米連邦公開市場委員(FOMC)を受け米国株の株価上昇を確認【2020年12月】

12月15日、16日の日程でFRBのFOMC(米連邦公開市場委員)が開催されました。16日には、記者会見も行われました。

一部にあった長期国債買い入れについても現状維持ということで、金融政策の変更も発表されませんでした。一番驚いたのは、パウエル議長の株式市場についてのコメントです。非常に重要な内容で、株式市場はまだまだ上がるとお墨付きをもらったような内容でした。

2020年12月FOMC声明全文

ロイター編集より
2020年12月17日

米連邦準備理事会(FRB)は、この厳しい局面で米経済を支援するためにあらゆる手段を行使し、雇用最大化と物価安定という目標を促進することに全力で取り組む。

新型コロナウイルスのパンデミックは、米国および世界中で多大な人的および経済的苦難をもたらしている。経済活動と雇用は回復を続けているが、年初の水準を大きく下回ったままだ。需要低迷とこれまでの原油価格の下落は、消費者物価の上昇を抑えている。経済および米国の家計や企業への信用の流れを支援するための政策措置を部分的に反映し、全体的な金融状況は引き続き緩和的だ。

経済の道筋は、ウイルスの行方に著しく左右されるだろう。現在進行中の公衆衛生の危機は引き続き、短期的に経済活動、雇用、インフレの重しとなり、中期的な経済見通しに著しいリスクをもたらすだろう。

委員会は雇用最大化と長期的な2%のインフレ率の達成を目指す。この長期的な目標を下回るインフレ率が続いているため、委員会は当面、2%をやや上回る程度のインフレ率の達成を目指す。これによりインフレ率は時間とともに平均で2%になり、長期的なインフレ期待は2%にしっかりととどまる。これらの結果が達成されるまで、委員会は緩和的な金融政策の姿勢を維持すると予想する。

委員会はフェデラルファンド(FF)金利の目標誘導レンジを0-0.25%に維持することを決定し、労働市場の状況が委員会の最大雇用の評価に一致する水準に達し、インフレ率が2%に上昇して当面の間2%をやや超えるような軌道に乗るまで、この目標誘導レンジを維持することが適切だと予想する。

さらに、委員会の最大雇用と物価安定の目標に向けてさらに著しい進展が見られるまで(until substantial further progress has been made toward the Committee’s maximum employment and price stability goals)、FRBは引き続き米国債の保有を少なくとも月800億ドル(at least $80 billion)、およびエージェンシーローン担保証券の保有を少なくとも月400億ドル(at least $40 billion)増やす。これらの資産購入は、円滑な市場機能と緩和的な金融状況の促進を支援し、それによって家計や企業への信用の流れを支援する。

金融政策の適切な姿勢を評価するに当たり、委員会は今後もたらされる経済見通しに関する情報の意味を引き続き監視する。もし委員会の目標の達成を妨げる可能性があるリスクが生じた場合、委員会は金融政策の姿勢を適切に調整する準備がある。委員会の評価は、公衆衛生に関連する情報、労働市場の状況、インフレ圧力、インフレ期待、金融と世界の動向を含む幅広い情報を考慮する。“

政策決定の投票で賛成したのは、ジェローム・パウエル委員長、ジョン・ウィリアムズ副委員長、ミシェル・ボウマン、ラエル・ブレイナード、リチャード・クラリダ、パトリック・ハーカー、ロバート・カプラン、ニール・カシュカリ、ロレッタ・メスター、ランダル・クオールズの各委員。

以上

FOMC声明のリンク
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/monetary20201216a1.pdf

記者会見のビデオのリンクは以下の通りです。
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcpresconf20201216.htm

FOMC発表についてのコメント

最大雇用と物価安定の目標達成に向けて「さらに著しい進展が見られるまで」継続すると表明、景気回復が確かになるまで大規模緩和を続ける姿勢を明確にした。FF金利の誘導目標は0-0.25%に据え置いた。決定は全会一致。また、景気回復が完了するまでゼロ近辺の主要政策金利を維持すると改めて表明した。

会見では、「経済の脆弱な部門は、接客を伴うサービス業だ」とした上で「これらの活動を抑えているのは、金融状況ではなく(新型コロナ)ウイルスの感染拡大だ」と指摘した。失業者や苦境に陥っている事業者は、即座に使える現金を必要としていると続けた。議会の指導部は9,000億ドル規模の追加景気対策を巡り詰めの協議を行っている。パウエル氏は「問題は今後4~6カ月間だ」とし、来年の半ばごろにはワクチンの普及に伴い、人々が安心して幅広い活動をできているだろうとした。

市場は追加的な刺激策として資産購入に関する追加的ガイダンスを期待していたようだが、FRBはそれを出さなかった。購入期間に関する「今後数カ月にわたって」という従来の文言を削除した。これは、長期間景気改善がはっきりと見極められるまでの長期間現在の金融緩和状態を継続するというメッセージで市場にとっては、良い内容変更です。

一部で予想が出ていた何らかの措置を発表する喫緊の必要性はない。議会で経済支援策が決議され、国債の増発が明らかになり、長期金利に上昇圧力が出た後で、十分だと思います。今回量的緩和を示唆した場合、財政政策が発表されたあともう一度量的緩和に関数対応を迫られてしまうので、今回政策が据え置かれたことは、評価したい。

米長期債利回りがある程度上昇しても構わないとのシグナルを市場に送るものであり、市場がそれを十分に認識していたとは思えない。そのため、ドルがやや上昇したとしても不思議ではない。との解釈もあるようだが、ピント外れなコメントと思われ、無視していいと思います。

FEDのコメントにより米国株価の上昇を確信?

パウエル議長は、会見で、リスクフリー(無リスク)レートとして参照した米国債利回りと比べて米国株は一見したほどには過大評価されていないと指摘した。議長がこの比較を引用したのは理にかなう。これは「FRBモデル」として知られるようになったものの一種だからだ。議長は「株価収益率(PER)は歴史的に見て高いが、リスクフリーの金利が長期にわたり低く推移する状況では、株式のリスクテークで得られる報酬である株式のプレミアムは、あなたが目にするようなものになるだろう」と述べた。

これは、株高はまだまだ続くとFEDがお墨付きを与えたようなもので、株価にとってはとても重要なコメントです。

出所:ブルームバーグより

S&P500種株価指数の益利回りは、米10年債利回りより2.5ポイント高い。この比較はFRBモデルとして知られる。その差はインターネット株バブルの崩壊前をはるかに上回るが、ネット株バブル期には債券利回りが株式益利回りより高かった。

株式のリスクプレミアムを見ると、S&P500種のPERを単純に見るよりも極めて異なる構図が示される。現在の同指数のPERは実績利益ベースで29倍で、1999年は30倍を超えていた。

パウエル議長は「確かにPERは高いが、米10年債利回りがリターンの観点で歴史的水準より低くなると考えられる状況ではそれほど重要ではないかもしれない」と語った。

短期的に見れば、来週のテスラ株のS&P500株価指数への組み入れ後の調整で、テスラ株の下落(バイ・ザ・ルーマー、セル・ザ・ファクトでテスラの売り)や組み入れに伴う他の株式売却(こちらは買い戻し圧力に)が予想されます。これをこなせば、来年さらに株価が上昇するということへの最大限のサポート材料になるでしょう。来週のテスラ・イベントで下がったところは絶好の買い場になっていくでしょう。下がらなくても、そこは上値を追いかけ続ける展開となるでしょう。
(ブルームバーグ記事を参照)

ドットチャートから米国金融緩和の動向を予想する

2023年に利上げを予想するメンバーが5人と、前回会合時の4人から増えました。メンバーの見方が前回よりもタカ派にやや傾いています。これは指標の改善を受けたものですが、この先2年間は現在の超金融緩和状態が続くということです。

ドットチャート

出所:ブルームバーグ記事より

2020年12月FOMC(米連邦公開市場委員)まとめ

  • 政策金利、資産買い入れについては、政策変更なし。長期金利が上がり始めているが、政府の経済対策パッケージが決まって、長期金利が上昇すれば、躊躇なく長期国債の買い入れ額を増額するでしょう。これは、予想通りの内容。
  • 景気回復がハッキリと分かるまで、金融緩和は継続する金融緩和状態はこれまでの声明以上に長期間になるとのことで、市場(株、債券ともに)にとっては良い内容です。短期金利が長く続くことで、欧州、日本からの証券投資への為替ヘッジがさらに多くなることで、緩やかなドル安は継続するでしょう。
  • パウエル議長は、会見で、リスクフリー(無リスク)レートとして参照した米国債利回りと比べて米国株は一見したほどには過大評価されていないと指摘した。これは、株がまだまだ割高ではありませんよとFRBがお墨付きを与えたもので、株にとっては非常にいい材料です。

参考:議会での経済対策パッケージの協議状況

一方、議会では、米議会指導者は歳出法案に付加する新型コロナウイルス禍対応の経済対策案の取りまとめを急いでおり、週末までの通過を目指して16日も協議を行った。経済対策案の規模は9000億ドル(約93兆1000億円)前後になる見込み。共和党のマコネル上院院内総務とマッカーシー下院院内総務、民主党のペロシ下院議長とシューマー上院院内総務は下院での17日ないし18日の採決を目指している。

ホイヤー民主党下院院内総務は経済対策案で近く合意に至り、17日に下院採決が行われる可能性があるとの見解を示した。ただ、細部のすり合わせが長引き、採決は18日にずれ込むかもしれないとした。

出所:ブルームバーグ

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