ヘッジファンドといえば、空売りを行うことで利益を得るというイメージを持つ人の多いのではないでしょうか。米国の空売りを得意とするヘッジファンドの中では、グリーンライト・キャピタルのデビット・アインホーンは著名な存在です。同氏に空売りの標的にされた銘柄は必ず下がるといわれるほど、株式市場において影響力を持っています。
そんなアインホーン氏の経歴や投資方法に関して紹介します。
デビット・アインホーンとは
デビット・アインホーンは、バリュー投資志向のヘッジファンド、グリーンライト・キャピタルの創業者兼社長です。
1996年に運用額100万ドルで立ち上げたファンドは、1997年に58%という高い収益率を記録。2000年のITバブルも乗り越え、サブプライム・リーマンショックでは、リーマン・ブラザーズの空売りを行い莫大な利益を上げました。2013年までファンドの平均利回りは、19.5%を叩き出しています。
ただし、2015年以降苦戦が続いており2018年は34.2%のマイナスを計上。ファンドの運用資産が大きく減少することになりました。
なお、2003年にウォーレン・バフェットとの昼食券を25万ドルで獲得した人物でもあります。
大富豪でありながら毎日電車でオフィスに通勤。仕事を早く済ませると、家族との時間を大切にしているそうです。
慈善事業に積極的で、マイケル・J・フォックス・パーキンソン病リサーチ財団とヒレル(ユダヤ人の大学生のための財団)の理事でもあります。
デビット・アインホーンの生い立ち
アインホーンは、1968年にウィスコンシン州で生まれました。高校では討論クラブで物事を考え、討論の方法を学びます。
大学は名門コーネル大学に進み、政治学を専攻。経済に興味を持ちます。1991年に主席で卒業。あらゆる学科で抜群の成績を収め、文理・教養学部で文学士号を修得しました。そして、ウォール街の投資銀行ドナルドソン・ラフキン・アンド・ジェンレットに就職します。
アインホーンは、投資銀行に就職する代表的な学生像だったといえます。
デビット・アインホーンの投資手法
アインホーンの主な投資手法は、バリュー株投資です。しかし同時に、個別銘柄の空売りを行うことで知られており、米国株式市場屈指の空売りの名手とされています。
毎年のように空売りの標的を見つけており、標的となった銘柄はウォール街で「アインホーンされる」と言われています。これは、アインホーンがに名指しされた企業の株価が必ず下がるという意味です。
実際に、グリーンマウンテン・コーヒー・ロースターズやチポトレ・メキシカン・グリルなどの銘柄は急落しました。しかし、資金力で株価を売り崩すということはなく、割高だと分析されたため空売りを行うとされています。
通常、空売りは短期決戦とされていますが、アライド・キャピタルは6年もの時間をかけて売り続け、2008年には粉飾決算で急落。2007年4月に25ドルだった株価は、2009年3月には3ドルまで落ち込みました。
◆アライド・キャピタル週足チャート
アインホーンの空売り発言に反対意見もあり、その発言で相場操縦を行っているのではないのかと非難もされています。しかしアインホーンにその意思はなく、むしろ自身の投資アイデアをむやみに追いかけても意味がなく、投資家自身で判断すべきだと反論しています。
そして、アインホーン売買データを開示しています。通常、ヘッジファンドは自社の投資アイデアを開示しません。なぜなら、他の投資家に真似をして欲しくないからです。しかしアインホーンは、秘密にしておく理由がひとつもないため開示を行うそうです。隠し事をなくし透明性を高めていくことで自らを評判を高めています。
それは信頼性を得ることにつながり、今日でも表舞台に立ち続けているのではないでしょうか。
収益力がある割安企業株~アップルの大口保有
アインホーンは、収益力がある割安企業を購入します。その代表的な例として、アップルがあります。
2010年にiPhone人気が長期に渡って収益を生むと分析しアップルへ投資を開始しました。
2012年9月にアップル株価が下落した際には、多くのファンドが撤退。しかし、そこでアインホーンのファンドは買い増しを行います。そして、そのころを境にアップル社に具体的な要求を行うようになりました。
当時のアップルは、キャッシュリッチであり、今後も現金が積み上がる状況でした。アインホーンは、そのキャッシュを低迷する株価の起爆剤にしようと考え、株主還元の強化を繰り返し要求しました。
その結果かどうか分かりませんが、アップル社は2013年4月に10000億ドルを株主還元策を発表しました。その後も、アップル株を保有し続け、2014年3月末時点では、10億ドルのアップル株を保有しています。
◆アップルの株価月足チャート
りそなホールディングスなど日本株への投資
2014年4月に、りそなホールディングスの株式を平均547円取得したことを発表しました。
その理由として、同社が公的資金を2017年までに完済すると公表し、そのペースが想定よりも大幅に前倒しになっていたこと。そして収益率が高く、日本の同業他社と比較しても株価は割安だったとしています。
その後、およそ1年間で同社株は726円まで30%以上も上昇し大成功を収めました。
◆りそなホールディングス株価週足チャート
アインホーンはポーカープレイヤーとしても有名だった
アインホーンはポーカープレイヤーとしても有名で、専門家から「テレビ番組に登場するプロよりも上」と高い評価を受けています。
2006年に初参戦したポーカーの世界大会WSOPでは、8773名のうち18位にランクイン。65万9730ドルの賞金を獲得。2012年には、同じ大会で3位にランクイン。400万ドルの賞金を手に入れました。なお、賞金の全ては慈善事業に寄付しています。
アインホーンによると、ポーカーと銘柄の選択は似ており 、どちらも「辛抱強く有利な機会を探すこと。リスク管理を行い、それに見合った掛け金を利用しようとする点で同じ」なのだそうです。
また感情を表に出さず、ポーカーで相手の考えていることを読む力があり、そして数学的な能力がポーカーで発揮できたとしています。
デビット・アインホーンまとめ
バリュー(割安)株への投資を行う個人投資家は多いでしょう。しかし統計的に見ると、バリュー株はグロース株にパフォーマンスで劣っています。
そこで、アインホーンが重視している収益力の高さを投資のヒントに加えていくことで、より高いパフォーマンスを上げることができるのかもしれません。