格付け会社をご存知でしょうか。
大手格付け会社ともなれば、会社の株価や時に為替相場の変動にまで影響を与えるほどになっています。つまり、格付け会社の評価を知ることで、相場動向をつかむヒントとなるといえます。
そんな格付け会社と市場に与える影響について解説します。
格付け会社とは
機関投資家が企業や国債などに投資を行う際に、十分な調査を行う必要があります。
膨大な数の投資商品に投資を行う機関投資家が、ひとつひとつの会社を調査するとなると大変なリサーチコストが掛かってしまいます。
その役割を担うのが、格付け会社が行う信用格付けです。
格付会社が投資家に代わって債券や企業を分析し、信用力を判断。投資家に情報を提供します。企業が債券を発行する場合、格付会社は債券の発行企業か調査を依頼する投資家から、情報提供料を得ることで利益を得ます。
有名な格付け会社として、以下の3社があります。
- ムーディーズ
- スタンダード&プアーズ(S&P)
- フィッチ
これらの3社は欧州市場で業界の約95%を占めるほどのシェアを誇っています。
ムーディーズは、1995年から2000年の間に税引き後総資産利益率が28.3%から55.0%と非常に高くなっており、著名投資家のウォーレン・ バフェット氏も古く から保有していることで有名です。
▼長期個別債務格付けのカテゴリーと定義(S&P)
カテゴリー | 定義 |
AAA | 債務者の能力は極めて高い |
AA | 債務者の能力は非常に高い |
A | 債務者の能力は高いが、上位2つの格付けに比べ、事業環境や経済状況の悪化の影響をやや受けやすい |
BBB | 財務内容は適切であるが、事業環境や経済状況の悪化によって債務履行能力が低下する可能性がより高い |
BB | 債務者は高い不確実性や、事業環境、金融情勢、または経済状況の悪化に対する脆弱性を有しており、状況によっては債務履行能力が不十分となる可能性がある |
B | 事業環境、金融情勢、または経済状況が悪化した場合には、債務履行能力や意思が損なわれやすい |
CCC | 当該債務が不履行になる蓋然性は現時点で高く、債務の履行は、良好な事業環境、金融情勢、および経済状況に依存している |
CC | 該債務が不履行になる蓋然性は現時点で非常に高い。不履行はまだ発生していないものの、不5履行となるまでの期間にかかわりなく、S&Pが不履行は事実上確実と予想する |
C | 不履行になる蓋然性が現時点で非常に高いうえに、より高い格付けの債務に比べて優先順位が低い、または最終的な回収見通しが低いと予想される |
D | 支払いが行われていないか、S&Pが想定した約束に違反があることを示す |
なお、格付けの発表時には見通し(ポジティブ、安定的、ネガティブ)も示されます。
投資適格とされる格付けは、BBB以上
それより低い格付けは、投機的格付。債券の場合はハイイールド債と呼ばれます。
投資適格:AAA、AA、A、BBB
投機的格付:BB、B、CCC、CC、C、D
格付け会社が金融市場に与える影響
機関投資家の投資動向を左右する格付け会社の信用格付け。
その影響は非常に大きく、欧州金融危機は格付会社が、ギリシャ国債の格付けを引き下げたことが大きな原因と言われているほどです。
格付けは社債だけにとどまらず、国債の格付けで国債利回りはもちろん、当該国の通貨を変動させるほどの影響を持ちます。
特に新興国の影響は大きく、2020年9月11日にムーディーズがトルコの格付けを「B1」から「B2」に引き下げた際には、翌週からトルコリラが大きく売られることとなりました。
こういったケースが多いため、「格付会社の市場に対する影響力が大きくなりすぎている」という問題が議論されています。企業の場合には、格付会社のレートの引き下げが、企業の上場廃止や場合によっては倒産の引き金を引いてしまうという問題があります。
それが格付会社は格付けの引き下げを躊躇させる原因となり、適切な格付けができなくなるというジレンマに陥っている会社もあるようです。
2001年に起きたエンロン事件の際には、米国において少なくとも8つの法律、47の規則、100以上の州法で公認格付機関の格付けが必要または参照されると報告されています。
一方で、サブプライム、リーマン・ショックでは、格付会社の行ったサブプライム関連の証券化商品に対する格付けが甘かったことが関連商品の肥大を招き、結果的に金融危機を引き起こしたとも言われています。
このことから、2013年5月に大手格付会社を対象とした規制案が採択。 格付会社と発行体の過度な癒着を防止することを目的に、仕組み商品では同じ格付会社を4年以上続けて採用してはいけない、という格付会社ローテーション制度が設けられました。
格付け会社が金融市場に与える影響~まとめ
格付け会社は、企業や国の信頼性を一目で把握できる有益な情報を提供してくれます。
その情報が、個人投資家にとっても資産を守ることに一役買ってくれるかもしれません。
国の政治が大きく変わった時や、企業の業績が悪化した際には、格付け会社が格付けを変更する可能性があることを留めておきましょう。