米連邦公開市場委員(FOMC)~緩和的な金融スタンスを維持するとの確約【2021年1月】

米連邦準備理事会(FRB)は1月26~27日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利を現行のゼロ%近辺に据え置きました。また、国債などを買い入れる量的緩和も現行水準を維持すると全会一致で決定しました。

新型コロナウイルス感染拡大で引き起こされた景気後退から完全に回復するまで、こうした景気支援策を継続すると改めて確約しました。FOMC声明で、経済活動と雇用の回復ペースはここ数カ月で鈍化したとの認識を示し、感染拡大で最も大きな痛手を受けた部門に脆弱性が集中していると指摘。公衆衛生を巡る危機が引き続き経済活動、雇用、インフレの重しになり、経済見通しに対する大きなリスクになるとしました。さらに、回復に向けた「一段の大幅な進展」がない限り債券買い入れは現行水準を維持し、インフレが目標とする2%を達成するまで政策金利をゼロ%近辺にとどめると改めて表明しました。

FOMCとは?米国の政策金利を決める重要な会合「FOMC」についてわかりやすく解説

FOMC発表についてのコメント

FOMC声明で回復ペースの鈍化に言及されたことで、FRBが緩和的な金融スタンスを維持するとの確約の重みが一段と増した印象です。市場の予想通りの内容でした。回復ペースの鈍化と新型コロナウイルスワクチン接種の進展具合について、これまでよりも懸念を深め、こうした懸念が声明に盛り込まれるのは初めてです。

2021年になって、量的緩和(QE)の見通しに対するさまざまな示唆(テイパリングの早期開始懸念)が出ていたため、QE継続へのコミットメントが確認されたことは重要で、予想より早く資産買い入れ規模の縮小を検討するとの懸念は後退しました。

FOMC後の株価、金利動向

市場の反応も、限定的でした。株式市場は朝から軟調で、声明文の発表時間、記者会見の時のも大きな動きはありませんでした。株式市場が朝から軟調だったことで長期金利は若干(0.03%程度)ですが低下しています。

オープン前のボーイング(B)決算の失望売りをマイクロソフト(MSFT)が下支えした格好です。アップル、フェイスブック、テスラなど大型ハイテク株の決算発表待ちで、FOMCはあまり材料にならなかったという印象です。DOWでは、ボーイング(B)が―4.0%を筆頭にほぼすべての銘柄が―3%程度売られました。DOWで上昇したのは、MMM(+6%)、WBA(+4%)、CSCO(+1%)、MSFT(+0.2%)だけでした。NASDAQでは、ザイリンクス(XLNX)がー7.3%、ネットフリックス(NFLX)がー6.9%、スターバックス(SBUX)がー6.5%と下落しています。

長期金利は、株価に反応して朝から金利は低下しました。その後は、横ばいで推移しました。

2021年1月FOMC声明全文

2021/1/28
ロイターより

米連邦準備理事会(FRB)は、この厳しい局面で米経済を支援するためにあらゆる手段を行使し、雇用最大化と物価安定という目標を促進することに全力で取り組む。

新型コロナウイルスのパンデミックは、米国および世界中で多大な人的および経済的苦難をもたらしている。経済活動と雇用の回復ペースはここ数カ月間で鈍化し、パンデミックによって最も悪影響を受けた業種が特に脆弱になっている(The pace of the recovery in economic activity and employment has moderated in recent months, with weakness concentrated in the sectors most adversely affected by the pandemic)。需要低迷とこれまでの原油価格の下落は、消費者物価の上昇を抑えている。経済および米国の家計や企業への信用の流れを支援するための政策措置を部分的に反映し、全体的な金融状況は引き続き緩和的だ。

経済の道筋は、ワクチン接種の進展状況を含む(including progress on vaccinations)ウイルスの行方に著しく左右されるだろう。現在進行中の公衆衛生の危機は引き続き、経済活動、雇用、インフレの重しとなり、経済見通しに著しいリスクをもたらしている。

委員会は雇用最大化と長期的な2%のインフレ率の達成を目指す。この長期的な目標を下回るインフレ率が続いているため、委員会は当面、2%をやや上回る程度のインフレ率の達成を目指す。これによりインフレ率は時間とともに平均で2%になり、長期的なインフレ期待は2%にしっかりととどまる。これらの結果が達成されるまで、委員会は緩和的な金融政策の姿勢を維持すると予想する。委員会はフェデラルファンド(FF)金利の目標誘導レンジを0─0.25%に維持することを決定し、労働市場の状況が委員会の最大雇用の評価に一致する水準に達し、インフレ率が2%に上昇して当面の間2%をやや超えるような軌道に乗るまで、この目標誘導レンジを維持することが適切だと予想する。

加えて、委員会の最大雇用と物価安定の目標に向けてさらに著しい進展が見られるまで、FRBは引き続き米国債の保有を少なくとも月800億ドル、およびエージェンシーローン担保証券の保有を少なくとも月400億ドル増やす。これらの資産購入は、円滑な市場機能と緩和的な金融状況の促進を支援し、それによって家計や企業への信用の流れを支援する。

金融政策の適切な姿勢を評価するに当たり、委員会は今後もたらされる経済見通しに関する情報の意味を引き続き監視する。もし委員会の目標の達成を妨げる可能性があるリスクが生じた場合、委員会は金融政策の姿勢を適切に調整する準備がある。委員会の評価は、公衆衛生に関連する情報、労働市場の状況、インフレ圧力、インフレ期待、金融と世界の動向を含む幅広い情報を考慮する。

政策決定の投票で賛成したのは、ジェローム・パウエル委員長、ジョン・ウィリアムズ副委員長、トーマス・バーキン、ラファエル・ボスティック、ミシェル・ボウマン、ラエル・ブレイナード、リチャード・クラリダ、メアリー・デイリー、チャールズ・エバンス、ランダル・クオールズ、クリストファー・ウォラーの各委員。

2021/1/28 ロイターより
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/monetary20210127a1.pdf

長期目標と金融政策戦略に関する声明

これとは別に、FOMCはその使命と金融政策について、再確認した声明を発表しています。訳しましたので参考までに掲載します。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20210127b.htm

連邦公開市場委員会(FOMC)は、最大雇用、安定した物価、穏やかな長期金利を促進するという議会からの法定の使命を果たすことにしっかりとコミットしています。当委員会は、金融政策の決定を可能な限り明確に国民に説明するよう努めています。このような明確性は、家計や企業による十分な情報に基づいた意思決定を容易にし、経済・金融の不確実性を軽減し、金融政策の有効性を高め、民主主義社会において不可欠な透明性と説明責任を強化するものです。

雇用、インフレ、長期金利は、経済・金融の不確実性に応じて時間の経過とともに変動します。金融政策は、これらの外乱に対応して経済を安定させる上で重要な役割を果たしています。 当委員会の主な金融政策のスタンスの調整手段は、連邦資金金利の目標レンジの変更です。当委員会は、長期的に見て雇用の最大化と物価の安定に合致した水準の連邦資金レートは、過去の平均値に比べて低下していると判断しています。

そのため、過去に比べて実効下限値に制約を受けることが多くなっていると考えられます。金利が実効下限値に近いこともあり、雇用とインフレに対する下方リスクが高まっていると当委員会は判断しています。委員会は、雇用の最大化と物価安定の目標を達成するために、あらゆる手段を駆使する用意があります。

雇用の最大水準は、直接的に測定可能なものではなく、労働市場の構造とダイナミクスに影響を与える非貨幣的な要因の影響を大きく受けて時間の経過とともに変化するので、広範な基礎的かつ包括的な目標です。したがって、雇用の固定目標を指定することは適切ではなく、むしろ、委員会の政策決定は、そのような評価が必ずしも不確実であり、修正される可能性があることを認識した上で、雇用の最大水準からの不足分を評価することによって情報を得なければならない。委員会は、これらの評価を行う際に、幅広い指標を考慮しています。

長期的なインフレ率は主に金融政策によって決定されるため、委員会はインフレの長期的な目標を定めることができます。委員会は、個人消費支出の物価指数の年間変化率で測定される2%のインフレ率が、長期的には連邦準備制度理事会の法定指令と最も整合的であるとの判断を再確認しています。当委員会は、2%で十分に固定された長期インフレ期待は、物価の安定と長期金利の緩和を促進し、重大な経済的混乱に直面しても雇用の最大化を促進する当委員会の能力を高めると判断しています。当委員会は、長期的なインフレ期待をこの水準に固定するためには、長期的に平均して2%のインフレ率を目指すことになるため、インフレ率が2%を下回る状態が続いた後は、しばらくの間は2%以上のインフレ率を緩やかに達成することを目指して適切な金融政策が行われると判断しています。

金融政策の行動は、経済活動、雇用、物価に影響を与えるラグがある傾向があります。金融政策を設定する際に、委員会は、雇用の不足分を、委員会が評価した最大水準とインフレ率の長期目標からの乖離を、時間をかけて緩和しようとしています。さらに、持続的に最大限の雇用と物価の安定を達成するためには、安定した金融システムが不可欠です。したがって、委員会の政策決定は、委員会の長期的な目標、中期的な見通し、および委員会の目標達成を阻害する可能性のある金融システムへのリスクを含むリスクのバランスの評価を反映しています。

委員会の雇用とインフレの目標は概ね補完的なものである。しかし、委員会が目標が補完的ではないと判断した場合には、雇用の不足とインフレの乖離、および雇用とインフレがマンデートと一致していると判断される水準に戻ると予測される時間軸が異なる可能性があることを考慮に入れています。当委員会は、これらの原則を見直し、毎年1月の年次組織会議で適切な調整を行うとともに、金融政策戦略、ツール、コミュニケーションのあり方について、おおむね5年に1度、徹底的なパブリックレビューを実施していく方針です。

以上

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