テスラのS&P500株価指数への組み入れでテスラの株価は、どこまで上がる?

テスラ(TSLA)のS&P500組み入れの影響を考える

テスラ(TSLA)がS&P500に追加されると発表された後、投資家が株式を大量に購入し過去最高高値を更新しています。11月16日の公開時から、12月7日時点で57%上昇しています。市場のうわさでは、ウォーレンバフェットもテスラ株を大量に購入していると噂されています※1。噂によると、購入額は100億ドル以上にも及ぶとのことです。過去、バフェット氏は、ハイテク嫌いで有名でしたが、数年前からアップル株やアマゾン株を買い始め、今ではアップルが組み入れ銘柄の中で最も大きなポジション(46%※2)になっています。テスラ株のこれまでの上昇は、バフェット氏が大量に購入していた可能性もあります。

テスラ株がS&P500入りするのは、12月21日です。あまりに大きな金額の入れ替えになりますが、当日1日だけでインデックスの組み入れ比率の変更が行われます。テスラの時価総額は12月7日時点で、6,013億ドル(約63兆円)です。現在の時価総額は、バークシャー・ハザウェイを抜いて米国第6位の時価総額銘柄になっています。

S&P500に連動する世界のファンドは計11兆ドル近くに上ります※3。テスラの指数採用によって、指数連動型ファンドの運用者は、当日テスラ株をファンドの残高に対して1.6%程度(指数連動のファンドサイズが11兆ドルとしたら、2,000億ドル相当)買い入れることになります。同時に、テスラ株を新たに組み入れるために他の複数銘柄の売却を余儀なくされます。すでに、S&P500組み入れ発表時から、テスラの時価総額は2,190億ドル上昇しています。ファンドからの買い入れ予想額よりも若干多く買われているということです。計算上は、テスラ株が$600近辺であれば、売りと買いは相殺されます。しかし、この先、テスラの株価はさらに上昇する可能性があります。これ以上のテスラ株上昇は、危険水域になると予想されます。

S&P500株価指数の時価総額

S&P500株価指数のなかで、時価総額がテスラに近い銘柄は以下の通りです。時価総額が高いのは、アップル(AAPL)2兆1040億ドル、マイクロソフト(MSFT)1兆6200億ドル、アマゾン(AMZN)1兆5850億ドル、グーグル(GOOGL、GOOG)2兆4600億ドルで、テスラに時価総額が近いのはフェイスブック(FB)8134億ドル、ジョンソンエンドジョンソン(JNJ)3922億ドル、JPモルガン銀行(JPM)3715億ドルあたりです。これ以外も含めてS&P500の構成銘柄は一様に1.6%程度売られることになります。

実際には、そうした動きを先回りして、ポジションを作っているヘッジ・ファンドやマーケットメイカーは多数存在しているので、極端に当日荒れた展開になるとは思いませんが、そうした先回りしてポジションを取っている投資家は当日反対売買を行うと予想されます。

組み入れるのは、12月21日の市場が明ける前になりますので、12月21日以降、テスラに対して大量の売りが出てくると予想されます。バイ・ザ・ルーマー、セル・ザ・ファクト(噂で買って、事実で売る)。

テスラの株価は、どこまで上がるのか?

オプションの未決済建玉(オープン・インタレスト)を見てみると、12月18日決済(M)のコール・オプションでは、行使価格で$600(23508)、$650(10372)、$700(16,361)、$800(10710)の建玉が多くなっています。12月24日決済(W)のコール・オプションでは$680で極端に大きな建玉(11740)、$700で建玉(8436)があります。12月31日決済(W)のコール・オプションでは$680で大きな建玉(6668)があります。1月15日(M)決済のコール・オプションでは$700に極端に大きな建玉(23238)があります。オプションの建玉から見ると、上値は$680もしくは$700というところでしょうか。

アメリカ株の値動きについては、ボリンジャー・バンドによる分析を行っている人が数多くいます。特に株価指数においては、人気のテクニカル分析の手法です。中長期トレンドを見る場合、200日間の3σを見ている投資家やストラテジストが多いと感じています。指数同様に、個別銘柄においても、ボリンジャー・バンド分析はある程度有効です。ほとんどの株価において、大体3σのところで反転しています。テスラの場合、現在、200日3σの上値は$712.89です。株価が上がっていけば、3σの値も切りあがっていきます。個人的な分析ですが、$720~$730ぐらいまで上昇してもおかしくないでしょう。

しかし、その場合のテスラの時価総額は、6800億ドル($725の場合)に達し、組み入れ発表時から、3000億ドルも時価総額が上昇したということになります。先回りした投資家の金額とパッシブ・ファンドからの買い予想額との差は、1000億ドルになります。このうち相当な額の売りが出てくる可能性があります。大口の売りが起こった場合テスラの株価は徐々に切り下がり、売りが売りを呼ぶ展開になってもおかしくありません。

その時、議会で追加経済対策が決まっていれば、株式市場のサポート要因となり、大きな下げにはならないでしょう。12月21日以降、株式市場の需給関係は悪化しそうです。しかし、何とか議会において追加経済対策をまとめてほしいと思う筆者です。

チャートは、Yahoo Financeより

※1:噂のニュースは以下のリンクです。

記事によると、約5000万株のテスラ株が現在不明の投資家の手に消えていると言いいます。この行方不明のテスラ株と言う点と、バークシャー・ハサウェイのコンフィデンシャルな投資と言う点の2つをつなぎ、バフェットがテスラの株式を取得したのではないかとの憶測が浮上したようです。また別に記事では、110億ドルの投資により、バークシャーはほとんどの企業で5%以上の所有権を取得する可能性があり、SECから免除が得られない限り、開示が必要になるが、独立系アナリストのピーレン氏は、購入対象の会社の時価総額が2,200億ドルを超える場合、開示は適用されないとして、米国の取引所に上場しているそのような会社は25社しかないという分析をしています。

ビジネス・インサイダーの記事
https://markets.businessinsider.com/news/stocks/warren-buffett-berkshire-hathaway-buying-secret-stock-revealed-coming-weeks-2020-11-1029813523

ベンジンガの記事
https://www.benzinga.com/news/20/11/18439911/has-warren-buffett-invested-in-tesla-heres-why-people-are-speculating

フランク・ピーレン氏のツイッター


※2:バークシャー・ハザウェイのポートフォリオ

直近発表(9月末)の開示情報をもとに、CNBC社が「バフェット・ウォッチ」という専用ページを公開し時価を割り当てたポートフォリオの時価情報を公開しています。

リンクは以下の通りです。

https://www.cnbc.com/berkshire-hathaway-portfolio/


※3:出所はブルームバーグ

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-11-30/QKMRRMDWX2PS01

因みに、S&P500をトラックするETFだけでも、7,570億ドルの残高があります。この残高はS&P500をトラックするETFのなかから、高配当インデックスをトラックするETFは除外してあります。

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