世界最大の経済大国である米国ですが、日本や他の国と同じく何度も経済危機に見舞われています。しかし、そこからの立ち直りの早さや経済加速のスピードはとても世界一の国とは思えないほどの成長率を誇っています。そこには、米国政府による経済を後押しする政策の影響があります。
今回は、米国の成長を下支えする過去の経済政策を学んでおきましょう。
為替政策
世界の基軸通貨である米ドルを要する米国。そのため、為替水準は各国との貿易額に直結します。特に米国は万年貿易赤字のため、強すぎる米ドルは自国を苦しめることになります。
そのため、為替政策を行い誘導することを行ってきました。
共和党はドル高、民主党はドル安
政権によって、為替政策は異なるといわれています。
共和党は市場の自由競争を重視する小さな政府:ドル高
民主党は経済や市場に積極介入する大きな政府:ドル安
しかしながら、過去の為替動向を見てみると、大きな違いは見られませんでした。
プラザ合意
米国の為替政策を語るうえで欠かせないのは、プラザ合意です。これは、1985年9月22日に、先進5か国 (G5) 蔵相・中央銀行総裁会議により発表された米国の為替レート安定化に関する合意です。分かりやすくいうと、米国はドル高で苦しんでいるから、為替介入を行ってドル安にしてくださいという合意です。
◆ドル円チャート(1979年~1989年)
為替報告書
米国の財務省は、貿易相手国の為替政策を分析・評価した報告書を年2回(4月、10月)、議会に提出しています。そして、輸出で有利になる自国通貨安を誘導している国を「為替操作国」と認定。是正措置を取らない国には、高い関税などを科すなどの制裁を行っています。
つまり、米国に不利になるようなことを行うと、許さないということを暗に意味しているのです。
経済政策
経済危機が起きた時の米国は、機動的な経済対策を行います。サブプライムショックとコロナショックの例を見ていきましょう。
サブプライム、リーマン・ショック時の経済政策
・緊急経済安定化法案
サブプライムローンが米国中に影響を及ぼし、金融派生商品を保有していた金融機関は大打撃を受けていました。銀行などの金融機関が倒産してしまうと、経済はさらなる大打撃を受けてしまいます、そのために、金融機関の不良資産を買い取るために、約7000億ドルもの公的資金を投入しました。その結果、2008年末時点で214の銀行に対して約1800億ドルの資本注入が行われました。
また、銀行が経営破綻した時の預金保証の上限を一時的に10万ドルから25万ドルへ引き上げたり、税制優遇の措置がとられたりしました。
・アメリカ復興・再投資法
銀行を救済しても、失われた雇用はすぐには回復しません。そこで就任したばかりのオバマ大統領は、総額7870億ドルに上るアメリカ復興・再投資法と呼ばれる景気刺激対策法を打ち出しました。
【主な景気刺激策の内訳】
減税 | 1650億ドル |
失業者支援など | 470億ドル |
450ドルの直接現金支給など | 40億ドル |
インフラ、科学技術投資 | 1260億ドル |
教育、トレーニング | 780億ドル |
新型コロナウイルス対策
全世界を脅かした感染症に対して、米国は素早く巨額の支出を行いました。その総額は、2兆9,000億ドル近くに達し、サブプライム、リーマン・ショック後の経済対策の2倍以上に上りました。
【主な経済対策の内訳】
中小企業に対する資金支援 | 約200億ドル |
個人に対する給付や支援 | 約5000億ドル |
失業保険 | 3000億ドル弱 |
医療機関への支援 | 2500億ドル強 |
州や地方自治体への支援 | 1500億ドル |
特に、失業給付金は週に600ドルと手厚く、失業前よりも収入が増えた人も多いようです。また、納税の猶予や住宅の強制立ち退きの阻止、学生ローンの返済猶予なども行われました。
さらに、その後の追加対策として、さらに2兆ドル規模を計上。大統領選挙の年ということもあったのか、非常事態宣言下においてトランプ大統領は災害予算を大統領権限で行使しました。
ここまで大胆な経済対策が実行できるのは、やはり世界最大の覇権国家であり経済大国だからこそでしょう。自由の国アメリカと言われますが、いざとなれば巨額の財政支出によって救ってもらえる側面もあるのです。
まとめ
2017年、米国にトランプ政権が誕生しました。事前予想では、経済が大きく悪化するとの予想が多かったことを記憶している人も多いのではないでしょうか。
しかし、現実は違いました。巨額のインフラ投資が行われ、オールドエコノミーは優遇。
法人税率は14%も引き下げられ、相続税の引き下げや子供の税額控除も拡大しました。財政支出と減税による二つのエンジンが稼働した結果、米国経済は劇的な成長を見せ、NYダウは4年で2倍近くに上昇しました。
多くの国がひとつとなっている影響でまとまらない欧州や、増税で国民に負担を強いるばかりの日本とは違う米国の推進力は、今後もしばらく揺らぐことはなさそうです。