米国インフレ過熱でバリュー株とエネルギー関連株に注目~米国消費者物価指数(CPI)

2021年12月の消費者物価指数(CPI)

米労働省が2022年1月12日に発表した2021年12月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比の上昇率が7.0%と39年半ぶりに7%台に達した。供給不足や需要の高まりで自動車や食品、住居の値上がりが一段と進んだ。ガソリン価格の高騰も続いた。インフレの過熱をにらみ、米連邦準備理事会(FRB)は金融引き締めに動く構えだ。

引き続き米のインフレーションは無視できないどころか、FRBにとってもインフレの抑制がもっとも銃な政策運営目標になってきました。11月にはテーパリングの前倒しが打ち出され、年末には早期の利上げ開始が話題となり、年初は、早期の資産縮小(量的緩和から引き締めへ)まで話題になっています。FRBがもっとも重視しているインフレ指標は、PCEデフレーターと言われていますが、市場はCPIに特に注目しています。

エネルギー価格上昇の影響から様々な商品・サービスの価格は上昇しています。エネルギー価格が高いことから、化学製品も価格上昇は顕著になっています。エネルギー価格が上昇して、関連する化学製品なども価格は上昇しています。

米国インフレ過熱で注目される米国バリュー株とエネルギー関連株

過去2年間は、ハイテクグロース株が相場の牽引役でしたが、今はバリュー株への投資のチャンスです。クリーンエネルギーとは逆ですが、需給ギャップが価格を上昇させています。石油、天然ガスや化学会社、鉄鋼、アルミなど素材会社は急速に収益を伸ばしています。こうしたオールドエコノミーの会社は、上がった収益を株主へ還元することが多く、配当の増額や株式の買戻しはさらに進むと考えられ、今年前半の注目ポイントになるでしょう

2021年12月のCPIとPPIについて

2021年12月CPIの主要項目

出所:米労働統計局

過去20年間の地区別CPI推移(前年同月比)

地区別で見ても、全米まんべんなくインフレ傾向は鮮明になっています。

米労働統計局のCPIのホームページからは、過去の推移が簡単に見られます。
https://www.bls.gov/charts/consumer-price-index/consumer-price-index-by-category-line-chart.htm

以下のチャートは、FRBセントルイスのホームページから取ったグラフです。

CPIの前年同月比推移(1970年~2021年)

青いラインは、エネルギーも含んでいるので、高くなっています。赤いラインは、変動の大きいエネルギーと食品を除いたものです。

2021年のインフレの特徴としては、特にエネルギー関連の変動が大きくなっています。

CPIのうち、エネルギーと食品の前年同月比推移(1970年~2021年)

青ラインが食品の指数で、緑がエネルギーの指数です。12月のエネルギーの指数が60.4%と大きすぎるので、食品が小さく見えますが、16.2%上昇でした。

CPIのうち、住宅、衣料、中古車、新車の指数前年同月比推移(1990年~2021年)

中古車価格(緑:57%)の指数は、また上昇しています。新車価格(紫:17.6%)も上昇しています。住宅(青:12.8%)と上昇傾向です。衣料はそれほどでもないですが6.8%でした。昨年の下落から元に戻っただけだと思います。

CPIのうち、医療、教育、情報技術、娯楽、その他サービスの指数前年同月比推移(1990年~2021年)

情報サービスについては、ほとんど変化していませんが、その他商品・サービス(20.8%)や医療(11.3%)が上昇しています。

もっとも、インフレが進んでいるのはエネルギー関連ですが、直近の先物価格の推移からすれば、際立った低下は見受けられません。むしろ12月中旬から再度高値を目指しています。ウクライナ情勢のこともあり、需給のひっ迫は続いています。

WTI原油先物の推移(日足:2020年9月~22年1月)

米天然ガス先物の推移(日足:2020年9月~22年1月)

米ガソリン先物の推移(日足:2020年9月~22年1月)

欧州の天然ガス先物の推移(日足:2020年9月~22年1月)

出所:CME先物取引所より

欧州の天然ガス価格は落ち着き始めていますが、欧州のことなので、米に大きな影響は与えていません。特に天然ガスは、米では、シェールガスの生産が行われており、米独自の価格形成が行われています。

エネルギー価格の分析

原油や天然ガスはESGの進展などから、新規開発が制限されています。EVの販売は増えていますが、現時点で走っている自動車やトラックはガソリンを使っているので、需要が急速に落ち込むことはありません。エネルギー価格はしばらくの間、需給バランスが崩れていることから、価格には上昇圧力が継続しています。

2021年12月生産者物価指数(PPI)

生産者物価指数(PPI)について、見ていきます。2021年12月の最終需要生産者物価指数は、季節調整済みで0.2%上昇しました。この上昇は、11月の1.0%、10月の0.6%の上昇に続くものです。(調整前ベースでは、2021年の最終需要価格は9.7%上昇し、2010年にデータが初めて算出されて以来、暦年で最大の上昇率となりました。)

12月の最終需要指数の上昇は、最終需要サービスの価格が0.5%上昇したことに起因しています。逆に、最終需要財の指数は0.4%減少しました。

食品、エネルギー、貿易サービスを除いた最終需要価格は、11月の0.8%上昇に続き、12月も0.4%上昇しました。2021年の最終需要から食品、エネルギー、貿易サービスを除いた指数は、2020年の1.3%の上昇に続き、6.9%の上昇となりました。

サービスの最終需要価格は、11月の0.9%上昇に続き、12月も0.5%上昇しました。12月の広範な上昇の半分以上は、0.8%上昇した最終需要貿易サービスのマージンに起因しています。(貿易指数は、卸売業者や小売業者が受け取るマージンの変化を測定します)。最終需要サービス(貿易、輸送、倉庫を除く)と最終需要輸送・倉庫サービスについては、それぞれ0.2%と1.7%の上昇となりました。

製品の最終需要サービスの12月の指数上昇の4分の1以上は、13.0%上昇した燃料および潤滑油小売業のマージンに起因するものです。航空旅客サービス、食品小売、機械・車両卸売、機械・設備部品・用品卸売、旅行者宿泊サービスの指数も上昇しました。一方、自動車および自動車部品小売業のマージンは2.7%減少しました。預金サービス(一部)、健康・美容・眼鏡用品小売業も指数が低下しました。

最終需要財 最終需要財の指数は12月に0.4%低下し、2020年4月に2.8%低下して以来、初めての低下となりました。12月の下落を牽引したのは、最終需要エネルギーの価格が3.3%下落したことです。最終需要財の指数は0.6%下落しました。逆に、最終需要財から食品とエネルギーを除いた物価は0.5%上昇しました。

製品の詳細 12月の最終需要財の価格下落の主な要因は、ガソリンの指数が6.1%下がったことです。肉類、ガス燃料、生鮮・乾燥野菜、ディーゼル燃料、基礎有機一次化学品の価格も低下しました。一方、エタノールの指数は6.4%上昇しました。家庭用電力と鶏卵の価格も上昇しました。

2021年12月PPIのまとめ

PPIの前年同月比推移(1920年~2021年)

この上昇率は、過去最高水準です。FRBはPCEデフレーターを重視していますが、生産者物価指数は、過去100年で見てもあり得ないレベルで推移しています。

PPIのうち、注目製品の推移(前年同月比:1990年~2021年)

出所:FRB St.Louis

過去半導体は常に価格が低下する製品でしたが、21年はプラスになっています。一方、化学製品や製造業全体で価格が上昇しています。化学製品には若干月次では低下していますが、高水準が続いています。

過去10年間のPPI推移(2011年~2021年)

出所:米労働統計局

詳細は以下のリンクで見られます。
https://www.bls.gov/charts/producer-price-index/final-demand-12-month-percent-change.htm

12月のPPIレポートは以下のリンクです。(PDF)
https://www.bls.gov/news.release/pdf/ppi.pdf

http://3.112.254.179/financial-products/energy-etf-recommended2022/

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