日本や米国の政策金利はどのように決められているか知っていますか?実は世界一の経済大国である米国の政策金利はFOMCという会合で決められています。
そして、このFOMCの金利政策の決定事項によって、株式市場や為替が大きく動くこともしばしば見受けられます。
つまり、FOMCは投資をしていく上で、必要不可欠な投資知識のひとつというわけです。そこで今回は、FOMCとはどんな会合で、どういった影響力をもっているのかわかりやすく解説していきます。
米国の政策金利などを決めている「FOMC」とは?
FOMCとは、米国の中央銀行の役割を担っているFRB(連邦準備制度理事会)によって主に今後の金融政策について話し合われます。そして政策金利はフェデラル・ファンド金利(FF金利)誘導目標が0.25%のレンジで示されます。
年8回の定例会合があり、必要に応じて臨時会合が開催されます。
FOMCは、「Federal Open Market Committee」の頭文字をとったもので、日本語では「連邦公開市場委員」と訳されます。
このFOMCは、会合に参加するメンバーもFRB理事7名と、ニューヨーク連邦準備銀行総裁1名、地区連邦準備銀行4行の総裁4名の計12名という豪華な顔ぶれになっており、米国金融機関のトップが集まる非常に注目度の高い会合となっています。残り7名の地区連銀総裁、NY地区連銀副総裁も議論には参加しますが、投票権は持っていません。
年8回の定例会合では、参加者による今後数年間の年末時点での経済成長率や失業率、物価、政策金利水準の見通しが発表されます。
政策金利水準の見通しは、各メンバーの見通しをドットの形でグラフに示したドット・プロットが公表され、平均値や中心地だけでなく、分布も確認することができる。
この分布の平均値が、将来の政策金利の見通しとなり、株式・為替相場を大きく左右します。
発表日時:米国夏時間午前3時、冬時間午前4時(2月、4月、8月、11月を除く)
※日本時間
FOMCの役割
一番大きな目的・役割は米国経済(物価と雇用)の安定です。
いきすぎた好景気の際には、金融の引き締め、逆に不景気の際は、金融緩和を行うなどして米国の景気・お金の流通量をコントロールすることがFOMCの目的というわけです。
具体的には、公開市場操作(中央銀行による市場に流通する通過量の調節)の方針を決めたり、政策金利をそのときの景況によって変更したりしています。
日本銀行や英国中央銀行など、各国の中央銀行の役割が物価の安定のみであることに対して、FRBは雇用の安定が目的にあるという違いがあります。
FOMCは株式・為替市場にどのように影響を与えるのか
続いてFOMCの結果は株式・為替市場にどんな影響を与えるのかを、その理由とともに簡単に説明していきます。
まず、FOMC後の政策発表で注目されるのは「現在の米国の景況判断」と「政策金利」です。とくに「政策金利」の方は、市場のマネタリーベースの増減に直結しているため、多くの投資家が注目しています。
具体的に市場に対してどのような影響を与えるかというと、一般的には「政策金利の利上げ」などの金融引き締め策は、「株安・ドル高」。逆に「政策金利の利下げ」といった金融緩和策が発表されると「株高・ドル安」に向かう傾向があります。
▼金融政策と株価と米ドルの動き
金融政策 | 株価 | 為替 |
緩和 | 上昇 | ドル安 |
引き締め | 下落 | ドル高 |
ここで注意しておきたいのが、「市場の政策金利の予想値」と「FOMCで決定された実際の政策金利」とのギャップが大きいほど市場に与える影響が大きい傾向にあるという点です。
そのため、「金利が下がったから株高・ドル安だ」といった安直な捉え方をするのではなく、市場の予想値との乖離具合や、そのときの米国経済の見通しなどを踏まえて数値を捉えることを意識しましょう。
その他の金融政策
政策金利の変更は、伝統的な金融政策とされています。
しかし、近年では非伝統的金融政策として、様々な政策が行われるようになっています。
フォワードガイダンス:前もって将来における金融政策の方針を表明すること
量的金融緩和:MBS(住宅担保証券)や国債を銀行から買い入れる
オペレーション・ツイスト:長期国債の買い(あるいは売り)と短期国債の売り(あるいは買い)を同時に行うことで、マネタリーベースを一定のままに長短金利をそれぞれ逆方向に導く
テーパリング:徐々に緩和の規模を縮小してゆくこと
FOMCに影響を与える経済指標
最後に、FOMCに影響を与えやすい、経済指標をいくつか紹介していきます。
米国雇用統計…米国の非農業部門の雇用者数の増減や、離職率などを表す統計データ
消費者物価指数(CPI)…米国の世帯が購入する財やサービス価格の平均的な変動を表す
小売売上高…小売業の売り上げ高を表す、消費者の動向を把握するのに役立つ
PCEデフレータ(個人消費の物価動向を示す指標)…個人消費の物価動向を示す指標
すべての経済指標に共通しているのは「米国経済の現状を色濃く表す経済指標である」という点です。
FOMCのみの発表を頼りに株式投資やFXトレードをすると、思わぬ損失を被ってしまうこともありますから、こうした関連度の高い経済指標も合わせて確認することで、より精度の高い取引が可能になると思います。
まとめ
今回は、米国の金融政策を決める最重要な会合のひとつである「FOMC」について解説してきました。
FOMCは、米国経済の舵取りを担っているといっても過言ではありません。そのため、FRB議長や投票権のある理事の発言は投資家から注目されます。
経済危機などの際には、金融政策次第で景気が悪くとも株価の底打ちにつながる場合も多いため、底値を拾うために避けては通れない重要な経済イベントといえます。