ロシアへの経済制裁SWIFT排除がロシア経済と世界経済に与える影響

ロシア一部銀行のSWIFTからの排除が決定

ロシアへの経済制裁の本丸と言われているSWIFTからの排除が決定されました。25日までに米欧日の第1弾の経済制裁が発動されていました。その骨子は、1)軍事産業や政府に近いロシアの銀行との取引停止、2)ロシア国債等の取引停止、3)ロシア政府幹部の資産を凍結するというものでした。軍事関係の銀行に絞り、一般経済への影響は最低限にしました。ロシア国債等の取引停止はその発行体の政府の資金調達を止めました。さらに政府幹部の米国内資産凍結はイランやタリバンの時にも行っています。

こうした措置は、銀行や証券などの個別の金融機関が行う。そのための命令は、国内法に基づき、日本でいえば金融庁のような金融機関所管の官庁が銀行などの金融機関に「通達」の形で行うことになります。一方、SWIFTの場合は金融機関間の「ネットワーク」であり、SWIFT停止はアプローチが違います。銀行を特定し、ネットワーク全体から外してしまいます。人体でいえば血管組織から外すことで、その血流を遮断するようなものです。

天然ガスや原油の決済は米ドル建て(基軸通貨)です。そのため、米国の銀行に最終的な決済を依頼することになります。つまり、資源関係に近い銀行との取引停止にすることである。また、全銀行にロシアの天然ガスなど資源の決済を停止するように命令(通達)を出すこともできます。SWIFTでも銀行別にネットワークを止めることもできます。

しかし、ロシアは国内に資源が豊富にあり、穀物など食料も自給できます。そのため、国際的な取引が停止されても、兵糧攻めの効き目は少ないとの観測もあります。天然ガスを始めとした資源の輸出先として、ロシアは最近、中国にパイプラインも開通させた。ロシアは強権国家陣営として中国と経済的な結びつきを強くしていたからです。

しかし、ロシアは多くの機械、自動車、(スマホ、半導体も含む)の輸入国です。今後こうした輸入も簡単にはできなくなります。SWIFTからの排除は、ロシア経済を窮地に追い込むことになります。ロシアの外貨準備は潤沢である(6430億ドル:約74兆円)と報道されていますが、外貨準備のほとんどは口座が凍結されるでしょう(米は現在検討中)。ロシアは外貨準備を換金することができなくなると、急速に財政状況は悪化すると予想されます。SWIFTに次は、全世界的なロシアの外貨準備の凍結になるかもしれません。

西欧諸国がさらにロシアの輸出製品の不買運動が今後増すと予想され、ロシア経済はさらに悪化していくことになるでしょう。国内のプーチン支持率は下がっていくでしょう。プーチン大統領はウクライナのナチズムに対抗すると言っていますが、どっちがナチズムなのでしょうか?

ロシアの外貨準備高

2021年6月末時点で、米ドルは16.4%、ユーロは32.2%、残りは、中国元、金。

ユーロ、中国元の残高が拡大しています。

出所:Bloombergより

ロシア一部銀行のSWIFT排除で合意、米欧が追加制裁

ロイター報道:2022年2月27日7:38 午前

米国、英国、欧州、カナダは26日、ロシアの一部銀行を国際銀行間の送金・決済システムのSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除することで合意した。ウクライナへの侵攻を続けるロシアへの新たな制裁措置の一環。共同声明は、欧州委員会、フランス、ドイツ、イタリア、英国、カナダ、米国の首脳が署名。制裁にはロシア中央銀行の外貨準備に関する規制も含まれ、数日中に実行する。

声明は「われわれはロシアに(ウクライナ侵攻の)責任を取らせる。この戦争がプーチン(大統領)にとって戦略的な失敗に終わるよう、共同で取り組む所存だ」とし、「われわれはきょう発表した措置に加えて、ロシアにウクライナを攻撃した責任を取らせるため、さらなる措置を講じる用意がある」とした。

欧州委のフォンデアライエン委員長は「ロシア軍がキエフやその他のウクライナの都市を攻撃する中、われわれはロシアに巨額のコストを科し続けることを決意している。そのコストとは、ロシアを国際金融システムとわれわれの経済からさらに孤立させるものだ」と述べた。

SWIFTから排除されたロシアの銀行は、世界での金融取引の大半ができなくなり、ロシアの輸出入を効果的に止めることになると説明。「これらの銀行は国際的な金融システムから切り離され、世界で事業を展開する能力が損なわれるだろう」とした。具体的にロシアのどの銀行がSWIFTから排除されるのかは、現時点では明らかになっていない。フォンデアライエン氏は、ロシアが「軍資金を使うのを」阻止するとし、中銀の取引を凍結し資産を換金できないようにすると述べた。さらに「ロシアの新興財閥がわれわれの市場で金融資産を使うことを禁止する」とした。

出所:ロイター

SWIFTとは何か?

「Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication」の略で、国境を越えた迅速な決済を可能にし、国際貿易を円滑に行うためのシステムのことです。このシステムに接続する銀行は、SWIFTメッセージを利用して支払いを行えます。同メッセージは安全とされ、大量の取引を迅速に処理できます。

SWIFTは国際貿易における資金送金の標準的な手段となっており、2020年の年次報告によると、SWIFTプラットフォーム上では、毎日約3800万件の送金メッセージがやり取りされた。年間では何兆ドルもの資金が同システムで送金されています。

1970年代に設立されたSWIFTは、サービスを利用する数千の加盟機関の協同組合。本部はベルギーにあり、世界200カ国の金融機関1万行以上が参加しています。日本には1981年に接続されました。銀行や証券会社をはじめとして約200機関が参加しています。日本銀行もSWIFTに参加していますが、これは中央銀行が各中央銀行に保有している口座(中央銀行預り金)の決済指示用で、具体的には、国や中央銀行同士の決済、特に為替介入や国債取引等で使用されています。

SWIFTでは、各銀行毎に「SWIFTコード」、正確には「BIC」(Bank Identification Code:口座番号のようなもの)を特定しています。すなわち、SWIFTではBICコードで、「国」や「銀行」まで特定が容易に可能で(付加的なデータを付ければ口座まで特定し)、送金を止めることなどが技術的には可能と考えられます。

SWIFTからの排除がなぜ深刻なのか?

ロシアの銀行がSWIFTから排除されると、同国は世界中の金融市場へのアクセスが制限されます。ロシアの企業や個人は、輸入品の支払いや輸出品の受け取り、海外での借り入れや投資が難しくなります。

ただし、電話やメッセージングアプリ、電子メールなど、他の決済チャネルは利用できます。その場合、制裁を科していない国の銀行を経由して支払いを行うことになりますが、代替手段は効率性や安全性が低い可能性が高く、取引量の減少やコスト上昇の可能性があります。

SWIFTからの排除は経済制裁に拘束されるのか?

SWIFTはベルギーと欧州連合の規則に拘束されます。EUは12年3月、イラン核開発計画を巡り制裁対象になったイランの企業や個人へのサービスをSWIFTに禁じた。対象には中央銀行や大手銀行も含まれたことがあります。

ロシアSWIFT排除が世界経済に与える影響は?

輸出企業にとっては、ロシアへの商品販売のリスクとコストが増加します。ロシアは製造業製品の大口購入国で、世界銀行のデータによると、オランダとドイツはロシアにとって2番目と3番目の貿易相手国となっています。1番目は中国です。ロシア製品の買い手もより困難に直面し、代替サプライヤーの模索を迫られることになります。

ただ、ロシア産の石油とガスについては、代替供給国を見つけることが難しいとみられています。欧州委員会によると、ロシアはEUにとって原油、天然ガスなどの主要な供給国となっています。しかし、米国や日本も協力して、戦略備蓄の一部を欧州へ融通する計画を発表しています。ただし、天然ガスについては、米国日本から融通するには、液化天然ガスでの輸送となるため、再ガス化のための設備が欧州では不足しており問題となる可能性があります。天然ガスは冬場に暖房用需要が拡大するため、ロシアは欧州がもっとも嫌がるこの時期を選んだとの観測もあります。

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