投資をしていく中で、経済指標などをもとに投資先の景気を判断することはとても重要です。その事実は多くの人がご存知かと思います。
しかし、実際にどんな経済指標が、どういった役割を担っているのか自信をもって答えられる人はそう多くないかと思います。
そこで今回は、景気を判断する重要な経済指標のひとつでもある「ISM製造業景況指数」についてわかりやすく解説していきます。
ISM製造業景況指数とは?
ISM製造業景況指数とは、「国の製造業の景気状況」を表している経済指標です。
ISMは「Institute for Supply Managemen」の略で、米国供給管理協会という、米国の製造業・非製造業の供給管理を主に行う機関です。
約350社の製造業の仕入れ担当役員に「新規受注、生産、雇用、入荷状況、在庫」といった内容のアンケート調査を実施して発表される経済指標が、ISM製造業景況指数です。
▼ISM製造業景況指数の内容と比率
新規受注:30%
生産:25%
雇用:20%
入荷遅延(配送時間):15%
在庫:10%
回答結果:良くなっている(1)、同じ(0.5)、悪くなっている(0)
これらの三者択一の回答結果を点数化し、カッコ内数値でウエイト付けした加重平均で算出。50が好況と不況の分岐点を意味する。
新規受注、生産の項目は、景気との関りが強いことから注目度が高い傾向にあります。また、米雇用統計よりも発表が早いことが多く、雇用部門の数字は、雇用統計の先行指標として注目されます。
ひとことまとめ:ISM製造業景況指数は、ISMが毎月第一営業日に発表する、製造業約350社の仕入れ担当へのアンケート結果。50が景気の分かれ目となる。
重要視される理由は情報の鮮度と正確性
なぜこのISM製造業景況指数が重要視されるのでしょうか。その理由は大きく分けて、以下の2点があります。
- 情報の正確性
- 情報の鮮度が高い
情報の正確性
前述の通り、このISM製造業景況指数に使われているアンケートは、各社の仕入れ担当者に直接回答をしてもらっています。
つまり、製造業の現場の声をダイレクトに反映しているということです。そのため、数値だけをピックアップするような調査方法とは異なり、より現在の状況を反映させた調査結果が得られるというわけです。
その結果として、ISM製造業景況指数は情報の正確性が担保されており、景気の先行きを予測するための重要な経済指標となっているんです。
情報の鮮度の高さ
前述の通り、毎月第一営業日に発表されます。月初に前月の製造業の景況を判断できるため、非常に情報の鮮度が高いといえます。
こうした点から、ISM製造業景況指数は非常に重要な指標として市場参加者からも注目を集めます。
そして、世界一の経済大国である「米国」の景気を判断できるという点も注目を集める理由のひとつです。
ISM製造業景況指数の見方
ISM製造業景況指数は、50を基準ラインとした数値で発表され、発表値が50を上回ると「景気拡大」、逆に下回ると「景気後退」と判断されます。数カ月ぶりに50を割り込んだり、50以下で推移していた期間から浮上したりすると、景気回復の思惑が高まります。
50との比較も大切ですが、このISM製造業景況指数は、「生産」「雇用」「在庫」といった、いくつかの部門に分かれて発表されており、それぞれの部門の数値を追うことも重要です。
加えて、予想値と発表値が大きく乖離した際には、株価・為替市場に大きな影響を与えることがあるので、必ず発表前の予想値もあわせてチェックするようにしましょう。
まとめ
米国の経済状況を色濃く表す経済指標「ISM製造業景況指数」について説明をしてきました。
ISMは米国はもちろん、中国の数値も大きく影響することから、時に雇用統計よりも重要視されるくらいです。株価の先行きをより早く察知するためにも、毎月の予想と結果、アナリストの分析などを追いかけることで、より投資パフォーマンスの向上につなげられることができるでしょう。