世界最大の年金基金といえば、日本のGPIF(年金積立金管理運用)です。
GPIFとは?国民の年金資金を管理・運用する機関「GPIF」の概要から気になる運用方針まで解説!
では、米国で最大の年金基金はどこでしょうか?それは、カリフォルニア州職員退職年金基金で、通称カルパースと呼ばれています。運用資産は40兆円規模もあり、金融市場では積極的な投資を行う有名なプレイヤーです。
そんなカルパース(CaiPERS)とは、どのような年金基金なのでしょうか?
米国最大の運用資産を誇るカルパースの運用状況や方針に関して知っておきましょう。
目次 ー Contents
カルパース(CalPERS)とは
カリフォルニア州の公務員の退職金を運用する年金基金であるカルパースは、2020年末時点で、およそ46兆円(4419億ドル)の運用資産を誇ります。
1932年に設立された米国最大の公的年金基金で、戦前からの運用実績を誇ります。170万人以上のカリフォルニア州の職員や学校行員、公的機関の職員の退職金制度や、140万人の健康保険を管理運用しています。
日本のGPIFや海外の年金基金と比較して、積極的な投資姿勢で知られており、時に世界の金融市場に大きな影響を与える機関投資家として注目されています。
またカルパースは、投資先の企業へ経営介入を行う、いわゆる「もの言う株主」でもあります。
カルパース(CalPERS)の運用パフォーマンス
カルパースの運用パフォーマンスを、GPIFと比較してみましょう。
年金基金 | 2010年度 | 2011年度 | 2012年度 | 2013年度 | 2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 2019年度 |
CalPERS | 13.1% | 3.7% | 10.9% | 13.7% | 6.1% | -0.2% | 10.1% | 11.1% | 3.40% | -0.40% |
GPIF | -0.3% | 2.3% | 10.2% | 8.6% | 12.3% | -3.8% | 5.9% | 6.9% | 1.50% | -5.20% |
▼カルパース(CalPERS)の10年間の収益率
CalPERS:77.88%
GPIF:43.64%
GPIFよりも高い運用パフォーマンスとなっており、年間5.8%ほどの収益率をあげています。GPIFも優秀ですが、10年間に10%以上の収益率を出す年が4回もあるほどです。
なお、リーマン・ショックの影響を大きく受けた2008年度は-29.1%でしたが、翌年には 25.2%ものパフォーマンスを出すなど、大規模な金融緩和と株高の恩恵をしっかり受けています。
カルパース(CalPERS)のポートフォリオ
カルパースのポートフォリオを見てみましょう。
株式の比率が58%程度と大きくなっており、ますがその他資産が14%程度あるところが他の年金基金と大きく異なる点です。
ブラックロックなどのヘッジファンドに運用を預けるほか、新興国の株式や不動産。さらには、ワイン畑や植林事業などオルタナティブ投資にも積極的に投資しており、年金基金としては異例といえます。
しかしながら、株式への投資比率は低く、カナダ年金制度投資委員会が85%やノルウェー年金基金が70%に比べると、大きく劣ります。それでも、近年のパフォーマンスはほとんど変わらないほど安定した高い運用益を実現しています。
カルパースは、その資金規模はもちろん、優れた運用手法は世界中の運用担当者からも注目を集めているのです。
カルパース(CalPERS)の運用方針
カルパースは、ブラックロックなどと同じく※ESGへの取り組みを行う企業を評価し投資する方針をとっています。2016年8月15日に、カルパースの意思決定機関である理事会は5カ年ESG投資戦略計画を承認しました。
※ESG(環境問題・社会的責任・企業統治)
また、投資ポリシーには投資先企業との対話を積極的に実施すると定められています。独自のガバナンス評価ルールを定めており、「グローバル・ガバナンス原則」では、同一企業で12年以上在任している役員、独立性要件を満たさないと警告する場合もあるようです。
時には他の年金基金と共同の議決権行使等を通じて取締役の任命や環境課題への取り組みの意思決定に関わるという場合もあり、カルパースが株主になれば、その企業のガバナンスが大きく変わる可能性があると考えられます。
投資先企業の業績が思わしくなかったり、ESGに問題がある場合には、積極的に株主提案を行ったり、議決権の行使を通して企業に是正を求めるという姿勢をとっています。
投資方針を発表する場合もあり、例えば2016年にはタバコ産業からのダイベストメント(投融資引き揚げ及び投融資停止)を継続すると発表しました。これにより、機関投資家はもちろん、これらのセクターの銘柄を保有している個人投資家の売買に影響が出た可能性が大いにあります。
個別銘柄への投資状況
2020年時点において、環境問題を解決する企業に投資を行うカルパースは、テスラやニオなどの電気自動車(EV)関連企業への投資も行っています。テスラ株は169万株(2020年12月末時点)を保有しており、1400億円ほどの規模となります。
またフィンセン文書の公表によりSECや米司法省が調査に乗り出し、創業者であるミルトン会長が辞任した二コラ株を、急落する最中に保有量の3倍以上(約6万株→26万株)を買い増しするなど、ドラスティックな売買も行っています。
カルパース(CalPERS)~まとめ
カルパースのような巨大な資金を持つ年金基金は、公務員の年金を預かっているため、非常に綿密な調査を行ったうえで投資します。
そのため、もし年金資金が入ってくれば優良企業であり長期的に上昇が見込めるというお墨付きを得たともいえます。また、大きな資金での買い付けになるため、浮動株が減少し株式の希少価値が上昇しふたつの意味で値上がりしやすい銘柄になるといえます。
米国株に投資をする際には、このような大口の動向を参考にしてみてはいかがでしょうか。