米国株への投資において様々な手法がありますが、非常に有名な「ダウの犬」投資法というものがあります。
これは米国のファンドマネージャー、マイケル・オヒギンズ氏が行っていた投資手法です。NYダウやS&P500のインデックスをアウトパフォームし、大きく成功を収めました。
誰でもできる簡単な売買手法ですので、知っておいて損はありません。
そんな「ダウの犬」の売買手法や実際のパフォーマンス、注意点などについて紹介していきます。
ダウの犬投資法とは
この売買手法は、名前にもあるようにNYダウに関連する投資手法です。
NYダウに構成される銘柄のなかから、利回りの高い10銘柄に同じ金額を投資。毎年入れ替え続けるという手法です。
【銘柄選定と資産配分】
- NYダウ30の中で配当の高い上位10銘柄を選定
- 10銘柄へ均等な資産で構成したポートフォリオを設計
- 配当金は再投資を行う
- 翌年に銘柄構成を見直す
この手法のポートフォリオは、NYダウに構成される超一流銘柄のなかでも、さらに配当利回りが良い銘柄に絞った超優良銘柄群が構成されるということになります。
10銘柄を選定ということが基本ですが、値上がり率を加味した5~10銘柄とさらに厳選する方法もあります。
いづれにせよ、超優良高配当銘柄というポートフォリオになっており、実績もあることから、大きな損失を出すということは考えづらいといえます。
また高い配当金が出ることから、これを再投資することが長期的に高いパフォーマンスを出すことにつながります。
パフォーマンス
ダウの犬の2000年以降のパフォーマンスを見てみると、S&P500(配当金込み)の上昇率がおよそ2倍だったのに対して、ダウの犬投資法では2.6倍と大きくアウトパフォームしています。
NYダウの上昇率と比較するとほとんど変わりませんが、配当金を加味すると少しアウトパフォームすることになります。
なお、2010年からの10年間のそれぞれの騰落率を見ると、ダウの犬がNYダウを大きくアウトパフォームしている年があります。
年 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 |
ダウの犬 | 20.6% | 14.9% | 9.9% | 35% | 10.8% | 2.6% | 20.4% | 25.1% | -3.52% | 15.45% |
NYダウ | 14.1% | 8.4% | 10.2% | 29.7% | 10% | 0.2% | 16.5% | 28.1% | 5.3% | 22.34% |
▼2010年から10年間の比較
勝敗:6勝4敗
平均上昇率:15.12% ※NYダウ14.48%
飛びぬけてパフォーマンスが高いとは言えませんが、やはり長年続けていくことで配当金で差がつくことになります。
▼2020年のダウの犬構成銘柄
No. | ティッカー | 銘柄 | 配当利回り |
1 | CVX | シェブロン | 5.53% |
2 | BA | ボーイング | 5.53% |
3 | IBM | IBM | 5.14% |
4 | WBA | ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス | 4.49% |
5 | VZ | ベライゾン・コミュニケーションズ | 4.15% |
6 | MMM | スリーエム | 3.39% |
7 | CSCO | シスコ・システムズ | 3.25% |
8 | MRK | メルク | 3.13% |
9 | KO | コカ・コーラ | 3.09% |
10 | JPM | JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー | 2.99% |
注意点
NYダウを上回るパフォーマンスを誇るダウの犬投資法ですが、スイッチングコストと減配リスクという注意点もあります。
スイッチングコスト
ダウの犬投資法は、毎年、まったく同じ銘柄を保有し続けることはほぼないため、何かしらの銘柄を決済する必要に迫られます。
ポートフォリオを組み替えるときに確定益が発生した場合、約20%の税金がかかるります。そのため、NYダウを保有し続けるよりも複利の効果が少なくなってしまいます。
そのため、パフォーマンスがあまり変わらない年が続いた場合、NYダウに連動しているETFを保有していた方が利益率は高くなる可能性があります。
減配
優良銘柄とはいえ、減配することは有り得ます。
減配となると、株価は5~10%程度下落する恐れがあります。仮に10%の下落となれば、全体の1%の資産減少となります。その場合は、早急にポートフォリオから外した方が良いかもしれません。
銘柄入れ替え
毎年8月末ごろに、NYダウの銘柄入れ替えが発表されます。
NYダウはわずか30銘柄しかありませんから、ダウの犬ポートフォリオ銘柄にも直撃する可能性は十分あります。
その場合、減配以上に大きな下落リスクを被る可能性が高いでしょう。
そういったリスクを気にする場合は、ダウの犬は諦めて高配当ETFを保有し続けるという方法もあります。
【高配当ETF】 バンガード・米国高配当株式ETF(VYM) ポートフォリオS &P500高配当株式ETF(SPDR) iシェアーズ高配当株ETF(HDV) |
まとめ
多くの投資信託やファンドがインデックスを上回ることができないなか、ダウの犬は実績がある堅実に資産を増やすための方法です。
GAFAなどの大型銘柄の派手さはありませんが、手堅く安定的なパフォーマンスを目指す投資家にとっては良い売買戦略ではないでしょうか。