米国株が日本株よりも高いパフォーマンスを発揮する分かりやすい要因として、米国経済と日本経済の差があります。当然、経済が好調な国の株価の方が上がりやすいというのは誰でも分かりますよね。
今回は、二カ国の経済の違いに関して解説していきます。
代表的な経済指標で比較
経済の状況を示す様々な「経済指標」というデータがあります。毎月もしくは四半期ごとに発表される指標により、その国がどういう状況にあるのかを知ることができるのです。
つまり、日本と米国で経済指標を比較すれば、どちらが良いのかが一目瞭然という訳です。
代表的な4つの経済指標でみていきましょう。
・GDP
・小売り
・雇用
・インフレ
経済指標の話は難しいという方でも、グラフを一目見ればどちらの国が良いのか分かります。
GDP(国内総生産)
経済状態を表す代表的な指標と言えば、GDPです。2019年の日本のGDPは約5兆ドル(508兆)と世界3位を誇っています。
▼2019年 世界のGDPトップ3
1位 米国:21.3兆ドル
2位 中国:14.3兆ドル
3位 日本:5兆ドル
グラフを見てもらえば分かるように、2009年まで日本はGDPが世界で2位でした。しかも1990年代には、大国である米国との差はバブル崩壊後にも関わらず僅かです。しかし、年を追うごとに米国と中国のGDPは上昇。日本が横ばいどころか少し停滞するなか、米国は25年間でおよそ3倍、中国に至っては20倍近くにもなっています。
これだけでも、日本株よりも米国株を買った方が良い圧倒的な理由になるのが分かるかと思います。
小売り
次に、モノがどれだけ売れているかという小売りの状況を見ていきましょう。日本と米国では、そもそも人口が3倍近く違いますので、GDPと同じように伸び率を比較すれば良いでしょう。
日本と米国では、小売りの経済指標の範囲が違うため、少しデータが異なってしまうのですが、一定の参考になります。
▼日本の小売業販売額(前年比)
集計の仕方の違いで前年比と前月比で異なってしまっていますが、まとめると以下のようになります。
米国:月平均0.4%程度で推移 2019年は4.3%程度で推移
日本:月平均0.1%程度で推移 1019年は1.5%程度で推移
しかも、日本は2019年10月から消費税増税を行っていることから、その前後で大きく変動しています。しかし、増税後の1月には日本人の財布のひもが緩くなるにも関わらず、前年比で大きく悪化しています。
一方で、米国は減税政策を行っていることからモノがよく売れています。日本とアメリカの政策の違いがこれだけの差を生んでいるといって良いでしょう。
雇用
次に、雇用状況を見ておきましょう。
どれだけの人が働いているのはか、ざっくりと失業率を見ていけば分かります。当然、失業率は低いほど良いことになります。
▼失業率の推移:日本(左)米国(右)
日本の失業率は世界でも優秀で、2.4~2.8%程度で推移しています。一方で米国の失業率は、緩やかに減少していますがコロナショックの直前でも3.5%でした。ただ、米国と日本では失業率のベースが大きく異なっています。日本の失業率は、コロナの影響が出るまでは2%台後半とバブル前後の過去最高水準まで改善されていました。一方で米国の失業率も2019年まで4%台とこちらも過去最高レベルでした。失業率だけ見ると、どちらの国も優秀であると言えそうです。
インフレーション(物価)
最後は、意外と大事なインフレ率です。「米国株式投資の魅力」で少しお伝えしましたが、物価は経済や株価と密接な影響があります。例えば、景気が良くなれば多くの人の給料が上がりお金を使う人が増えることから、企業は安売りをする必要はありません。そればかりか、高級品の値段は上げる可能性もあります。つまり、モノやサービスの値段は少しづつ上がっていくのです。
モノの値段が上がっていくとどうなるでしょうか。車や住宅など、大型消費は早く買った方がお得ですよね。つまり、インフレになるとお金の周りが良くなり、景気の後押しにつながるのです。もちろん、過度のインフレは良くないですが、2,3%の穏やかなインフレは経済にとって良いとされています。
▼日本と米国のインフレ率の比較
新型コロナウイルスの影響の前を見ていくと、日本はだいたい1%程度、米国は2%程度のインフレ率で推移していることが分かります。大きな違いとしては、米国は常にプラスで推移しているものの、日本はマイナスの月、つまりデフレ状態の期間があることです。
これでは、なかなか景気は良くなりませんよね。
その他に考えられる要因
これまで、一般的な経済指標のデータを紹介してきました。もちろんそれ以外にもたくさん要因がありますので、いくつか紹介したいと思います。
・言語の違い
分かりやすいものとして、英語圏と日本語圏の違いがあります。
日本語圏は日本人のみで、その人口は約1億2000万人。
一方で、英語圏は世界中に15億人以上、英語を公用語・準公用語としている国の総人口となると、なんと21億人にも登ります。こうなると、言語だけでユーザーが10倍以上も差が開いてしまうのです。
例えば、インターネットニュースのサイトを運営している企業があるとします。仮想通貨などは、なかなか特定の国などに限定されないグローバルな位置付けですよね。そうなると、単純に英語か日本語で10倍以上も獲得できるユーザーに差があり、広告収入などにも影響してしまいます。
・米ドル
世界の基軸通貨と言えば、米ドルです。グローバル企業の場合、決済基準の多くは米ドルとなるところが多いでしょう。つまり、為替の変動が企業の収益を大きく左右するのです。
例えば日本のトヨタ自動車は、米ドル円が1円下落すると約400億円ほど収益が悪化すると言われています。円高になると日本株が下落し易いのは、こういった企業が多いためです。
一方で、米国企業であれば基本的に決済は米ドルですので、為替変動リスクを気にする必要がありません。そのための人員を確保する必要もないですから、日本企業よりもリスクの少ない経営ができると言えます。
・人口増加率の違い
日本の大きな課題として、人口が減り続けていることと、人口の21%以上が65歳以上という超高齢社会であることです。労働人口が少なく、今後も減り続け、さらに現役世代の負担が大きくなるというトリプルパンチを受けているわけです。
一方で米国はどうでしょうか?米国は1%以下ではあるものの、人口が増え続けています。そして、毎年100万人前後の移民がアメリカにやってきているのです。ここは日本と大きな違いであると言えます。
▼米国の人口と人口増加率の推移
人口が増えるということは、それだけ経済活動が大きくなるということですから、当然上に上げた経済指標にも良い影響を及ぼすことになります。人口は経済の歯車を回す大きなエンジンとも言えそうですね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。改めて、日本と米国の差を感じることができたかと思います。
投資対象としてみると、日本株に投資を行うことは、自ら難易度を上げているように感じるのではないでしょうか。過去の株価の推移を見ると、それがしっかりと現れていることで答え合わせができていると言えるでしょう。
資産運用を行うのであれば、どちらが良いか明確ですよね。