債券と株価の関係とは?長期金利と株価から相場動向を探る

経済ニュースなどで「長期金利の上昇で株価が下落しました」という解説を聞いたことはないでしょうか。

そのまま理解すると、金利が上昇すると株価が下落するということになります。

しかし、金利が上昇するということは債券が売られているということになります。一般的に、安全資産である債券が売られるときは、景気が良く株式が買われるはずです。

いったいどういうことなのでしょうか?

債券価格と金利、株価の関係に関して解説します。

株式と債券価格の関係

基本的なことを確認しておきましょう。

景気が良いときは債券を売って株が買われやすくなります。

今後、経済が良くなる見通しが高いため、リスクを取って株式を買った方が利益が上がりやすいためです。

一方で、景気が悪いときは債券を買って株は売られやすくなります。景気が悪いときは株価が下がりやすいため、安定した金利を得られる債券を買った方が資産を守ることにつながるからです。

つまり、基本的に債券が買われるときは株が売られ、債券が売られるときは株が買われるという逆相関の関係になっているのです。

◆金融市場のサイクル

債券価格と金利

投資の世界で代表的な債券といえば、米国10年債です。世界中の投資家は、この債券の価格よりも金利動向を気にしています。

NYダウやS&P500などの主要な米国株価指数との関係も深くなっています。

ここで、債券価格と金利の関係に関して抑えておきましょう。

債券が買われるときは、当然米国株価指数などの株式の価格が上昇します。その一方で、金利は低下します。

何故なら、買い手が多い時には金利を上げなくても良いからです。

一方で、価格が下落するときは金利は上昇します。買い手が少ないと、買われるために金利を上げる必要があるためです。

つまり、債券の価格と金利は逆相関となっているのです。

長期金利と株価動向

冒頭の話に戻しましょう。

「長期金利が上昇で株価が下落」という解説が正しいのであれば、債券が売られて金利は上昇。しかし、株価も下落するということになります。債券が売られるときには株が買われるはずなのに、おかしいですよね。

実際に長期金利と株価動向はどうなっているのか、2010年から2020年までの12回のケースを検証してみました。

▼金利上昇局面の際のS&Pの上昇率

開始終了日数金利の上昇率S&P上昇率
2010/10/72011/2/812457%14.40%
2011/9/222011/10/273540%13.70%
2012/1/312012/3/194832%7.40%
2012/7/242013/3/1123048%16.30%
2013/5/22013/12/3124386%15.70%
2015/1/302015/6/1013151%5.50%
2016/7/82017/3/1324893%11.40%
2017/9/72018/11/842759%13.90%
2019/9/32019/11/86633%6.40%
2020/3/92020/3/189120%-4%
2020/4/12020/4/8733%11.30%
2020/4/212020/6/54558%16.70%
期間:2010年10月~2021年6月

S&P500の平均変化率:10.73%
金利上昇局面の株価上昇率:91.66%

その結果、金利が上昇し債券価格が下落しているときは、ほとんどの期間で株価は上昇していることが分かりました。

つまり、金利が上昇すると株価が下落するという事実はほとんどないといえます。

債券と株価の値動きは逆相関になっているという基本の動きに忠実なのです。

では、なぜ長期金利が上昇すると株価が下落する場合があるのでしょうか。

それは、急激な動きに株式市場は敏感になるためです。

また、金融相場から業績相場への移行期に債券を売って株式へとポジションのリバランスが起きるために、金利が急騰するケースが多いとも考えられます。

これまでは金融緩和でFRBが債券を購入していましたが、それが無くなります。業績相場へ移行するのですが、今後の相場状況を確認するために保有していた債券を売却しキャッシュ(現金)にする投資家もいるために急激に債券の利回りが上昇。

その結果、株式市場でもキャッシュに戻す動きが加速し一時的に相場が急落するのではないかと考えられます。

その後、企業業績や消費活動が活発になると、再び株式を購入する動きが起こり本格的な業績相場へと移行していくのです。

債券と株価の関係まとめ

株式投資家の中には、企業の業績や競合分析に力を入れている人がいます。しかし、お金の大きな流れをつまむことのできる債券の動向を知ることで、今が相場のどう言った局面なのかを理解することもできます。

債券の動向をチェックすることで、相場の転換点に気づけたり急落の際の投資判断を行う役に立つかもしれません。

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