投資における元本確保の戦略

資産運用の現場では、運用資産の元本を確保するために、さまざまなストラクチャーを利用しています。元本確保をするためのストラクチャーを紹介させていただきます。

アセット・アロケーションで元本確保を目指す手法

安全資産とリスク資産の資産配分を調整する手法

リスク資産のリスク量を調整しながら、危険な時には、安全資産へ逃げるという運用手法です。この場合、安全資産の金利水準が非常に重要な意味を持ちます。安全資産の金利が高ければ、それで、元本部分の確保が容易になるためです。しかしながら、ここ数年間世界中の先進国の金利水準は、低く張り付いたままです。特に、ゼロ金利政策が続いてきた日本においては、安全資産であるところの国債金利までもが、ほぼゼロでした。こうした状況であれば、魅力的な金融商品の設計は非常に困難となります。金利が上昇してくれば、こうした運用手法が盛んになってくことでしょう。

例えば、10年間の投資を考える場合、安全資産である日本国債10年物の金利が5%であったならば、現在価値を計算すると、61%ですから、39%部分がリスク資産に配分可能となります。金利が1%であった場合、90.5%となり、リスク資産への配分は10%以下であり非常に小さな資産配分しかできません。安全資産の金利レベルがこうした戦略を採用するかどうかの大きなカギでもあります。

ここでは、投資元本を確保するための様々な運用手法・戦略を紹介していきます。

リスクコントロール型分散投資手法

ターゲットとなるリスクレベルを事前に設定し、その範囲に収まるように資産配分を動かしていく手法です。リスクレベルは収益率の標準偏差で表されます。

この方式では、相場の先読みを重視するのでなく、リーマン・ショックの時や、北朝鮮がミサイルを飛ばしたりする地政学リスクが高まって実際にリスク資産の動きが激しくなったら、リスクの高い資産(新興国株式、ハイ・イールド社債等)を減らしてリスクの低い安全性の高い資産(例:米国債、ドイツ国債、日本国債)にシフトします。

固定比率のパッシブ・アロケーションに比べて、今何に投資されているかをそのファンド毎に公表されることはありません(投資信託であれば後日運用月報で報告されるはず)が、投資時に事前に設定したタ-ゲットリスクに収まるように運営されているため、想定外に大きい損失を被るといったような事態は避ける手法です。

リスク資産と安全資産のポートフォリオで,オプションのペイオフを模倣する戦略もあります。投資期間を設定することでオプションのペイオフを仮定し、デルタヘッジを用いてダウンサイドリスクを限定するポートフォリオ運用手法なども存在します。こうした運用手法は後述します。

コツコツ型の積立運用によって資産形成をしたい投資家にとって、リスクコントロール型は有力な選択肢です。この方式の唯一とも言える欠点は「収益率の標準偏差」です。すなわち、期待収益率があってそのバラつきがリスクですので、ターゲットリスクをうまく抑えても肝心の収益率自体がマイナスだと、結局パフォーマンスは冴えないことになります。各資産ごとの期待収益率の計算が非常に重要になってきます。

運用の成否は、ターゲットレベルの設定、見直しの頻度(日次、週次、四半期次)の設定によって大きく左右されます。

ターゲット・ボラティリティ型運用

株式投資に特定した場合、ボラティリティーにターゲットを設定し、そのターゲットに達した場合、リスク資産を減少させて、逆にターゲットが下回った場合には、リスク資産を増やすという運用手法です。

株式市場には、恐怖指数と訳される、ボラティリティー・インデックスがあります。米国株であれば、VIX指数、日本株であれば日経平均ボラティリティー・インデックス(日経VI)があります。一般に、相場株式相場のリスクが上がった場合、こうしたボラティリティー・インデックスは上昇します。恐怖指数(VIX)の上昇はすなわち、相場の変動性(下落リスク)が大きくなったと解釈されます。ボラティリティー・インデックスがある基準以上になったら、株式を売却し、ボラティリティー・インデックスが基準値より低い場合、株式を購入し保有し続けるという運用手法です。

この場合、ボラティリティー・インデックスは、市場参加者の予測も含んだインプライド・ボラティリティーを使うことのほうがうまくいくようです。日本株VIの場合、概ね、15もしくは16をターゲットとすれば、過去の相場環境ではうまくいったという分析結果やシミュレーション結果があります。

しかしながら、この手法の場合、VIが一定期間ターゲット・ボラティリティーである15近辺を行ったり来たりした場合には、完全に相場の後追い状態になってしまい、VIが上がったところで株式の手仕舞を行って、その後すぐに相場が反転して上昇した際には、ポジションを保有しておらず、収益機会を逸してしまうということがあります。最悪の場合、往復びんたを連続して被ってしまい損失額を増幅してしまうというリスクがあります。

運用の成否は、ターゲットレベルの設定、見直しの頻度(日次、週次、四半期次)の設定によって大きく左右されます。

ターゲット・ボラティリティー型運用の進化バージョン

こうした欠点を補うために、ターゲット水準を2段階、3段階に設けるという手法もあるようです。VIX水準が15を超えた時点で、リスク資産への投資を50%にして、20を超えた時点でリスク資産への投資を0%にするといった運用手法です。

さらに、トレンド分析手法を利用して、ゴールデンクロスの局面とデッドクロスの局面で、ボラティリティーのターゲットを変えてアロケーションを行うという手法もあるようです。この場合、ゴールデンクロス後の局面(相場)、つまり相場が上昇局面であった場合には、相場に対しては強気なので、ボラティリティーのターゲットを大きめの値に設定して、リスクを大きくとっていく運用になります。逆にデッドクロス後の局面(相場)は、市場は弱気と見て、ボラティリティーのターゲットを低めに設定して慎重に運用するというものです。

ここまで来ると、投資信託に落とし込んだ場合、複雑すぎて説明できる営業員が極端に減ることから、こうした運用手法の設定は難しいのでしょう。

CPPI

CPPIとはConstant Proportion of Portfolio Insuranceの略です。当初の投資元本を100%とすると、その80%や90%をフロアと呼ばれる元本確保レベルに設定します。

運用手法としては、単純な例で説明すると、当初は株式やハイ・イールド社債等のリスク資産とキャッシュや国債等のリスクフリー資産の2つの資産に投資します。リスク資産の価格が上がるとその含み益がバッファーとなるので、リスク資産を買い増してさらなるリターンを追求します。

この過程でフロアレベルを上げて100%に再設定するような仕組みのものもあります。リスク資産が上手く上がってフロアが100%にリセットされると、当初元本が確保される上にアップサイドのみ狙えるのでこの投資は勝ち組です。

逆にリスク資産が下がる時は売却し、代わりにリスクフリー資産を増やしてフロアを割ることがないように安全に運用します。保有比率はオプションの取引手法等を用いてヘッジ売買を行います。リスク資産のリスク量(過去の期間の変動率から導き出したヒストリカル・ボラティリティーとオプション市場で見込まれている将来予測も含んだインプライド・ボラティリティーなどを使い想定損失量)を計算して、当初設定したリスク量に合わせる形でリスク資産の保有量を決定しています。残りは安全資産にアロケーションします。

具体的には、目標損失限度額(フロア) とレバレッジの大きさ (レバレッジ乗数) を定め、ポートフォリオの価値がフロアを上回る部分にレバレッジをかけた金額をリスク資産に投資し、それ以外を安全資産に投資する戦略です。

この手法は、アクティブ運用者が行う「高いところで売って、安いところで買う」手法の真逆で、高くなったら買い、下がると売るので実現損が積み重なっていきます。過去相場の急落局面では、この手法が、下げ相場において、売発注を行ったことでさらに相場の下落を誘引したことがあり、相場下落の犯人として疑われたこともありました。

CPPIの弱点

CPPIが失敗するのは、次のようなケースです。まず、運用当初でリスク資産が下がるとフロアに近づくため、安全資産(キャッシュ)比率をかなり増やします。その後、リスク資産価格が上がっても保有比率が少ないのでその後の上昇には参加できず、当初の100まで戻ることはなくなります。さらには次に下がった時にフロアに抵触して、全額キャッシュでリスク資産への投資が全く行うことができなくなる可能性もあります。

最近はそうした点が投資家にとって不利となるため、フロアに達したらファンドを繰上償還してしまう投資信託もあるようです。投資信託の場合、キャッシュ保有に対して運用報酬を取られる期間を短めに終わらせるという趣旨で、その点では健全な工夫でしょう。

ただ、相場が急落してフロアに達してしまい早い時点で基準価額が下がって早期償還になると、特に償還までの期間が短い場合、販売手数料とフロアまでの損失を年率換算すると結構高い年率で損に終わったということもありえるのがこの商品のリスクです。

さらに、リーマンショックのような短期で大暴落が起きるケースでは、リスク資産の売却が間に合わずフロアを確保しきれない可能性もあります。このように、CPPIは設定後の相場展開で明暗が分かれるので「径路依存型」と呼ばれます。事前に径路が分かっていれば最初からリスク商品を買えばよいのですが、投資後の展開は運次第と割り切り、元本が減ってもフロアで止まればよいという方には悪くない選択でしょう。

この運用手法で成功するかしないかの大きなカギは、2つあります。

1点目は、その時の安全資産の金利レベルにもよりますが、フロアをどこに設定するかという点と組み合わせるリスク資産のレバレッジ係数です。金利が高い環境であれば、CPPI期間中の安全資産の現在価値は相当低く抑えることができ、フロアを低く設定できます。一方金利が低ければ、フロアは非常に高いレベルになってしまいます。10年間で考えた場合、安全資産の金利が5%であれば、安全資産の現在価値は61%程度となり、残りをリスク資産に振り分けることができるので、収益機会は大きくなります。安全資産の金利が1%であれば、現在価値は90.5%程度となり、リスク資産の期待収益は下がってしまいます。

また、リスク資産のレバレッジ係数をどのレベルにするかという点も、戦略の成果に係ってきます。レバレッジ係数が高ければ、それだけ収益機会も増えますが、損失の可能性も高まるためです。

2点目は、設定後の数か月間の間にリスク資産が大きな収益をあげられるかどうかという点が非常に大きな分岐点になるということです。最初の数か月で、リスク資産が損失を被ると、リスク資産を積み増せなくなるので、復活することが難しくなります。反対に、収益が上がった場合には、リスク・バッファーが増えることから、さらに大きな収益機会を得られます。

もう一つ留意点を挙げるとすれば、下方が80%フロアとすれば上方も20%(+信託報酬)が狙えるようなリスク資産に投資するのかどうか、リスク資産の種類も見た方がよいでしょう。

CPPI戦略の弱点を克服する手法

CPPI戦略では、5年とか10年とか運用期間全体で、下落リスクを回避する運用手法が一般的ですが、一度大きく失敗してしまうと損失が確定してしまい、取り返せなくなってしまいます。

金利が上昇してくれば、運用期間を全体で見るのではなく、ある期間に区切ってCPPIの運用を行うことも可能となってきます。例えば、10年の運用期間で、安全資産の金利が10%であった場合、毎年1%ずつリスク資産にアロケーションを行うという手法が考えられます。この場合、それぞれの期間でCPPI戦略を行うことになるので、毎年収益及び損益がリセットされることになります。上昇局面の相場環境が継続する場合、CPPI戦略は有効ですが、毎年うまくいくとは限りません。CPPI戦略の開始時期を分散させることが可能になるため、投資期間全体で見た場合パフォーマンスが上がることが可能となります。しかしながら、現在のような低金利環境では、こうした運用戦略を設計することが難しいというのが実情です。

証券化商品

ファンドとして、元本確保を目指す場合、証券化商品に用いられる優先劣後構造を採用することで、損失を買いに配当権利者である劣後部分の投資家が被ることで、スーパーシニア部分やシニア部分で元本が確保できる投資クラスを作ることが可能です。この優先劣後構造にするためには、劣後部分の投資家が存在することが前提となります。

CDOのしくみ

CDOとは、Collateralized Debt Obligationのことで、債務担保証券と呼ばれ、ABS(資産担保証券)の一つです。貸付債権(ローン)や債券(公社債)、クレジット・デリバティブ(企業の信用度を売買するスワップ市場)などから構成される金銭債権からポートフォリオを構成し、それを担保として発行される証券化商品をいいます。これは、複数のローンまたは公社債などの資産を保有するオリジネーター(原資産所有者)が、それらをSPV(特別目的事業体)に譲渡し、この資産を裏付けとして発行した社債の売出しや信託受益権を投資家に配分します。その収益を受益する権利は、返済順位ごとに階層化(クラス分け:それぞれをトランシェと呼ぶ)され、収益分配される構造となっています。階層(クラス:トランシェ)ごとに格付け会社が格付けを発行することもありました。

また、その担保がローンのみで構成される場合は「CLO(Collateralized Loan Obligation)」、債券または債券類似商品で構成される場合は「CBO(Collateralized Bond Obligation)」と呼ばれ、CDOは「CBO」あるいは「CLO」のいずれか、またはその双方を包含する商品となっています。

1980年代に米国ではじめてCDOが発行され、その後、欧州や日本などでも発行されて市場が拡大し、2000年代には金融機関や機関投資家などの運用対象として人気となりました。しかしながら、2007年に米国で始まったサブプライムローン問題により、担保となっていたローンが数多く破綻したため、高格付けとして運用されていたCDOも毀損し、世界中の多くの投資家が巨額の損失を計上する結果となり、またCDOの担保となっていた資産の不透明さや流動性の低さなどのリスクが改めて認識されることになりました。

CDOは、担保となる資産の組み合わせにより、債務の返済順位が低リスク低リターンのグループ(クラス:トランシェ)から、高リスク高リターンのグループ(クラス:トランシェ)まで自由に商品を組成することができます。通常、格付け会社の格付けによって、以下の3つのクラスに区分されます。

・最高格付け:シニア・クラス(優先クラス)(安全性は高いが、利回りは低い、収益の返済順位は最も高い)

・中間格付け:メザニン・クラス(シニア債とジュニア債の中間ぐらい、収益の返済順位はシニア・クラスの次)

・最低格付け:エクイティ・クラス(劣後クラス)(安全性は低いが、利回りは高い、収益の返済順位は最も低く、最後)

※メザニンとは中二階の意味です。

各クラス(トランシェ)ごとの返済順位

原資産の価格が損失を被った場合は、劣後部分から上位クラスに向かって順番に損失が補填されていくことになります。

よって、劣後クラスの参加率(投資割合)にもよりますが、損失がその参加率(投資割合)内であれば、上位のクラス参加者は損失を被ることはありません。リスクが高い分、劣後(エクイティー)への投資家は、収益が上がった際には、より多くの利益分配を得られるよう設計されています。

このように、支払いの優先順位が上位のシニア(優先)クラスに投資を行った場合、原資産が大きく減少しない限り、損失は限定されるものとなります。劣後部分の参加率(投資比率)で、期限前償還する構造にすれば、優先クラスには損失は回っていきません。こうした構造も、設計次第で柔軟に対応することができます。

まとめ:何のためにトランシェを分けるのか?

ロ-リスク/ローリターンを目指す投資家の資金をコアにして、ハイ・リスク/ハイ・リターンを目指す投資家にリスクを引き受けてもらうことで、ポートフォリオそのもので資金を集めるより、広範で大量の投資資金を集めることができます。また、格付けごとに返済の優先順位を付けることで投資家の需要にそった金利体系を自由に設計することができることもメリットです。外国市場、特に米国では、格付会社から投資適格の格付けを採れていない低格付け企業が銀行ローンを資金調達手段と利用しています。

日本の大手銀行が、直接外国企業に融資(ローン)するには、現地で対象企業と銀行取引をしていないため、運用会社並みに審査部門を充実させる必要があります。一方、CDO(CLO)であれば、シニア(優先)クラス(トランシェ)の場合、格付け会社からAAAの最上位格付けを取得していることから、リスク計算上かつ審査の都合で、投資が非常に簡単かつリスクの低い投資とすることができます。原資産となる社債や銀行ローンのポートフォリオの作成・管理には、現地の運用会社が付いており、審査機能もストラクチャーの中に含まれています。

こうしたことから、日本の大手銀行は資産運用対象の一つとしてCDO(CLO)を利用してきました。リーマンショックの際には、大手銀行が海外での運用で多額の損失を計上しましたが、こうしたCDOへの投資でも大きな損失を出したと報道されていました。

因みに、メザニン・クラスやエクイティー・クラスへは、ヘッジ・ファンドや米国のアセット・マネージャーなどが出資しています。かつてはCDOを組成し、エクイティー・クラスをSIV(ストラクチャード・インベスメント・ビークル)を作って運用しいる投資銀行もありましたが、こうした運用は減少しています

CMOとは

CMOはCollateralized Mortgage Obligationのことで、CDOと違い、モーゲージ証券(住宅ローン債権)を担保とした証券化商品です。CMOの場合、CDOとは違い、さらに複雑な階層化(トランシェ)が行われ、シニア、メザニン、エクイティーに相当するシーケンシャルにとどまらず、サポートクラス、PACクラス、IO(インタレスト・オンリー:インカムのみ)、PO(プリンシパル・オンリー:元本のみ)などにトレンシェ分けされることもあります。

このように、さまざまな原資産をもとに運用を行う際に、証券化を行う(ストラクチャー化する)ことで、元本および収益の配分に優先順位を持たせた階層化(トランシェ)することで、元本確保を目指す収益構造を作り出すことが可能です。

ファンドを利用した優先劣後構造

上記のCDOの項目で説明しましたが、ファンドにおいても、こうした収益配分の順位をクラス分け(トランシェ分け)することによって、元本確保が可能な商品設計が可能となります。

ファンドの場合、優先出資クラスと劣後出資クラスを設けて、事前に決定された比率でそれぞれの出資者を集めます。その際、キャッシュフローに応じて、元本部分と収益部分への配分順位と配分比率を調整することで証券化に似たキャッシュフローの再構築が可能となります。

原資産となるポートフォリオを証券化するのではなく、ファンドというスキームを利用することで、キャッシュフローの再構築が可能になります。証券化と同様、エクイティークラス(劣後クラス)への投資家は、元本棄損のリスクが大きくなる分、収益が上がった場合の取り分を大きくすることで、ハイ・リスク、ハイ・リターンの商品設計が可能となります。一方ファンド全体のキャッシュフローが悪化し元本割れを起こした時には、その損失部分は劣後クラスの元本から補填されることで、優先クラスの元本は損失を被らない構造にすることが可能です。

また、損失が劣後クラスの元本総額よりも大きくなった場合は、劣後クラスの元本は消失してしまいます。そのため、劣後クラスの元本相当額に損失が近付いた時点で、ファンド全体を償還してしまえば、優先クラスの元本は保全されることになります。期限全償還で、更なる損失を大きくしないためにも、投資家のことを考えたスキームと言えます。

以下に、優先出資クラスと劣後出資クラスを70%対30%とした場合の、例を説明します。

この場合、集めた金額の運用成績で―30%までの損失であれば、その損失は劣後出資クラスから充当され、優先出資クラスは損失を被りません。出資構造(分配構造)をストラクチャー化することで、優先出資クラスでは元本確保の仕組みを作ることができます。

一方、劣後出資クラスは元本を棄損するリスクが高い一方、収益が上がった場合には、収益の配分比率を大きくしてあり、実質利回りは、大きくなる構造になっています。ファンド全体の収益が大きくなった場合は、優先クラスへの収益の半分は低く抑えられる構造にすることで、ローリスク・ローリターンの商品が組成できます。

CDOの場合でもそうですが、事前に優先クラスと劣後クラスの参加率、収益分配比率の調整が必要で非常に手間がかかるスキームなので、多くのアセット・マネージャーが採用する方法ではありません。このスキームの難点は、ファンド(集団投資スキーム)は構造上、原則途中解約を認めていないという点です(全期間クローズド)。ファンドの運用期間の間に資金流出(途中解約)があった場合は、ファンドのストラクチャーが担保できません。そのため、投資をする際には、ファンドの運用期間をよく見定めて、余裕資金を投資することが大事です。

原資産がキャッシュフローのある程度確定している債券としている場合には、トランシェごとに最大リターンが提示されます。当然劣後したクラスのほうが、提示されるリターンは大きくなります。一方、各階層の元本は、原資産のキャッシュフローが悪化した場合、棄損していくことになります。

原資産が債券であっても、ハイ・イールド債権や銀行ローンなどでは大きく価格の上昇する可能性はあります。その場合エクイティー・クラスの収益の受け取りが大きくなるようにすれば、各トランシェ間でのリスク/リターン配分を調整することができます。債券の証券化の場合には、キャッシュフローがある程度確定しているため、投資家も見つけやすくなっていますが、原資産の価格が上昇・下落するリスク資産(株、為替、商品、不動産など)を原資産とした場合は、投資家を見つけることが難しくなります。

日本国内の公募投資信託では、日々投資資金の流出入があるため、こうしたストラクチャー(スキーム)を作ることができません。単位型であっても、途中解約を制限した全期間クローズドの投資信託は非常にまれです。一方、規制の緩い匿名組合契約のスキームを使えば、こうした優先劣後構造のファンド(集団投資スキーム)を構築することは可能です。匿名組合の利点を理解された投資家であれば、投資対象となるでしょう。

そのほかの元本確保型ポートフォリオ運用手法

ポートフォリオ・インシュランス

ポートフォリオの価値下落リスクを配慮しながら、価値上昇も目指すという、ポートフォリオ管理の様々な手法の総称です。

保有しているポートフォリオに保険を掛けるという意味では、まさしくインシュランスということになります。ポートポフォリオの価値を上げるというよりは、ある一定の基準以上は損失を出さないようポートフォリオを管理・運用していく手法です。前項で述べたCPPIなどもポートポフォリオ・インシュランスの代表的な手法であり、ターゲット・ボラティリティーも一つの戦略です。元本確保を目指すというよりも、損失をいかに低く抑えるかという投資手法でもあります。

オプションを利用したポートフォリオ・インシュランス

株式や商品でポートフォリオが構成されている場合、原資産のオプション市場が整備されています。単純な手法は、原資産のプットオプションを購入するというものです。プロテクティブ・プット戦略とも呼ばれています。

プットオプションとは、ある商品(原資産)を将来のある期日までに、その時の市場価格に関係なくあらかじめ決められた特定の価格(=権利行使価格)で売却できる権利のことです。取引は、買い方がプレミアム(オプション価格)を支払い、一方売り方がプレミアムを受取ります。その後決済時に、買い方がプットオプションの権利を行使すると、対象とする商品を権利行使価格で売却することができる。一方、売り方はこの権利行使に応じなくてはならない。買い方が権利の行使を行わなかった場合は、オプション取引自体が終了するというものです。

ポートフォリオに完全に合致したプットオプションを購入するという方法もありますが、代表的な株式指数のオプションのほうが市場も大きく流動性があるので、株式指数オプションを利用することもできます。オプション価格(オプション・プレミアム)は、行使価格が原資産の時価に近いほど高く取引されています。価格が時価よりも離れた行使価格のオプション・プレミアムは、安く取引されています。オプションの価格形成メカニズムについて細かい話をすると長くなるのでここでは割愛します。そこで、原資産の時価よりも5%低い行使価格のプットオプションを購入すれば、ポートフォリオ全体では、ポートフォリオ全体の価値が5%以上下がっても、オプションを行使することでオプションも含めたポートフォリオ全体の価値は5%以上の損失を被らないというわけです。

単純化して説明しましたが、実際には、さまざまな行使価格で様々な決済期日などを組み合わせて効率的なオプション戦略を取ることで、ポートフォリオの保全を図ることが可能になります。

また、オプションも、ヨーロピアン・オプションやアメリカン・オプションを使い分けたり、ノックアウト・オプションを使ったりより複雑なオプション戦略を使い分ける例もあります。原資産のオプション市場が無い場合は、原資産のリスク量に合わせたリスク量に相当する先物指数で空売りを行う(ショート・ポジション形成)ことで、ポートフォリオ全体の価値保全を図ることもあります。しかしこうした戦略はオプション・プレミアムの部分だけ費用が嵩むことから、投資元本の100%確保は難しくなります。

リスク・ファクター戦略

リーマン・ショック以降、ポートフォリオの最適化を目指すために、年金基金などで注目されているポートフォリオ管理手法にリスク・ファクター・モデルがあります。「リスクプレミアムはアセットそのものに含有されているのではなく、各資産間で共通して存在するリスクファクターそのものにある」という考え⽅に基づいています。ファクターとは、投資対象の資産(株式、債券、REIT など)に共通して存在する価格変動やリスクの要因のことを指しています。これまでは、債券であれば、リスク要因としてデュレーション、コンベキシティー、ボラティリティー、信用リスク、シャープ・レシオなどで管理していました。株式は、スタイル、セクター、国、ボラティリティー、シャープ・レシオなどで管理していました。さらに、国際分散投資の場合は、為替の変動、ボラティリティーで管理していました。

これに対してリスクファクター・モデルは、それぞれの資産ごとに、金利ファクター(実際にはもっと細かく要因)、成長ファクター、変動ファクターなどを紐づけて各リスクのそれぞれに対するパフォーマンス寄与度をもとめ、ポートフォリオ全体でリスク管理をしようというものです。経済成長、インフレ、長短金利差、信用力、株式、ボラティリティ、割安度(バリュー)、モメンタム、流動性などがファクターの個別項目です。このように複数のファクターを⽤いて資産のリスクやリターンを説明するものを⼀般的にリスクファクター・モデルと呼ばれています。

分かりやすく説明するために、食事の管理で説明します。これまでは、縦割りにして、ごはんは何カロリーで炭水化物、おかずは、肉質なので何カロリーでたんぱく質、添えられたサラダは何カロリーで繊維質、汁物は何カロリーでたんぱく質といった分析をしていたものを、ファクターモデルでは、それぞれの食事項目ごとに、たんぱく質何グラム・何カロリー、炭水化物何グラム・何カロリー、繊維質何グラム・何カロリー、脂質何グラム・何カロリー、ビタミンA何グラム・何カロリー、、、、と栄養成分ごとに横軸を通して全体で管理するようにしたというものです。

この手法は、リスク・リターンを最適化するための手法であり、元本確保を目指したものではありませんが、参考までに紹介させていただきました。

絶対収益追求型運用

日経平均などのベンチマークを指標として、それを上回るリターンを目指すのが「相対収益型」です。これに対して、絶対収益型は市場環境にかかわらずプラスの収益を追求する戦略です。

相対収益型は、ベンチマークが下がってもファンドの下げがベンチマークほどでなければ結果よし、運用者は報酬に値するという考え方なので、投資家によっては納得感がないと思われる方もいるでしょう。

その意味で、「資産形成」を図りたい投資家はつまるところ相対的リターンでなく、「雨の日も、風の日も」資産が増えるならプロに任せる価値あり、と思うものです。全天候型運用とも言われる所以です。

絶対収益型については定義がはっきりしない面もありますが、ベンチマークとの比較でなく、上げ相場でも、下げ相場でもプラスの収益を上げることを目指す運用が典型的な定義です。ヘッジ・ファンドは別名、絶対収益追求型のファンドとされています。ヘッジ・ファンドには、さまざまな運用スタイルがあり、いくつかに分類されています。

ロング・ショート型

主に株式等の単一資産クラスで行う運用戦略です。投資対象資産としては株式(現物と現物で売り買い両方のポジションを取る)あるいは株式(現物あるいは先物)と株式先物の場合(ロング&ショート戦略)があります。

一方、ロング&キャッシュという戦略もあります。株式相場が上がると読めば株式を上限100%買い持ち(ロング)にして、下がると思えば売却して現金(キャッシュ)にします。株式ロングの比率は100%~0%まで変化します。ベンチマークにとらわれない運用手法で、儲かりそうな時だけ投資してリスクを取らない時には投資しない、という個人投資家のような運用手法です。ただし、キャッシュにする前に株式ロングの時に下落によって負けてしまうことはありますので下方リスク回避とはなりません。株式を買うかどうかはマネージャーの相場観によります。よって、ファンドマネージャー(運用者)の能力がパフォーマンスを左右します。

ファンドマネージャーがリスクを取るべきでないと判断してキャッシュで待避している期間があまりに長いと運用報酬を取られ続けるので、運用者が怠けない最低でもポートフォリオ残高の30%ロング等、運用上の縛りを設ける場合もあります。

通常株式のロング・ショート戦略では、現物の個別株式のロング(買持)とショート(売持)を組み合わせます。割安な個別銘柄をロングする一方、割高な個別銘柄をショート(個別銘柄の株式を借りてきて売り建てる)する運用手法です。個別銘柄の組み合わせは、同じ業種やセクターであったり、セクター別に銘柄を選択することがあります。同じセクターでロングとショートを行うことで、相場全体の上げ下げに関係なく収益機会が得られます。

こうした手法をとるヘッジ・ファンドのファンドマネージャーは、ポジションを開示することはほとんどありません。空売りを行っている銘柄を公開することで、その銘柄とのミーティングを断られたりすることも多く、極度に嫌います。

ちなみに、個別銘柄は、大手の機関投資家(特に巨大パッシブ運用を行っている運用会社)から借りることが可能です。こうした貸し出す元は、貸し株料が収益として上乗せできるので、パッシブ・ファンドのパフォーマンス向上につながります。パッシブ・ファンドは、インデックス全体に投資しているので、インデックスにトラックすればいいだけで、上がろうか下がろうか気にしません。うまく運用会社間で機能している秘密です。

現物株を大量に売却すると売買手数料等の執行コストがかかるので、現物ポートフォリオは動かさないで先物ショート(空売り)でリスクを取る比率を機動的に変えていく方法もあります。現物で預かり残高の130%ロング・ポジションを取り、先物で30%ショートにして相殺後のネットで100%ロングにする130-30と呼ばれる手法もあります。これもロング比率の判断は、いろいろなマーケットシグナルやマネージャーの相場観によります。

グローバル・マクロ型

絶対収益型のヘッジ・ファンドのなかで最も有名な投資戦略です。ロング・ショートが単一資産で行われるのに対し、グローバル・マクロは、GTAA戦略のアセットアロケーションファンドのように国内、海外(先進国、新興国)の株式、金利・債券、為替等に投資します。すべての資産を買い持ちで分散してリスク・リターンの向上を目指す手法ではありません。投資対象のマクロ事象によって、ロングでもショートでも行うことが可能な投資手法です。ファンドマネージャーの相場観がうまくいった場合は、いかなる相場局面(ブル相場・ベア相場)であっても収益を得ることが可能です。

すべての資産が同時に上がる相場局面というのは稀で、むしろ負の相関性がある投資対象があります。たとえば、ある国の景気が上昇局面にあると読めば株式はロングにし、同時期に金利上昇で価格が下落する債券はショートして、為替をロングするというように様々な資産を対象として組み合わせて収益を追求する運用手法です。

実際は景気上昇局面で、債券の中でも金利上昇でやられる国債はショート、景気上昇でスプレッドが収縮する(=債券価格の上昇する)ハイ・イールド社債をロングにする組み合わせ等、さまざまな取引を行います。

さらには、米国債を買い、買い持ちとなっているドルを売ってブラジルレアルに持ち替えて(ブラジルの短期金利差をFXで言うところのスワップポイントとして受け取り収益の上乗せにする)レアルのリスクを取ったりします(為替オーバーレイ取引)。この手法は日本の通貨選択型の投資信託でも日本で人気がありました。 

かつては、為替市場でタイミングを見計らって、さまざまな投資手法(現物スポット、フォワード、スワップ、先物、オプションを駆使)を利用して、弱った国(通貨)を狙い撃ちし売りを仕掛け、大きな収益を狙う運用戦略などが有名でした。上げ相場でも下げ相場でも収益を上げられるのでとても魅力的ですが、相場観を見誤ると色々な資産で一斉に損失を被るのでファンドマネージャーの才能に大きく依存します。また先物やその他のデリバティブを活用して投資元本の数倍のリスクを取る(レバレッジ)戦略も多く、大勝ちもあれば逆もありえます。ヘッジ・ファンドの戦略の分類については、ほかにもいろいろ存在しますが、別途レポートでまとめる予定です。

為替ヘッジ付外国債券投資

日本に比べて、外国の債券は高い利回りを得られる時期が長く続いてきました。債券ですから、金利が下がれば価格が上昇して、収益を得られます。一方金利が上昇した場合(基準となる国債金利の上昇、もしくは個別銘柄の上乗せスプレッドの上昇)には、債券価格は下落して損失を被ります。しかしながら、債券は満期まで持てば、収益が確保されています。債券のことを投資銀行では、確定利付き商品(フィックスド・インカム)と呼んでいます。投資した債券の発行体がデフォルトしない限り、元本は確保されることになります。

米国や欧州では、日本と違い社債市場が非常に大きく市場も整備されています。発行体の数は比較にならないほど大きな市場です。発行体の格付けもAAAからジャンク債とされるハイ・イールド社債まで様々な発行体があります。米国の投資適格社債(BBB)だけに限ってもそれなりの金利が享受できる時期が続いていました。2010年以降2018年まで見ても、3.25%~6%の利回りがありました。ハイ・イールド社債であれば、同じ期間5%~10%で推移しています。

この金利を享受したいところですが、日本円で投資した場合、為替リスクが存在します。その為替リスクを抑えるために、債券(社債)のポートフォリオに為替ヘッジを行うことで、為替リスクをヘッジした投資信託が人気の時期が続きました。日本の投資信託の場合、短期間で為替ヘッジを継続するという手法を使っていました。具体的には、1ヵ月毎に、保有している外貨建て債券ポートフォリオの総額(外貨建て)分の為替予約を行うという手法で行っていました。毎月持ち高の外貨分だけ1か月先渡しで売り建てておいて、翌月同じようにその先の1ヵ月先渡しで売り建てていくということで、もともと持っていた債券ポートフォリオの通貨のロング・ポジションを一方で売り建てしてショートすることで相殺し、為替リスクをヘッジすることができます。

2017年以降米国は金利引き上げに舵を切って、米国の短期金利は上昇し始めました。2018年12月現在では、2.5%程度になっていました。日本の短期金利がずっと0%なので、金利差は2.5%になり、つまり、ヘッジコストも2.5%になっているということになります。社債のポートフォリオ利回り(BBB)が、4.5%程度なので、差し引き2%ぐらいしか収益が上がらないことになります。加えて、社債金利が上昇すれば(今現在も上昇傾向ですが)、債券価格は下落し、今後収益を上げ続けることは困難になりかねない状況です。

3月の相場下落でFRBは一気にゼロ金利政策を開始しました。両国の短期金利差は0%に戻りました。しかもFRBは今後数年間超低金利政策を継続するとしています。つまり、金利差が無ければ、為替のヘッジはゼロコストで行うことができます。外貨建ての資産運用を行う際には、為替リスクを除外した為替ヘッジ月の投資がより安全な投資だと思います。

劣後債単位型ファンド

銀行劣後債やバンクローン等、高利回りの外債や企業向けローンに投資し、満期まで売買せず、基本的にはデフォルトを避けるための売却を除いて個別債券はその債券の満期まで持ち切る運用手法です。さらに為替をフルヘッジし、円ベースの利回り商品として設計されている投資信託が日本では人気だった時期がありました。

当初基準価額が10,000円で始まり、途中は利回り上昇等の要因で上げ下げがあり、10,000円を割り込むことはあるものの、満期時には10,000円プラス保有期間中の利回り分が返ってくる前提です。そのため、当初募集期間のみ投資可能で、投資家全員が10,000円の持ち値で共通している単位型、かつ投資対象債権の満期に合わせてファンドの満期を設定する期限付きという設計です。投資対象には、米国債利回りに比べて2~3%程度高い利回りの債権ということで、銀行劣後債やハイ・イールド・バンクローン(BB~B格程度)等が選ばれていました。

海外の高利回り商品に円ベースで利回りが確保されて、といいことずくめですが、以下のリスクも指摘できます。投資個別債券のデフォルトリスク・スプレッド拡大(価格下落)リスク個別銘柄がデフォルトになった場合大きな損失が想定されます、しかしながら、40~60銘柄程度に分散投資しているので、投資元本が何割も目減りする可能性は低いでしょう。ただし、大手発行体の倒産により市場のセンチメントが変わった場合(リーマン・ショックのような)、ポートフォリオ全体が棄損することになります。しかし、倒産事例が大手銀行の劣後債であれば、リーマン・ショックのような大変な状況になり、株式市場は何割も下落することになるでしょう。

投資対象債券への規制リスク

デフォルトリスクと同様に債権の価格が下落する要因に規制リスクがあります。銀行劣後債は返済順位が劣後しているため、同じ銀行の優先社債に比べて格付けが低い分、かなり利回りが高くなっています。色々な業種の社債に分散投資するハイ・イールド債ファンドに比べて業種集中リスクがあります。また、銀行劣後債はバーゼル委員会で定められた自己資本比率規制を充足すべく、銀行が高い金利を払って自己資本に含めてカウントできる劣後債を発行するものです。仮に規制当局やバーゼル委員会から、ある日突然「特定の種類の劣後債は自己資本に算入不可にする」という規制が出れば、複数の銘柄の価格がまとめて下落することがあります。

利回りの希薄化

投資対象の債券はファンドの償還期限と全く同じではありません。ファンドの償還期限に近付くにつれて、保有している個別債券はファンドの償還期限以前にその多くは償還されていきます。つまり、償還された部分は、ファンドの償還期限までは現金(キャッシュ)での運用となる点です。商品の設計上は、ファンドの償還期限の半年前ぐらいから個別債券が償還し始め、ファンドの償還期限時点では、2~3割はその後半年以内に償還されるものだけでポートフォリオを構成しています。残りが2.3か月や半年程度の証券であれば、ほぼ償還価額の100%で売買できることから、残りの部分はファンドの償還に合わせて売却することで対応できるようになっています。

為替ヘッジコストの上昇

投資対象債券の通貨に対して、為替ヘッジが行われますが、短期金利差が拡大した場合、ヘッジ・コストが上昇して収益が確保できなくなる可能性があります。

転換社債(CB)単位型

リーマン・ショックからの回復期、2009年から2010年ごろ人気があった投資信託戦略で、転換社債(Convertible Bond:CB)に投資する手法です。

転換社債とは一定の行使価格で株式に転換できるコールオプションが付与された債券の一種です。その転換権が付与されている分、同企業の社債より利回りがかなり低く設定されています。株価が上昇すると株の要素が強くなり株価との連動性を高めますが、株価が転換価格よりかなり低位にあると株価との連動性はほぼなくなり、ほとんど通常の社債の利回りに近くなります。社債なので満期があり、デフォルトがなければ額面で満期償還されます。株価があまりにも安く放置された状態であれば、価格の下落リスクが限られている運用投資対象であり、想定転換価額に戻っていく局面では、株式への転換部分が再評価され価格の上昇機会も得られます。投資時期が非常に限定された運用手法です。

投資対象が外貨建て転換社債であれば、為替ヘッジ付の投資金融商品にすることも可能です。デフォルトリスク、価格下落リスクやヘッジコスト上昇リスクは為替ヘッジ付外債と同じです。

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