みなさんは、世界三大投資家とも称される、米国の投資家「ジム・ロジャーズ」を知っていますか?
「名前は知っている」、もしくは「すごい投資家だということは知っているけど、詳しい経歴や投資に対する考え方までは分からない」という方もきっと多いのではないでしょうか。
投資においても、先人達の知恵や相場との向き合い方を知ることは非常に肝要になってきます。
本記事では、現在も鋭い観察眼と分析力で世界各国に投資をつづけている「ジム・ロジャーズ」の経歴や、投資に関する名言、投資スタンスなどを中心に紹介していきます。
伝説と謳われる投資家ジム・ロジャーズとは
ジム・ロジャーズは投資家であれば知らない人はいないほど著名な投資家です。彼はどのような人生を送って投資家としての地位を築いたのでしょうか。
本節では、ロジャーズの経歴について簡単に紹介していきます。
▼ジム・ロジャーズの現在までの人生年表
1942年:アメリカのアラバマ州デモポリスで生まれる
1947年:5歳にしてピーナッツ売りを始める
1964年:イエール大学を卒業、夏休みにウォール街でバイトをし、投資へ関心をもつ
同年:ウォール街の投資銀行「ドミニク&ドミニク社」で仕事を得る、その後オックスフォード大学へ留学
1966年:英名門オックスフォード大学を卒業
1968年:ウォール街で見習いアナリストとして働く
1970年: 投資銀行Arnhold & S.Bleichroederに入社
1973年:ジョージ・ソロスとパートナーシップを組み、クォンタム・ファンドを設立
1980年:ソロスとの運用方針が合わず、仕事を引退。コロンビア大学ビジネススクールの客員教授になる
1989年:WCBS 局の「ドレイファス・ラウンドテーブル(The Dreyfus Roundtable)」の司会を務める
1990年:FNN局の「ジム・ロジャーズの利潤動機(The Profit Motive)」の司会を務める
1990~1992 年:長年の夢だった、オートバイで 6 大陸を横断。10 万マイルの旅を実現させ、ギネス世界記録を樹立
2002年:毎週土曜日放送のFOX News Cavuto on Businessでレギュラーゲストに
2007年:シンガポールへ移住、マカオなどを中心に事業を展開
まず、目を惹くのが5歳にしてピーナッツ売りを始めていたという事実です。投資の神様ともいわれるウォーレン・バフェットも幼少からコーラを売っていたりと、著名な投資家は、幼い頃からビジネスに関わる機会に恵まれていたという印象があります。
大学生になったロジャーズは、ウォール街でのアルバイトで「投資」という分野に興味を持つようになりました。同年には、投資銀行「ドミニク&ドミニク社」で仕事を始めます。しかし、当時のロジャーズは、株式と債券の違いすら危うい、ほぼ素人同然の知識だったようです。
また、オックスフォード大学への留学用として借りた奨学金を投資を株式投資に使っていたという話もあります。それだけ投資に夢中になっていたということでしょうか。そこから、猛勉強と実務経験を積むことで、6年後の1970年には投資銀行であるArnhold & S.Bleichroederで正社員として働くまでになります。
1973年、大きな転換点のひとつでもあるクォンタム・ファンドの設立をジョージ・ソロスと行います。クォンタム・ファンドのリターンは、設立10年で+4200%という驚異的なパフォーマンスを記録しました。
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その後は、テレビや雑誌などの出演をしながら、実業家兼投資家として様々な事業を展開しています。2007年にシンガポールへ移住した際は、世界から注目を集めました。
米国をはなれ東南アジアに移住したことから親中派であるとの意見も散見されるようになり、実際にロジャーズが、中国株の未来へ先行投資する局面もありました。
ウェルス・レコードによると2018年時点での、資産総額は3億4000万ドル(約387億円)となっています。
ジム・ロジャーズの投資スタンス
ジム・ロジャーズの投資対象は商品先物から個別株まで様々で、臨機応変な投資が特徴です。
投資対象がとても幅広い地域、商品になっている点です。個別株だけでなく、金や原油などのコモディティに投資を行います。
ロジャーズは自身の言葉のなかで「28カ国もの国の個別銘柄を保有している」といっています。この言葉からも、投資対象が非常に多いことが分かります。
また、ロジャーズの投資は、長期的な値上がりを狙ったバイ& ホールドだけでなく、相場局面ごとで売り買い両方のポジションを持つなど、攻めの投資もしばしば行ってきました。
投資家だけでなく冒険家としての一面も
ロジャーズのちょっと変わった投資に対するこだわりを紹介していきます。ロジャーズは実は、冒険家としての一面もあり、バイクで世界中を回ってギネス記録まで樹立してしまうほどの大の旅行好きでもあります。そのため、冒険投資家とも呼ばれています。
そして、冒険で訪れた先で現地調査を行い、めぼしい銘柄があれば買い付けるという、なんともアクティブな投資をするのもロジャーズの特徴です。
ファンダメンタルズから需給まで徹底的な分析
ロジャーズは、国際情勢、マクロ経済、金融政策、社会のトレンドなど、需給の変化を徹底的に調査して、現在価格が今後予想される価格と比べ、割安か割高かを判断してから投資をするといいます。
株式市場だけではなく、数多くのファンダメンタルズ要因を徹底的に調べ上げる忍耐力と分析力がロジャーズの成功のキーポイントであったことは言うまでもないでしょう。
ジム・ロジャーズのクォンタム・ファンドの運用実績
ジム・ロジャーズの投資の腕はお墨付きですが、一体どれくらい資産を増やしたことがあるのか気になるでしょう。
本節では、クォンタム・ファンドの運用実績を簡単に紹介します。ソロスと共にロジャーズが立ち上げた、クォンタム・ファンドの運用にあたり、ロジャーズは銘柄の分析などのアナリスト業務を行っていたそうです。
そして、徹底した分析力と類稀なる投資スキルを遺憾無くつかい、設立から10年でそのパフォーマンスはなんと4200%となっており、単純計算で元本の42倍まで資産を増やしたことになります。
なお、同時期のS&P500パフォーマンスが約50%であることからも、ロジャーズの投資家としての腕がわかります。
ジム・ロジャーズの投資格言
最後に、ロジャーズの投資格言を3つ紹介していきます。
①下調べをしないならば、あなたは決して成功しないだろう
分析を重視するロジャーズらしい言葉です。自分で銘柄や投資先の詳細を下調べをせず、他人が推奨していたからといった短絡的な考えではなかなか投資は成功しないということです。
②安く買い、高く売る。なかなか簡単だろう?問題は何が安く、何が高いかを知ることだ
この言葉は、株価が企業価値と比べて割安か割高か判断することは、難しいということをウィットに富んだ言い方をしています。
PERやPBRなど、企業価値と株価をくらべる指標はいくつかありますが、今後のトレンドなど様々な背景を考慮して、株価が企業価値とくらべ高いのか低いのかを判断するのは難しいということですね。
③変化に適応できない人は、変化に吹き飛ばされるだろう。変化を認識し反応する人は利益を得るだろう
これは、固定概念にしばられた投資ではいずれ失敗してしまうという意味の言葉です。人間がつくりだす市場は日々変化していくため、いままでの常識が通用しない場面が訪れることもあると思います。
そうした局面では、臨機応変に変化に適応しようとすれば自ずと利益が生まれるとロジャーズは考えているようです。実際、ロジャーズは数々の金融危機において、大きな利益を生み出してきたとされています。
まとめ
ジム・ロジャーズ氏は親日家としても有名で、しばしば日本を訪れており、日本株に対しての投資も行っています。ただし、日本の人口の減少やアベノミクスに端を発する円安政策には懐疑的で、追加の投資は行わないとしています。
なお、北朝鮮への投資に関して非常に興味を持っているという数少ない投資家でもあります。
ただし、いつもポジションをとるのが早過ぎるとして、下手なトレーダーを自称している面もあります。
しかし、世界中を旅して培った投資への考え方は他の著名投資家にはないものがあり、自身の投資エッセンスとして組み入れてみてはいかがでしょうか。