のネット・ロングは縮小しています。そうしたなか商品市場は5月中旬まで上昇を続けてきました。

5月中旬以降、中国当局の先物取引規制発表以降、商品市況は軟調な動きになっています。今後中国政府は生産物価指数を抑制するために、戦略備蓄を本格的に放出もしくはこれ以上国際商品市場で買い付けを控えるということが起こっても不思議ではありません。コロナ・ワクチン接種が世界的に拡がりつつあり、それに合わせて実体経済が元に戻る動きは進んでいくでしょう。景気回復期待に伴い上昇を続けてきた商品市場ですが、中国の動向次第で昇進市場での価格上昇期待値ははげ落ちてくるのかもしれません。6月以降の商品市況には要注意です

参考となる記事を紹介しておきます。

中国の重要経済データに関する注目ニュース

中国、統制で価格ゆがむ 卸売物価5月9.0%上昇

最終製品に転嫁進まず

日本経済新聞2021年6月10日

【上海=川手伊織】中国で生産コストが高騰するなか、最終製品への価格転嫁が遅れている。5月の卸売物価指数は前年同月比9.0%上昇したが、消費者物価指数(CPI)の伸びは1.3%にとどまった。生活品の値上がりが庶民の不満を高めると懸念する政府が価格統制を強めているのが一因で、企業の採算悪化につながっている。中国国家統計局が9日発表した卸売物価指数の上昇率はリーマン・ショックが起きた2008年9月以来、12年8カ月ぶりの大きさとなった。21年1月にプラスに転じた後、4カ月で8.7ポイントも拡大した。原燃料価格が上昇しているためだ。

卸売物価指数のうち、資源や加工品など生産財は12%上がり、過去最高の伸び率に並んだ。資源高が石油や石炭、非鉄金属の加工品にも広がりつつある。20年春に新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で国際商品市況が大きく悪化した反動もある。中国の気候変動対応も物価押し上げ要因だ。習近平(シー・ジンピン)国家主席は「30年までに二酸化炭素(CO2)排出量をピークアウトさせ、60年より早く実質ゼロにする」という努力目標を掲げた。指導部の大方針をうけ、河北省唐山市の地元政府は地場の鉄鋼メーカーに減産を指導した。鉄鋼業は供給制約も重なり4割上がった。

対照的に、消費者に近い最終製品の値上がり幅は小さい。CPIは3カ月連続で伸びたが、主因はガソリンなど自動車燃料で21%上昇した。主要国の中央銀行が物価の趨勢を分析するうえで重視する「食料とエネルギーを除くコア指数」は0.9%どまりで、新型コロナ後の低空飛行から抜け出せていない。

小売りの現場まで価格転嫁が進まない一つの要因に、中国政府による価格統制がある。

「不法な値上げの手掛かりをしらみつぶしに調べる」。中国国家発展改革委員会(発改委)は9日、資源高への対応をめぐり、価格モニターの担当者らを集めた会議を開いた。前日8日にも各省や直轄市の政府関係者を集めたビデオ形式の会議で「物価上昇に対応し、庶民の生活を守る仕組みを構築する」よう要求した。5月23日には鉄鉱石や鋼材など資源会社を集めて「過剰な投機が価格上昇を助長した」と強調した。国際商品市況の高騰に合わせた価格のつり上げをやめるよう直接指導した。

当局による価格統制は小売価格の上昇を抑える効果はあるが、副作用も大きい。中小企業などがコスト高と価格抑制の板挟みとなり、採算を悪化させている。国家統計局によると、中小零細企業が多い民間製造業は4月時点で21.7%が赤字だった。前年同月より5ポイント近く改善したが、新型コロナ前の19年4月を2.6ポイント上回った。

国際経済研究所の伊藤信悟氏は「新型コロナで企業に構造変化を問う圧力は高まったが、中国社会が対応するには一定の時間がかかる」と語る。

中国は就業者の8割が中小零細企業で働く。収益の回復がもたつけば、雇用に響きかねない。都市部の新規雇用は1~4月時点で新型コロナ前の水準に戻っていない。中長期的にみれば、価格統制など政府が市場に介入するツケは大きく、経済正常化の足かせになっている。国務院(政府)常務会議は5月、中小零細企業に雇用安定助成金を支給する方針を示した。財政で雇用の下支えを狙うが、中小零細企業の収益力が高まらない限り、力強い雇用や消費の拡大は見込みにくい。

日本経済新聞より引用
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO72741850Z00C21A6EA1000/

中国卸売物価、5月9.0%上昇 リーマン以来の伸び

消費者物価は3カ月連続上昇

日本経済新聞2021年6月9日

【上海=川手伊織】中国国家統計局が9日発表した2021年5月の卸売物価指数は前年同月比9.0%上昇した。リーマン・ショックが起きた08年9月以来の伸びだ。国際商品市況の回復に伴う資源高の影響が部品など中間財にも広がっている。5月の消費者物価指数(CPI)は1.3%上がり、3カ月連続で前年同月を上回った。

資源価格は昨春、新型コロナウイルスの世界的なまん延をうけ大きく落ち込み、卸売物価指数も下落が続いていた。21年1月にプラスに転じてから4カ月で伸び率が8.7ポイントも高まったのは、昨年の反動という要素もある。

業種別に見ると、鉄鋼業や非鉄金属の精錬加工業は前年同月比3~4割伸びた。石油・石炭加工業も34%上がった。原材料など川上にあたる生産部材が12.0%伸びた。一方、最終製品など川下にあたる生活部材の伸びは0.5%にとどまった。自動車やパソコンなど耐久消費財はなお前年同月の水準を下回る

CPIを押し上げたのもガソリンなど自動車燃料で、21.3%高まった。5月は初旬に労働節が絡んだ大型連休がある。外出規制が厳しかった昨年の反動で旅行客が増えたが、旅行関連の価格は1.0%下落した。

主要国の中央銀行が物価の趨勢を判断する際に重視する「食品とエネルギーを除くコア指数」は0.9%のプラスだった。緩やかに伸びは拡大しているが、1%台半ば~後半だった新型コロナ前の水準には届いていない。所得の改善が遅れているなか、資源高に伴うコスト上昇型の値上がりが家計の購買力を奪っている可能性がある。

日本経済新聞より引用
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM051NX0V00C21A6000000/

鉄鉱石や銅、中国政府の介入で急落 投機的取引を規制

“日本経済新聞 2021年5月26日

鉄鉱石や銅など産業用素材の価格高騰に急ブレーキがかかった。震源は最大の需要国である中国だ。行き過ぎた商品高が国内経済を冷やしかねないとの警戒感から、中国政府は5月に入り立て続けに取引規制の強化に動いた。大連や上海などの取引所に上場する先物価格が急落し、欧米市場を含む国際相場に波及している。

「このタイミングで当局の介入がなければ高騰に歯止めがかからなくなる可能性すらあった」。上海の先物会社、東亜期貨の担当者はこう語る。

大連商品取引所では、製鋼原料になる鉄鉱石の先物価格が急反落している。中心限月物は24日に一時1トン1016元と、12日に付けた過去最高値の1358元に比べて25%下落。上海期貨交易所(SHFE)に上場する銅先物も25日終値が1トン7万2340元と、10日に付けた約15年ぶり高値から8%下がった。自動車や家電など幅広い産業で使う鋼材「熱延コイル」の先物の25日終値も1トン5305元と、12日の最高値に比べ21%安い。

急落の引き金を引いたのは中国政府の規制強化だ。まず10日、投機を抑制するために大連と上海の取引所の証拠金引き上げなどを発表した。12日には中国国務院が国内外の商品価格を「監視しており、適切に対処する」との声明を発表。19日には「不合理な価格上昇を抑制する」として実需取引に影響を及ぼす方針も決めた。国内で資源の生産を増やすよう促すほか、鉄鋼製品の輸出関税を引き上げて国内の製品が減らないようにすることなどが柱だ。

23日には、国家発展改革委員会などが、資源会社を集めて価格高騰問題を話し合う会合を開催。「過剰な投機が価格上昇を助長した」と投機や買い占めを容認しない方針を示し、鋼材に加えて銅やアルミなど非鉄金属の取引過熱にも警告を発した。同委員会は25日にも、2025年までの第14次5カ年計画の期間中に、穀物などを含む主要な商品の価格管理を強化すると表明した。

新型コロナウイルス禍で停滞した世界経済が正常化に向かい始めたのを受けて、銅や熱延コイルといった産業用素材の価格は20年後半から上昇が続いてきた。その影響もあって4月の中国の生産者物価指数(PPI)は前年比6.8%と前月から上昇が加速。17年10月以来3年半ぶりの高水準に達した。物価高に伴う国内経済への下押し圧力を警戒した中国政府は、商品高の抑制へ具体的な介入を強めはじめた。

介入を機に5月中旬までの投機的な急騰は一旦冷やされた。一方で鉄鉱石などの先物価格は昨年末に比べてでなお7~25%ほど高い。世界経済がコロナ禍から立ち直る過程で様々な産業用素材の需要が急回復する一方、供給が追いつかないという状況自体は変わっていない。日本の鉄鋼メーカーの担当者も「非鉄を含む鋼材の需要は堅調だ」と話す。

産業用素材の価格高騰は中国自身の政策が招いた側面も大きい。鉄鉱石は主産地のオーストラリアとの関係悪化で供給の不透明感が台頭。脱炭素に大きくかじを切った余波で、鉄鋼や電力消費の大きいアルミなどの国内工場は減産を余儀なくされている。一連の規制強化は「中国政府が商品価格を制御できるかの試金石になる」(住友商事グローバルリサーチの本間隆行氏)。

マーケットエッジの小菅努代表は、中国政府が「金融的な引き締めによる総需要の抑制策まで踏み込むか」が次の焦点になると指摘。商品高抑制に傾倒しすぎれば、中国経済を冷やすリスクも高まる。中国の先物価格の動向は裁定取引などを通じ、ロンドン金属取引所(LME)の銅先物をはじめとするドル建ての国際商品の指標価格にも影響を与える。中国政府のかじ取りが、世界的なインフレ圧力の行方も左右しそうだ

(コモディティーエディター浜美佐、桝田大暉、蛭田和也)

日本経済新聞より引用
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB244480U1A520C2000000/

主要工業商品先物の商品価格推移

銅NY

出所:CME Group

銅相場の見通し~銅価格上昇期待でおすすめしたい2021年の銅投資

アルミニウム先物

出所:CME Group

主要農作物先物の商品価格推移

トウモロコシ先物

出所:CME Group

大豆先物

出所:CME Group
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