アメリカ同時多発テロは金融市場にどのような影響を与えたのか?株価下落の理由や経済政策も合わせて解説

未だ記憶に新しい2001年9月11日、アメリカで旅客機を高層ビル激突させる同時多発テロ(9.11)が発生しました。

その中でも、世界貿易センタービルに旅客機が衝突し、ビルが倒壊していく様子はかなり衝撃的で多くの人の記憶に残っているのではないでしょうか。

また、一連のテロ攻撃による死者は2,996人、負傷者は6,000人以上にものぼるとされ、真珠湾攻撃以来最悪の米国本土攻撃と言われています。

このように、全米を震撼させたアメリカ同時多発テロですが、人的・インフラ被害に加えて「金融市場」にも大きな混乱を招きました。

今回は、「アメリカ同時多発テロ」が金融市場に与えた影響や、株価下落の背景について紹介していきます。

アメリカ同時多発テロとは?

アメリカ同時多発テロは、イスラム原理主義と反米を掲げるテロ組織「アルカイダ」によって起こされたテロ事件です。

犯行の手口は、アルカイダの構成員が航空機をハイジャックし、世界貿易センタービルを始めとしたアメリカの主要ビルに衝突させるというものでした。結果として、世界貿易センタービル2棟はわずか20分の間に倒壊し、多くの死者、負傷者を出しました。

世界貿易センタービルの他にも軍事政策の中枢部である国防総省ビルにも、ハイジャックされた旅客機が衝突し、アメリカ全土に大きな衝撃が走りました。

アメリカ同時多発テロは金融市場にどう影響したか

それでは、このアメリカ同時多発テロは金融市場にはどのような影響を与えたのでしょうか、時系列順にみていきましょう。

2001年9月12日:世界的な株安
2001年9月13日〜2001年9月16日:米国市場閉鎖
2001年9月17日:NYダウ 684.81ドルの下落
2001年9月21日:NYダウが底値「8062ドル」をつける
2001年11月9日:同時多発テロが起こる前の株価水準まで回復

まず、アメリカ同時多発テロ発生直後は、世界的な株安に見舞われました。世界経済の中心であるアメリカが株式市場に与える影響の大きさが分かりますね。

その後、アメリカは投資家心理を落ち着かせるために、テロ事件当日から4営業日の間、米国市場は閉鎖しました。

しかし、4営業日も市場を閉めていたにもかかわらず、米国市場が再開した2001年9月17日のダウ平均株価の終値は「684.81ドル」というの過去最大級の下げ幅を記録しました。

この下げ幅は下落率でいうと「約7%」です。主要指数が約7%も下がったという事実からも、「アメリカ同時多発テロ」が与えた影響の深刻さが伺えます。

また、為替市場では、有事の円買いとも言われるように「ドル売り・円買い」の動きが加速し、ドル安・円高が顕著になりました。

その後もダウ平均株価は下落を続け、この下落トレンドは9月21日に底をつけるまで続きました。ちなみに、底値はテロ事件前日のダウ平均からは約14%下落した「8062ドル」 でした。

ここから米国は超低金利時代に突入したのですが、これが、後の土地バブル景気の温床となりサブプライムショックを呼ぶことになるのです。

◇9.11前後のNYダウの週足チャート

アメリカ同時多発テロの影響は日経平均にも

同時多発テロの影響はもちろん、アメリカだけでなく日本にも及びました。

アメリカ同時多発テロの影響でダウ平均が大幅下落したことを受け、翌日の2001年9月12日の日経平均は、前日の終値から682円(前日比-6.6%)下げて終値9,610円をつけました。

その後、一旦日経平均は上昇したものの、アメリカの景気後退への懸念から下落トレンドが続き2001年10月には9,000円を下回りました。

株価暴落の背景にはアメリカの景気後退も関係していた

実は、アメリカ同時多発テロによる株価暴落の背景には、アメリカの景気後退の懸念も関係していたとされています。

実際にアメリカの経済成長率は2000年の第3四半期から低迷し始め、同時多発テロが起きた2001年の第2四半期の成長率は0.3%と、景気後退がより顕著になってきました。

2000年第3四半期2000年第4四半期2001年第1四半期2001年第2四半期2001年第3四半期
米国経済成長率1.3%1.9%1.3%0.3%-0.4%

そして、景気後退の懸念が高まっているさなか、テロ組織アルカイダによる同時多発テロが発生したため、さらに投資家心理は悪化し株価が暴落してしまったというわけです。

つまり、ダウ平均の暴落は同時多発テロだけでなく、アメリカの景気後退といった要因も重なった結果であったといえます。

まとめ

同時多発テロといった有事は、金融危機と違って頻繁に発生するものではありません。そのため、場合によっては金融危機や景気後退よりも株式市場に影響を与える可能性があります。

しかし、こういった歴史からアメリカの対応を学べますし、未曾有の事態が発生したにもかかわらず、わずか2カ月後には同時多発テロが起こる前の株価水準まで回復しました。こういった危機に対する対応力と回復力がアメリカの魅力ともいえます。

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