インデックスファンドとバンガードの生みの親ジャック・ボーグルとは

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今では当たり前に取引できるインデックス・ファンドをつくったジャック・ボーグルをご存知でしょうか?同氏は、ETF大手であるバンガード・グループを創業し、インデックス・ファンドを販売。アクティブ運用が主流だった当時の投信業界に革命を起こしました。

著名投資家のウォーレン・バフェットも、同氏を「米国の投資家に最も貢献した人物」と評しているほどです。インデックス運用型の投信を世に送り出し、バンガードの運用資産総額が5兆ドルを超えるほどの投信会社となる礎を築いきました。

そんなボーグルの功績とインデックス・ファンドの誕生について解説します。

インデックス・ファンド“バンガード”の誕生まで

ジャック・ボーグルは、ニュージャージー州で生まれ、1951年にプリンストン大学を経済学における極めて優秀な成績で卒業しました。卒業論文で制作したミューチュアル・ファンドに関する論文が、プリンストン大学の同窓生であるウォルター・L・モーガン氏の目にとまりました。

モーガン氏は、国内で最も歴史のあるバランスファンドのウェリントン・ファンドを1929年に創業したミューチュアル・ファンド業界の重鎮の1人でした。フィラデルフィアを拠点とする同氏の投資運用会社、ウェリントン・ファンドでボーグルを採用しました。

1951年にプリンストン大学を卒業したボーグルは、ウェリントン・ファンドに就職。順調にキャリアを歩み。1955年にはアシスタントマネージャーに昇進。ウェリントンがミューチュアル・ファンド・グループへと成長する牽引役となりました。

1965年に、35歳のボーグルは創業者のモーガンに会社の立て直しを任されました。新しい株式投資信託を統合しましたが、好景気が終わり上手くいきませんでした。しかし、1967年にはウェリントン社の社長に就任しするまでになりました。この間にボーグルは、バランスファンドであったウェリントンを補完するものとして株式ファンドを創設するようウェリントン・マネジメント経営陣を説得し、成功しました。

ウェリントン・マネジメントは、1967年にボストンの投資会社であるソーンダイク・ドーラン・ペイン・アンド・ルイス(TDPL)と合併しました。1974年に経営を巡る対立からボーグルはウェリントンを退職し、ただし、投資信託の取締役会を説得し、投資信託の会長兼CEOを続けられることになりました。

そして、ウェリントンのファンドの事務管理機能を担うヴァンガード・グループを設立しました。一方で、投資運用業務と販売業務はTDPL/ウェリントン・マネージメントが担当し続けました。

1976年、バンガードは初の個人投資家向けにインデックス・ミューチュアル・ファンドを設立しました。しかし評判は散々で、業界内では「アメリカらしくない」や「凡庸に陥る道」などと嘲笑されました。そして、最初に設定されたファースト・インデックス・インベストメント・トラスト(現在のS&P500インデックス・ファンド)には、1100万ドルしか集まりませんでした。

1977年にボーグルとバンガード社は、再度、業界の伝統を打ち破り、ブローカーを通じたファンドの販売を中止。その代わりに、直接投資家に販売するようになりました。販売手数料を排除し、純粋な販売手数料なしのミューチュアル・ファンドの複合体となりました。この動きは、投資家にとって数百万ドルの販売手数料の削減につながるものでした。その結果、個人投資家のパフォーマンスに大きく貢献したといえます。

なお最初のファンド、バンガード500インデックス・ファンドは業界最大のファンドのひとつにまで成長。2021年2月時点では、4528億ドル以上の資産を保有しています。

バンガード社のETF

バンガード社は投資家の利益を追求するために、極限まで運用コストを引き下げることを行ってきました。

同社が運用する代表的なETFであるバンガード・S&P500 ETF(VOO)の経費率(信託報酬に相当)は年率2021年1月時点で0.04%と非常に低い水準となっています。

ボーグル氏は「低コストのインデックスファンドを活用して米国企業や世界中の企業の株式に長期投資すること」こそが投資家にとって最も良い投資法であると説いています。

例えばS&P500に連動するインデックスファンドを購入すれば、米国のほとんどの企業に投資していることになります。

また、インデックス投資は勝者のゲーム(パンローリング)では、株式投資で成功する戦略とは「アメリカの上場株式すべてを、極めて低いコストで保有すること。これらの企業が配当や利益成長というかたちでもたらすリターンのほぼすべてを獲得することができる。それは歴史が証明している」と書かれています。

S&P500は、以下のチャートの通り長期的に高いリターンを達成してきましたので、毎年のコストが少しでも安い方が長期的には大きな利益の差となります。

▼S&P500長期チャート

出所:TradingView 期間:1966年11月~2021年1月

▼初期費用100万円として毎月の積立額別1億円達成期間

投資期間と利回り9.90%8%7%
3万円31年7カ月36年12カ月40年9カ月
5万円27年6カ月31年11カ月34年10カ月
8万円23年8カ月27年1カ月29年4カ月
10万円21年10カ月24年10カ月26年9カ月
※税金は考慮しない

バンガードは米国だけでなく、投資家が先進国や新興国に国際分散投資を手軽に実践できる様々なファンド(ETF)を運用し提供しています。また、対象となるインデックスは株式に加えて債券も含まれており、世界中の投資家はバンガードのファンドを活用することで手軽にバランスの良い国際分散投資を実践できます。

2020年12月末時点において、インデックス・ファンドの70%はバンガードの管理下にある5兆1000億ドルとなるほどの高いシェアを占めています。これは他の多くのファンド会社も扱っており、多くのETF市場の形成につながっています。

この業績を称え、個人投資家のためというインデックスのコンセプトのパイオニアとして、ボーグルは「インデックス・ファンドの父」と呼ばれています。

▼バンガード社の運用する代表的な米国ETF

銘柄ティッカー概要経費率
バンガード・S&P500ETFVOOS&P500指数に連動したパフォーマンスを目指す0.04%
バンガード・トータル・ワールド・ストックETFVT米国を含む先進国および新興国約47ヵ国の大型・中型・小型株約8000銘柄で構成0.10%
バンガード・米国増配株式ETFVIT10年以上連続して増配の実績を持つ米国普通株で構成0.06%
バンガード・米国情報技術セクターETFVGT米国の情報技術セクターの大型株、中型株、小型株で構成0.10%
バンガード・米国トータル債券市場ETFBND米国の投資適格債券市場を網羅するインデックスに連動を目指す0.05%
※経費率は2021年1月末時点

ボーグルの受賞および功績、その他の要職など

1969年~
1970年
投資会社協会の理事会会長
1972年~
1974年
全米証券業協会(NASD、現金融取引業規制機構(FINRA))の投資会社委員会会長
1997年証券取引委員会委員長に独立性基準委員会の委員に任命
1999年フォーチュン誌:投資業界における4人の「20世紀の巨人」の1人に選出
2004年タイム誌:「世界で最も影響力のある100人」の1人に選出
インスティテューショナル・インベスター誌:生涯功労賞を授与
2010年フォーブス誌:「過去1世紀に他のどの金融関係者よりも投資家のために良いことを行った」人物と評価
2012年   ジョン・C・ボーグル・レガシー・フォーラム:米国で最も尊敬される金融業界のリーダー達がボーグル氏の功績を褒め称える

ボーグル氏は、金融業界で最大ともいえるほど大きな影響を与えた人物であり、様々な投資業界で複数の理事会のメンバーを務めました。また、複数の会社の取締役を務めました。

そして、母校プリンストン大学を含む14もの大学から名誉博士号を授与されました。

ジャック・ボーグルまとめ

2019年1月16日、インデックス型投資信託と低コスト投資で世界を先駆けた米投資信託運用会社「バンガード・グループ」のジャック・ボーグルが亡くなった。89歳でその生涯を終えました。

インデックス型投資信託は、平均株価など特定のインデックス(指標)と同様の値動きをするように設計された投資信託。投資先を機械的に選択しバランス良く分散投資しながら、長期保有と低コストで利益を得る。ノーベル経済学賞受賞者ポール・サミュエルソンの理論に裏打ちされたシンプルで優れた投資のアイデアは、一般投資家にも役立っている。

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