米国雇用統計とは?株式や為替市場にどのような影響を与えるのかわかりやすく解説

投資をしていてもしていなくても、日々のニュースなどでたまに耳にする「米国雇用統計」という言葉。「きっと米国の雇用状況を表しているのかな」程度に聞き流している方も多いでしょう。

世界一の経済大国である米国の雇用情勢は、経済を大きく左右することから、絶対に押さえておきたい経済指標です。

米国雇用統計とはどのようなデータで、株式市場や為替に対してどのような影響を与えるのか、実例を交えながら紹介します。

米国雇用統計とは?

米国雇用統計とは、非農業部門雇用者数や失業率を中心とした米国の労働市場の現状を表す経済指標です。毎月第1金曜日に米国労働省から発表されます。

【米国雇用統計で発表される内容】

・非農業部門雇用者数
・失業率
・労働参加率
・平均時給(前月比/前年比)
・週労働時間
・不完全雇用率
・建設業就業者数
・製造業就業者数
・金融機関就業者数
・サービス業就業者数

調査対象:全米の約16万の企業や政府機関のおよそ40万件のサンプルを対象に調査
調査対象期間:毎月12日を含む1週間
発表日時:毎月第1金曜日の米国夏時間午後9時半、冬時間午後10時30分
※日本時間

非農業部門雇用者は、農業部門を除いた労働者の増減を表すデータで、米国経済や景気の動向を分析するのに役立ちます。失業率も同様に米国経済の状況を顕著に表すため、主にこのふたつが重要指標として為替や株式関連のニュースとして取り上げられます。

次いで、労働参加率と平均時給が重要視されていますが、その他の指標はほとんど相場変動に影響しません。

そのため、米国雇用統計ではFXや株式投資(特に米国株)を考えている人は、4項目の数値を気にしておけば良いでしょう。

なぜ米国雇用統計は重要な経済指標なのか

米国雇用統計は、なぜ重要な経済指標として扱われているのか、その理由を説明します。

理由1:米国経済は世界の中心で影響力が大きい

ひとつ目の理由は「世界経済の中心である米国の経済状況を把握することができるから」です。米国雇用統計と聞くと「アメリカに限った話」と捉えてしまう人もいるかもしれませんが、そうではありません。

ご存知の通り、現在はグローバル化が進み、国と国との経済的繋がりが非常に強くなっています。こうした現在の世界経済の中心地である米国の経済状況は、繋がりのある世界各国の株式・為替に影響を与えています。

理由2:米国雇用統計はFRBの政策にも影響を与えるから

2つ目の理由は、この米国雇用統計の結果はFRB(連邦準備理事会)の政策方針にも深く関係しているからです。FRBとは日本でいう日本中央銀行の役割を担う、米国金融の中枢機関です。

なぜ、この米国雇用統計がFRBの政策方針にも影響を及ぼすかというと、FRBは、米国の景気を金融緩和や引き締めによってコントロールする役割があるため、雇用統計の結果によって金融政策を考える必要があるからです。

そして、FRBの金融政策への期待や警戒感から為替や株式市場が反応するという仕組みです。

ここで、注意しておきたいのが雇用統計が予想値より悪いからといって、必ずドル安や、米国株式市場が落ち込むというわけではないということです。

セオリーでは、雇用統計が予想値を上回ると「ドル高、株価上昇」、逆に下回ると「ドル安、株価下落」となります。

しかし、リーマン・ショックやコロナショックのような未曾有の事態においては、こうした一般法則が通用しなくなる場合もあります。どれほど悪い結果が出たとしても、既に結果が織り込まれており、結果が出ると米国雇用統計の結果によって、今後のFRBの政策や、米国経済の先行きがどうなりそうか、その時の状況に応じて柔軟に考えることが大切です。

米国雇用統計と株式・為替市場の関係性

米国雇用統計の発表が株式・為替市場にどのような影響をもたらすのか、実際のチャートと共に見ていきましょう。

以下のチャートは、新型コロナウイルスの感染拡大が始まった3月の米国雇用統計前後のチャートになります。

【3月6日 米国雇用統計の結果】

り非農業部門雇用者数予想:-10万人結果:-70万人
失業率予想:3.8%結果:4.4%

⇒予想値を大きく下回る内容に

この結果をうけ、新型コロナの影響の大きさ、そして先行きの不透明さが浮き彫りになり、ドル安、株安がすすみました。米国雇用統計が為替・株式市場に与えるインパクトの大きさがわかります。

まとめ

FXや株式投資をしていくうえで最も重要な経済指標のひとつ「米国雇用統計」について紹介しました。

大事なのは、結果よりも事前予想との乖離であり、事前予想は新規失業者数申請件数やADP雇用者数などが先行指標となっています。しかし、実際に発表されると大きく異なる場合もあり、翌月と翌々月に修正される場合もあります。

そのため、数カ月連続で好転または悪化すると景気トレンドが本格的になるという考え方ができるなど、1回の発表では判断が難しい経済指標でもあります。

プロのアナリストでも予想に苦戦する経済指標ですが、毎回ウォッチしていくことでファンダメンタル分析の腕も磨くことができ、投資で成功できる近道となるでしょう。

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