
米国の株式市場は世界最大の時価総額を有しています。
そんな米国が利用している通貨は米ドルで、基軸通貨として世界中の貿易や金融取引で利用されています。
日本株を見ると、米ドル円と日経平均の値動きには一定の相関関係が見られます。そうであれば、米ドルの動きが米国株にも影響を与えるのではないでしょうか。
今回は、米ドルが米国株に与える影響について解説します。
目次 ー Contents
株と為替の関係

基本的な考え方として、株価と為替の関係は、次の4つのパターンがあります。
相場のステージと株と為替の値動き |
金融緩和期:株高通貨安 業績相場期:株高通貨高 金融引締期:株安通貨高 逆業績相場:株安通貨安 |
金融緩和を行うと、自国通貨が世の中に出回るため価値は低下する一方、それらが株式市場に流入することで株価は上昇します。
企業業績が相場のテーマになる業績相場では、堅調な経済やインフレ率をみながら通貨は堅調になるでしょう。
その後、利上げなどの金融引き締めが行われると、通貨高になる一方で株式市場が不安定になります。特に、引き締め直後は株安になりやすい傾向にあります。
経済が悪化する逆業績相場では、株も売られ通貨も売られ、そして債券利回りも低下するといういわゆるトリプル安が起こります。
これが基本的な株と為替の関係です。
金利が米ドルと米国株に影響
ドル円と米国株(S&P500とNYダウ)をご覧ください。
◆株価とドル円チャート

2018年から2020年2月ごろにかけて経済は好調で、株式市場は業績相場のステージにありました。
2019年夏から秋にかけて、FRBはFF金利を2.50%から1.75%へと3回に分けて利下げを行い、緩やかな金融緩和状態にあったといえます。
それまでのドル円と株価は一定の相関関係がありましたが、利下げを境に株は上昇。米ドルも一時は売られたものの、再度買われるという状態になっています。
この相関が大きく崩れたのは、2020年7月ごろから2021年1月にかけての半年間です。新型コロナウイルスの影響が予想以上に長引くとあって、当局はこれまでにない規模の大規模な金融緩和を実施。その結果、大きく通貨安が進む一方で株は買われることとなったのです。
2021年になってからは、ワクチンの接種が現実的となりました。そして、これ以上の金融緩和は行われないという見通しが立ったことから、米ドル高になったと考えられます。
また、日本のワクチンの接種状況を鑑みて円売りが進んだという考え方もできます。
ドルインデックスと米国株
米ドルの動きを表しているドルインデックスと株価動向も見ておきましょう。

やはり、コロナショックまでは一定の相関性があることが分かります。
2020年3月から5月にかけて大きく売られていないのは、米ドルがユーロやポンドに対してあまり売られなかったからです。世界中が金融不安になった際には、やはり米ドルの信用が高く、また米ドルを買い安全資産である米国債を買う動きが発生しました。
そのため、米ドル全体の動きを表しているドルインデックスは、株価のように大きく下落することはなかったようです。
その後は、やはり大規模な金融緩和により米ドル売り株高の動きが継続しています。2021年春ごろには、コロナからの回復がカナダや英国でも顕著となり、米ドルよりもそれらの通貨が買われたために下落に転じています。
これらを鑑みると、米ドルと米国株には一定の相関性がある。ただし、金融政策や経済が大きく変化する際には、他国の状況や通貨次第で複雑な値動きになることがあると結論付けることができます。
ドル・キャリー取引

金融機関の中には、お金を借りて資産運用を行うケースがあります。
例えば、FRBが金融緩和を行うと低金利になるために安く米ドルを借りることができます。そのドルを売って他国の通貨を買い、そこからその国の株式を購入するという運用があります。
この運用方法を「ドル・キャリー取引」といいます。
コロナショック後などは、米ドルが安く、また株高であるため二重の利益をもたらしたと考えられます。これらの取引が、米ドル安と米国株高といった逆相関に一役買ったとも考えられます。
こういった背景もあるため、金融政策が転換する際は、ドル・キャリー取引が縮小し、再び米ドルと米国株が同じ方向に動くことになるのではないでしょうか。
基軸通貨の米ドルがあり、世界最大の株式市場と安定した運用先とされる米国10年債を持つ米国。他国とは違う特殊な投資マネーの流れを意識することが、相場の動きを掴むためのヒントになりそうです。