米国株を買うには、米ドルが必要となります。
また、日本人であれば利益確定をして日本円に戻す場合に、米ドルから日本円に両替を行う必要があります。その際に、円高に振れていれば為替差損が発生することになります。これは、投資においてリスクとなります。
しかしながら、購入時よりも円安になれば、為替差益が発生します。株価も上昇していれば、「株価の上昇」と「円安」によって、二重の利益を得ることができるのです。
今回は、米国株への投資において避けては通れない為替リスクに関して解説します。
米ドル円の推移
まず、過去の米ドルの推移を見ておきましょう。
◆米ドル円チャート(2005年~)
過去15年の米ドル円を見ると、サブプライム・リーマンショック前に120万台まで、その後は80円台を割り込む場面がありましたが、アベノミクスで再び120円台に浮上しました。直近5年では、110円付近で推移していることが分かります。1年間の変動率はおよそ10%前後です。
為替が今後どのように推移するか分かりませんが、極端な円高トレンドの局面でない限りは、それほど気にしなくても良いのではないでしょうか。
ちなみに円安に推移している時は、日本円や日本株の価値は相対的に下落し、円高に振れた場合はその逆となります。つまり、米国株という米ドル建ての資産を持つことは、通貨の分散投資とも言えるのです。
◆米ドル円と株式資産の変化
米ドル円の推移 | 日本株 | 米国株 |
円安 | 下落 | 上昇 |
円高 | 上昇 | 下落 |
では、S&P500と為替ヘッジを行っている商品の値動きを比較してみましょう。
◆S&P500と上場インデックスファンド米国株式(S&P500)為替ヘッジあり(2521)
このように、近年では為替ヘッジを行っても行わなくても、パフォーマンスはほぼ変わらないようになっています。
それでも、為替リスク取りたくない場合は、FXでヘッジを行う方法があります。保有している米国株と同じだけの米ドル円(USD/JPY)を保有と同時に売り、決済を行う際に買い戻すことで為替リスクはほぼゼロとなります。
両替時の手数料やスプレッドに気を付ける
米国株への投資において、確実にかかってくる取引コストは、両替の際の手数料です。
両替手数料:無料~25銭(片道)
100万円あたり、高い証券会社では2,500円程度の取引コストが必要となりますので、気になる場合は、両替手数料の安い証券会社を選びましょう。
ちなみに、米国株の取り扱い数最多のマネックス証券の両替手数料は無料です。
為替差益には税金が発生する
米国を購入し、売却時に米ドル円が円安に振れていれば、為替差益が発生し、これには税金が掛かります。ただ、為替差益を含めた給与所得以外の所得が年間20万円以上になった場合のみ納税を行う必要があります。
目安としての例を出すと、米国株投資で400万円を投資し、ドル円が100円の時に購入し、105円の時に決済を行えば発生します。
納税が必要な場合は、米国株購入時、売却時、配当金を受け取った時、それぞれの為替レートをすべて円換算で計算し、自身で確定申告を行う必要があります。
これは非常に面倒です。そのため、「NISA口座」または「特定口座(源泉徴収あり)」を利用する方法があります。この2つの口座では、米国株の「譲渡益」と「為替差益」が自動的に計算されます。
NISA口座 | 投資額が限度額(年間120万円)以内であれは非課税。 |
特定口座 (源泉徴収あり) | 税金は自動計算され、源泉徴収も行われる。 |
▼特定口座でも「確定申告」が必要になってしまうケース
ただし、特殊なケースもあるので押さえておきましょう。
例1:米ドル → 日本円の為替取引
- 米国株の配当金を「1ドル=100円」の時に1万ドル受け取り、そのままで口座内で保有
- 「1米ドル=120円」の時に全て日本円に両替
- 20万円の「利益」が発生。
例2:米ドル → 米国株
- 100万円を「1米ドル=100円」の時に1万ドルに両替し、米ドルのままで口座内で保有。
- 「1米ドル=120円」の時に、全額使って米国株を購入
- 20万円の「為替差益」が発生
これらの場合は、その利益は「為替差益」として雑所得扱いとなります。
特に2のケースは分かりづらいため、間違ってしまう人も多いでしょう。
そのため、米ドルは必要な時に両替することが良いでしょう。
また解決方法として、米国株の購入時も売却時も「円貨」による取引を選択する方法があります。そうすると、米国株を売買する際に発生した「為替差益」は「株式の譲渡益」として「源泉徴収」されます。
米国株投資の際に、「為替リスク」があるということを説明しましたが、同時にリターンを得られる可能性もあります。ただ、米ドルは世界の基軸通貨として近年は非常に安定推移しています。為替の大きな変動時でなければそれほど大きな影響はありませんので、あまり難しく考えずに、知識として抑えておく程度で良いでしょう。