伝説の7大投資家の一人フィリップフィッシャーとはどんな投資家だったのか?経歴から投資に対する考え方などを紹介
投資をしているとたまに目先の利益に目が眩んでついつい自分のトレードスタイルをくずしてしまう人も少なからずいると思います。そんなときは一度立ち止まって、有名な投資家のスタイルや投資哲学を学んでみるのも1つの手かもしれません。
著名な投資家は多く存在しますが、それぞれの投資家の投資スタイルには特徴があります。
そして、伝説の7大投資家のひとりとも言われるフィリップ・フィッシャーも、独自の投資スタイルを貫き通し、利益を積み上げてきました。
そこで今回は、投資家であれば知っておきたい、フィリップ・フィッシャーの投資方針や投資名言などを、彼の経歴とあわせて紹介していきたいと思います。有名な「15の質問」も記事内で取り上げているので、チェックしてみてくださいね。
フィリップ・フィッシャーはどんな投資家だったのか
まずは、フィリップ・フィッシャーの簡単な経歴を紹介していきたいと思います。
▼主な経歴
1928年:スタンフォード大学のビジネススクールを中退、アングロロンドン証券のアナリストになる
1931年:自身の会社として資金管理会社「フィッシャー&カンパニー」を設立する
1955年:当時は小さいラジオ製造会社であった「モトローラ」の株を購入
1958年:最初の著書「Common Stocks and Uncommon Profits(株式投資で普通でない利益を得る)」を出版
1998年:「フィッシャー&カンパニー」の責任者を辞める
フィッシャーの逸話として有名なのは、1955年に購入したモトローラ株を自身が亡くなるまで保有し、一度も売らなかったというエピソードです。
また豊富な投資経験を生かし、投資関連書籍の著者としても成功を納め、成長株投資のパイオニアとしてその名を世間に知らしめました。
投資の神様と称されるウォーレン・バフェットも、フィッシャーの投資に対するスタンスや考えを尊敬し、参考にしていると言われています。
フィリップ・フィッシャーの投資スタイル
彼の投資に対する考え方は、どのようなものであったのでしょうか。
フィリップ・フィッシャーの投資スタイルや考え方や、有名な15の質問について紹介していきます。
投資スタイルは、以下の2本軸で成り立っています。
- 精査して買い付けた株は永遠に保有する
- 分散投資の否定
保有期間40年越え!?フィッシャーの成長株投資の手法
フィッシャーの基本的な投資スタイルは、徹底的な分析をし、優良だと思う株を半永久的に保有するというものです。
多くの投資家が過去のデータから理論株価や今後の値動きを予測するなか、フィッシャーは常に、今後10年、20年、30年という長いスパンで確実に成長を遂げていくであろう銘柄に絞って投資を進めたといいます。
そのため、フィッシャーは最も多く銘柄を保有していたときでも30銘柄程度だったといいます。フィッシャーが保有していた株のなかでも有名な「モトローラ、テキサスインスツルメンツ、コーニング、ダウ・ケミカル」などの株価は、むこう数十年でテンバガーを優に超え、莫大な利益を生み出しました。
こうした、超成長銘柄を見つけるために、フィッシャーは企業の財務分析だけではなく、企業の雰囲気や性格なども重視したといいます。
具体的には競合会社、取引先、顧客の属性など周辺の情報まで徹底的にリサーチしていたそうです。そこまでやるのか?と疑問に思う方もいるかもしれません。しかし、その銘柄が今後10年、20年で10倍、20倍となっていくとしたらそこに掛けるコストは十分だと言えるのではないでしょうか。
分散投資ではなく、超成長株に集中投資
フィッシャーは、分散投資に対してあまり肯定的ではなかったようです。
おそらく、フィッシャーは投資信託やETFなどのインデックス投資を真っ向から否定しているのではありません。あまりよく知らない個別銘柄を、リスク分散だといって保有することは、効率的ではなく、かえって損失に繋がりやすいということを言いたいのでしょう。
「大切なのは自分がよく理解している、優良な会社を選んで投資すること」この基本方針に沿って投資をしていれば自然と多くの銘柄ではなく、自らの分析で選んだ少数先鋭の銘柄で十分な利益が得られるため、無闇な分散投資はすべきでないというのが、フィッシャーの2本軸の2つ目でした。
銘柄を絞るという点は、ピーター・リンチと同じ考え方であることが分かります。
フィリップ・フィッシャーの15の質問
株式投資における有名なフィッシャーの15の質問を紹介していきます。
超長期投資が基本となるフィッシャーの銘柄スクリーニングの根幹がここに詰まっているといえます。
- その会社の製品やサービスには十分な市場があり、売り上げの大きな伸びが数年以上にわたって期待できるか。
- その会社の経営陣は現在魅力のある製品ラインの成長性が衰えても、引き続き製品開発や製造過程改善を行って、可能な限り売り上げを増やしていく決意を持っているか。
- その会社の規模と比較して効率的な研究開発を行っているか。
- その会社には平均以上の販売体制があるか。
- その会社は高い利益率を得ているか。
- その会社は利益率を維持し、向上させるために何をしているか。
- その会社の労使関係は良好か。
- その会社は幹部との良い関係を築いているか。
- その会社は経営を担う人材を育てているか。
- その会社はコスト分析と会計管理をきちんと行っているか。
- その会社には同業他社よりも優れている可能性を示唆する業界特有の要素があるか。
- その会社は長期的な利益を見据えているか。
- 近い将来、その会社が成長するために株式発行による資金調達をした場合、株主の利益が希薄化されないか。
- その会社の経営陣は好調な時は投資家に会社の状況を饒舌い語るのに、問題が起こったり期待が外れたりすると無口になっていないか。
- その会社の経営陣は本当に誠実か。
質問の中には、財務や市況を判断するものもありますが、その多くは「投資先の会社自体の経営力・ビジネスセンス・堅実さ」を判断するための質問になっていますよ。
この数字だけではない、会社を人のように捉え、人間性ならぬ企業性をみていることに、フィッシャーの投資への考えが色濃く出ています。
もし長期的に投資したい企業を探している、もしくは投資をしようか迷っている方は、この15の質問に照らし合わせてみると良いでしょう。
心に留めておきたいフィッシャーの売り時に対する考え
最後に、フィッシャーの保有銘柄の売却に対する考えを紹介します。
「株を購入したとき、それが正しく行われていれば、それを売る時期はほとんどない。」という名言にも表れているように、フィッシャーは以下の3パターンでしか株は売らないと言い残しています。
- 投資対象を選択する時点で判断が誤っていた場合
- 当初は優れていた会社が、時間の経過とともに上記の15の質問の基準を満たさなくなってしまった場合
- もっと有望な株に乗り換える場合
つまり、「自分の投資するタイミングでの判断が正しいと思えば、より魅力的な銘柄でも表れない限り、ほぼ永久に持ち続ける」とフィッシャーは考えているわけです。少なくとも数ヶ月といった短いスパンではなく、10年以上の長いシナリオで売買を行うことをフィッシャーは推奨しているわけです。
投資家がすべきでないこと
15の質問を守っていれば、ほとんど当てはまることはないと思いますが、フィッシャーのNGリストも知っておきましょう。
- 創業間もない企業は買わない
- 「店頭株」だからと言って無視しない(未上場でも良い会社は投資対象として良い)
- 年次報告書の雰囲気が良いというだけで買わない(注意深く分析)
- 高PERは、必ずしも今後収益成長が加速するということではない
- 買値の僅かな差に固執しない
- 銘柄を分散しすぎない
- 戦争の時期には株を恐れず買う(人々が恐怖におののいている時に買う)
- 多くの投資家から注目されているが、実際にはほとんど意味のない統計数値にごまかされない(株価の過去のレンジなど)
- 本物の成長株の購入には、タイミングと株価も重要
- 多数派の真似をしない
怖い時に買う、多数派の真似をしない、などは考え方が広いですが、これらを見るとピーター・リンチの考え方に近いということが分かります。
まとめ
フィッシャーの思想を受け継いだ人々の中で、もっとも有名な人物はウォーレン・バフェットだと言われています。
バフェットの師匠として有名なグレアムは、過去の決算内容や競合分析により割安銘柄を探すプロでした。しかし、フィッシャーが重視するモノは未来でした。数字だけではなく、将来の成長性や競争力を重視し、会社の本質を見抜き成長予測を行うことで、爆発的な有望銘柄を探し出すことに成功。「成長株投資」の創始者と呼ばれるようになったのです。
成長性の高い米国株では、テンバガーは多数存在します。そこでより高いパフォーマンスをあげるために、フィッシャーの考え方を取り入れてみてはいかがでしょうか。