夏に株を買うと儲かりやすいという話「サマーラリー」という言葉を聞いたことはありますか?でも「夏枯れ相場」という話も聞いたことあり、どっちが正解なのか分からないですよね。
そんな疑問を解決すべく、過去の値動きから夏の相場動向を検証してみました。
夏はリスクが高まる「夏枯れ」という現象 VS. 夏に株を買うと儲かる説「サマーラリー」いわゆる反対の内容の通説ですが、一体、夏の相場にはどちらの方があてはまるのか、そして、投資リターンが期待できる夏場の立ち回り方を探っていきたいと思います。
一般にこのような通説をアノマリーと言いますが、アノマリーには明確な根拠はありません。あくまでも、過去の観察から市場動向を探るために、当てはめていくものなのです。
絶対にこうなると約束されるルールのようなものではないため、検証が重要になります。
米国株市場の夏枯れ相場、サマーラリーとは?
いま一度、「夏枯れ相場」と「サマーラリー」の概念をまとめてみます。
夏枯れ相場は、市場参加者が減ることで投資リスクが高まる時期のことです。例えば、市況環境が少し崩れただけで、参加者の余計少ない時価総額が低い銘柄が執拗に売られたりするなど、ちょっとした変化に過敏になっている状態です。
一方、サマーラリーとは、俗にいう夏休み前に株が上がりやすい現象のことです。これは、ボーナスが出たので株を買っておこう!といった給料の支払いパターンと投資家心理が主な理由があるようですが、果たして真相はどうでしょうか。
<検証方法①>
36年分のナスダック、NYダウ、S&P500の月ごとのパフォーマンスを算出。7月と8月(1ヶ月)のパフォーマンス平均を計算します。その後、連続する2か月ごとのパフォーマンスを出して平均値と比較します。
検証結果
▼7月の勝率
ナスダック:61%
NYダウ:72%
S&P500:61%
ナスダックでは、7月の月間パフォーマンスがプラスの年は36年中22年でした。
7月の月間パフォーマンスは、ナスダックは年平均より下回るもののプラスです。NYダウとS&P500は、年平均よりも上回っています。
▼8月の勝率
ナスダック:58%
NYダウ:53%
S&P500:61%
一方、ナスダックの8月に関しては、パフォーマンスがプラスの年は36年中21年と確率で言うと58%です。
7月の傾向と比べて、下がる年の値下がり率が高く1か月のパフォーマンスとしてはNYダウとS&P500でマイナスでした。ナスダックだけかろうじてプラスという結果になりました。
過去36年のデータでは、7月8月を合わせた2ヶ月間のパフォーマンス平均はプラス0.88%となりました。連続する2ヶ月のパフォーマンス平均1.74%と比べて特に高パフォーマンスというわけではなさそうです。
2ヶ月PF | ナスダック | NYダウ | S&P500 | 日経平均株価 | 3指数の平均 |
1-2月 | 3.07 | 1.50 | 1.54 | 0.61 | 2.04 |
2-3月 | 1.36 | 1.33 | 1.27 | 1.42 | 1.32 |
3-4月 | 2.27 | 3.00 | 2.73 | 2.78 | 2.67 |
4-5月 | 3.10 | 3.21 | 3.11 | 2.45 | 3.14 |
5-6月 | 2.28 | 0.82 | 1.41 | 0.52 | 1.50 |
6-7月 | 1.70 | 1.37 | 1.28 | -0.30 | 1.45 |
7-8月 | 0.98 | 0.95 | 0.72 | -1.01 | 0.88 |
8-9月 | -0.29 | -1.15 | -0.93 | -1.78 | -0.79 |
9-10月 | 0.34 | 0.21 | 0.26 | -1.30 | 0.27 |
10-11月 | 2.40 | 2.54 | 2.15 | 0.79 | 2.37 |
11-12月 | 3.16 | 3.23 | 2.79 | 2.21 | 3.06 |
12-1月 | 3.85 | 2.40 | 2.57 | 1.23 | 2.94 |
平均 | 2.02 | 1.62 | 1.57 | 0.64 | 1.74 |
夏場に効率的にリターンが期待できる売買手法は?
夏相場の値動きの特徴から効率的にリターンが期待できる売買パターンや手法はないのでしょうか。
2か月ベースのパフォーマンス率をみると、8月と9月がマイナス傾向、10月からプラス傾向と切り替わってきます。株は「安く買って高く売る」のが基本ですから、短期投資では7月に買った銘柄は7月中に決済し、8月の下がりやすい時期を避けることが良さそうです。
7-8月は高値掴みに注意し、注目している銘柄が下落したとしても、月末あたりになるまで様子を見ながら慎重に下値を拾う姿勢が良いのではないでしょうか。また、中長期投資では買い増しのチャンスが到来する時期ともいえそうです。
それが9月10月以降になっても市況環境的には、過去のデータをみると後押ししてくれるのを期待できそうです。
【検証データ】
・過去36年のデータでは、サマーラリーの傾向は7月いっぱいまで
・8-9月まではパフォーマンスが落ちやすい
夏枯れ相場(サマーラリー)検証データを利用した投資判断
- 短期投資のリスク回避は、高値掴みに注意し安値を待つこと
- 安くなりやすい8-9月に買い場があればチャンスになる可能性がある
米国株のアノマリーまとめ
今回の検証では、どちらかというと「夏枯れ相場」のリスクが数値に表れる結果となりました。投資行動としては、初夏に稼いで、夏場はゆっくりと夏休みをとることが良さそうですね。
アノマリーを分析することで、投資のヒントになったりリスク回避に役立てることができます。
ご自身でも、こういった経験あるな、とかAが起きたらBになりやすいみたいな傾向が意外と身近にあると思います。ぜひ、自分なりの経験則も培っていけるようにしてみてください。