
この記事のポイント
- 米ドル/円は先進国通貨の中でも高いスワップポイントを狙える
- 米ドル/円はすべてのFX会社で取引でき、情報量も豊富でスプレッドも狭い
- 米ドル/円のスワップポイントは日米の金利差で決まるので、日米の金融政策に注目
- 為替差損やマイナススワップなどのデメリットもあるので、注意が必要
2023年4月に日本銀行(日銀)の総裁が10年ぶりに交代しましたが、大規模な金融緩和策は当面、継続される見込みです。一方、米国では歴史的なインフレを抑え込むため、2022年3月以降、利上げが続いています。そして、日米の金利差が拡大したことにより、米ドル/円のスワップポイントも魅力的な水準となっています。
この記事では、スワップポイント狙いで米ドル/円を買うメリットと注意点について解説します。
目次 ー Contents
スワップポイントとは
まずはスワップポイントについておさらいしておきましょう。(すでに知っている方は飛ばしてください)
スワップポイントとは、2国間の金利差を調整した金利のことです。
FXでは、低金利の通貨を売って高金利の通貨を買うと、ポジションを持っている間、金利差分を得ることができます。この仕組みを利用して、中長期的に利益を得る投資家もいます。

スワップポイントのイメージ。高金利のA国の通貨を買い、超低金利の日本円を売る(A国通貨/円の買いポジションを持つ)と毎日スワップポイントを受け取ることができる。
2国間の金利差でスワップポイントは決まるので、金利差が大きいほどスワップポイントも大きくなります。
また、ポジションの保有期間もスワップポイントに影響します。毎日発生するため、ポジションの保有期間が長ければ長いほど、スワップポイントは多くなります。
スワップポイントは、為替レートの変動に関係なく発生する利益です。そのため、為替レートが大きく下落しても、スワップポイントで利益を得ることができます。
ただし、FXは為替相場の変動によりマイナスになることもあります。そのため、スワップポイント狙いの取引をする場合も、為替レートの変動リスクも意識する必要があります。
スワップポイントがもらえる条件
スワップポイントを獲得するには、保有ポジションを翌日に持ち越す必要があります。
ですから、スキャルピングやデイトレードのように、その日のうちにポジションを決済してしまうと、スワップポイントは発生しません。
支払うパターンもある
スワップポイントはもらえるだけではなく、支払うパターンもあるので要注意。低金利の国の通貨を買い、高金利の国の通貨を売るとマイナススワップポイントが発生します。
たとえば米ドル/円の売りポジションだと、毎日100〜200円程度のマイナススワップ(1万通貨あたり)が発生します。
スワップポイントがもらえるタイミング
スワップポイントが付与されるタイミングは、各営業日のクローズ時点(夏時間:午前6時、冬時間:午前7時)です。1年365日付与されますが、各国の土日祝日がある場合は、付与日数が不定期となります。
そのため「3日分」「4日分」など、付与日数が通常より多くなるケースがあります。
例えばDMM FXの場合、原則として土日分のスワップポイントは先渡しとなり、「3日分」が木曜日に加算されます。

【スワップポイント比較】米/ドル円と主要通貨ペア
SBI FXトレードやGMOクリック証券など、主要FX会社の米ドル/円と他の通貨ペア(ユーロ/円、ポンド/円、豪ドル/円)のスワップポイントを比較しました。
米ドル/円 | ユーロ/円 | ポンド/円 | 豪ドル/円 | |
---|---|---|---|---|
![]() 公式サイト | 203円 | 146円 | 227円 | 115円 |
![]() 公式サイト | 202円 | 140円 | 225円 | 113円 |
![]() 公式サイト | 200円 | 155円 | 240円 | 130円 |
![]() 公式サイト | 195円 | 155円 | 240円 | 105円 |
下はGMOクリック証券の6月13日終値レートと1万通貨の買いポジションに必要な資金です。
- 米ドル/円:140.204(56,082円)
- ユーロ/円:151.316(60,526円)
- ポンド/円:176.800(70,720円)
- 豪ドル/円:94.850(37,940円)
計算すると、もっとも効率が良い(同じ資金で受け取れるスワップポイントが多い)のは米ドル/円でした。
【スワップポイント比較】米ドル/円と高金利通貨(メキシコペソ/円)
スワップポイントを狙った運用でおなじみの高金利通貨と米ドル/円ではどちらがお得なのでしょうか?
ここでは代表的な高金利通貨であるメキシコペソ/円と、スワップポイントの合計金額を比較してみました。
SBI FXトレードで10万通貨を10年保有した場合のスワップポイントは以下の通りです。
■米ドル/円のスワップポイント合計金額(必要証拠金:562,400円)

■メキシコペソ/円のスワップポイント合計金額(必要証拠金額:31,900円)

10年間のスワップポイントの合計は、米ドル/円が7,482,500円、メキシコペソ/円が949,000円という結果でした。
ですが、この検証は証拠金に大きな開きがありますので、次はメキシコペソ/円の証拠金を米ドル円10万通貨取引時のそれと同程度にしてみます。
■メキシコペソ/円のスワップポイント合計金額(必要証拠金:556,410円)

メキシコペソ/円を170万通貨(証拠金:556,410円)10年間保有した場合、14,271,500円スワップポイントを受け取れる試算です。
米ドル/円の倍近い利益になるのですから、単純計算ではメキシコペソ/円で運用した方がお得であるといえます。
米/ドル円でスワップポイントを狙うメリット
単純に受け取れる利益で考えるなら高金利通貨のメキシコペソ/円の方が良さそうですよね。米ドル/円でスワップポイントを狙うメリットはあるのでしょうか?
もっとも大きなメリットは、米ドルは世界の基軸通貨であり様々な情報を入手しやすい点にあります。
メリット① 米/ドル円の取り扱いがないFX会社はなく情報も入手しやすい
米ドル/円は、世界で最も取引されている通貨ペアです。そのため、ほとんどのFX会社で取り扱われています。
また、米ドル/円に関する情報はインターネットや新聞、雑誌など様々な媒体で入手できます。
FX初心者でも簡単に情報を入手して、長期的な分析をすることができるでしょう。
メリット② 金利が高い
米ドルは、先進国の中でも高い金利水準が魅力です。
2023年5月時点の政策金利を見てみると、先進国の中で米国は高い部類に入ります。

この図を見るとメキシコやトルコなど高金利な国があることがわかります。
しかし、それらの国はそうしなくてはいけない理由があり様々なリスクを孕んでいるため、スワップポイントの利益を為替差損で失ってしまわないよう気をつける必要があります。
米国金利の動向
日本銀行は2023年4月10日、黒田東彦総裁の後任として上田一夫氏を任命しました。そして、植田新総裁は、これまでの金融政策を継続する意向を示しました。
この政策では、日銀が国債や株式を大量に購入することで、市場に資金を供給しています。これは、金利を低く抑え、景気を支えることを目的としています。
一方、米国の中央銀行であるFRBは、インフレ対策として金利の引き上げ(利上げ)を続けています。
■政策金利(2023年5月時点)
日本 | -0.1% |
米国 | 5.00~5.25% |
日銀とFRBは金融政策の方向性が異なるため、金利差は拡大しています。
この金利差の拡大が、円安・ドル高の要因の一つとなっています。そして、日米の金利差が拡大するとともに、スワップポイントも拡大傾向になっています。
米国の金融政策
もう少し米国の金融政策について掘り下げていきましょう。
米国の金利動向に大きな影響を与えるのが「FOMC」です。
FOMCとは?
FOMCは“Federal Open Market Committee”の略で、米国の中央銀行である連邦準備制度理事会が開催する、金融政策を決定するための会合です。
市場の予想と異なれば、株式市場や為替レートが大きく変動し、世界の金融市場に大きな影響を与えます。
FOMCの発表が世界市場に与える影響は、市場参加者の予想との乖離があるかないかで大きく異なります。
例えば、市場が0.5%の利上げを予想しているときに1%の利上げを行うと、予想を上回る結果となるため、為替や株価に影響を与えることがあります。
FOMCの発表は投資家にとって重要な情報源であり、FOMCの発表を分析することで、将来の金融市場の動きや自身の投資戦略を立てることができます。
FOMCで金利が引き上げられると、米ドル/円のスワップポイントは拡大するので、米ドル/円でスワップポイントを狙っているときは必ずチェックしておきたいですね。
(本気でFXで稼ぎたいのであれば、スワップポイント関係なくFOMCの発表は注視しましょう)
米国のインフレ率や失業率
FOMC以外にもチェックしておきたいことはまだあります。
米国の金融政策に大きな影響を与えるのが、米国のインフレ率と失業率です。
インフレ率は主に米国のCPI(消費者物価指数)、失業率は米国の雇用統計を確認します。
米国CPI(消費者物価指数)
CPIは、米国労働省労働統計局(BLS)が都市部の消費者が購入する財・サービスの価格変動を調査・指数化したものです。変動幅の大きい食料品やエネルギー価格を除いたコア部分も同時に発表されます。
米国のインフレ目標は個人消費支出(PCE)デフレーターで、日本を含む多くの国のインフレ目標はCPIではありません。
しかし、CPIは対象月の翌15日前後に発表され、対象月の翌月末または翌々月初めに発表されるPCEデフレーターより約2週間早く、変化の傾向も似ているため、物価関連指標の中で最も市場の注目を集める指標です。
インフレ率の指標であるCPIは、投資家や政策担当者など多くの人が注視しており、その発表が株式市場や為替市場など金融市場全体に大きな影響を与えることがあります。
米国雇用統計
また、米国の雇用統計は、米国の経済状況を探る上で最も重要な経済指標の一つです。毎月第1金曜日に米国労働省から発表され、非農業部門雇用者数、失業率、時間当たり賃金などの指標が公表されます。
米国雇用統計は、雇用の最大化と物価の安定を目指す連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策決定に大きな影響を与え、金利の変更や量的緩和などの金融政策を実施する際の判断材料として活用されています。
また、米国の雇用統計は、株式市場や為替市場にも大きな影響を与えます。
米国の雇用統計が予想を上回れば、景気回復への期待から株式市場や為替市場は上昇します。一方、米国の雇用統計が予想を下回れば、景気後退への懸念から株式・為替市場は下落するのです。
米国は世界最大の経済大国であり、米国の経済状況は世界経済に大きな影響を与えます。
米国の雇用統計の結果を世界中の投資家やトレーダーが注視している——。
このことは必ず覚えておきましょう。
スワップポイントのデメリット・注意点
ポジションを持ち続けているだけで毎日利益が出るスワップポイント。
一見するといいことずくめな気がしますが、スワップポイント狙いで取引する際に頭に入れておかなくてはいけない注意点もあります。それは…
- マイナススワップになる可能性がある
- 為替差損が発生する可能性がある
の2つです。
デメリット① マイナススワップになる可能性がある
繰り返しになりますが、スワップポイントはFX取引で発生する金利差の調整のことです。金利の高い通貨を買い、金利の低い通貨を売ったときにスワップポイントは発生します。
ただし、スワップポイントは必ずしもプラスになる(儲かる)とは限りません。
米ドルやポンドなどの高金利通貨を売って、日本円などの低金利通貨を買うと、逆に金利の差を支払わなければなりません。これを「マイナススワップ」といいます。
マイナススワップももちろん、通貨ペアを長く保有すればするほど支払いが増えていくので、日を跨いだ取引をする際は注意が必要です。
マイナススワップが発生する通貨ペアは、各国の金利動向によって異なります。
スワップポイントがプラスかマイナスかを調べるには、FX会社がそれぞれ公開しているスワップカレンダーを活用するとよいでしょう。

デメリット② 為替差損が発生する可能性がある
FXでスワップポイントを狙った取引をする際には、為替レートの動きにも注目する必要があります。
スワップポイントが高い新興国の通貨は、為替レートの変動が大きくなる、下落する傾向があるからです。
せっかくスワップポイントで利益をだしても、為替差損が大きくなってしまっては意味がありません。そのため、取引する際は価格変動にも十分注意してください。
また、スワップポイントで得た利益にも税金がかかることも知っておきましょう。
スワップポイントの高いFX口座4選
スワップポイントはFX会社一律ではないため、条件のよいFX会社で取引した方が有利になります。
ここで紹介しているFX口座はいずれも米ドル/円のスワップポイントが高く、取引環境や取引ツールが高評価。気になるところがあったら、公式サイトでさらに詳しく見てみるといいでしょう。
GMOクリック証券

GMOクリック証券は、手数料やスプレッドの安さ、高スワップで高い評価を受けています。
取引手数料や口座維持手数料は完全無料。スプレッドは業界最狭水準。スワップポイントは米ドル/円はじめ、ほとんどの通貨ペアで高水準。
取引ルール面で他社に見劣りするところはありません。
またスワップポイントに関しては、保有中のポジションを決済することなくスワップポイントだけ出金して受け取れるのがポイント。
受け取ったスワップポイントの利益を使って新たにポジションを作り、さらに多くのスワップの受け取りを狙うことも可能です。
スマホからの申し込みなら最短でその日のうちにFX取引を始められます。
みんなのFX

トレイダーズ証券が提供する「みんなのFX」は、業界最狭水準のスプレッドが魅力です。米ドル/円は0.2銭、ポンド/円は0.9銭、豪ドル/円は0.6銭などとなっています。
各種手数料が無料で、最小取引単位が1,000通貨と少額からの取引が可能となっているなど、裁量トレードする上でストレスを感じない取引環境といえます。
また、みんなのFXと同時に「みんなのシストレ」口座を申し込むと、自動売買(システムトレード)にも取り組めます。
スワップポイントでは米ドル/円が若干見劣りしますが、ほかの主要通貨ペア(ユーロ/円、ポンド/円、豪ドル/円)では最高水準をキープ。
高金利通貨のペアも軒並み最高水準なので、米ドル/円以外の通貨ペアでスワップポイントを狙う時に利用したいFX口座です。
外為どっとコム

外為どっとコムは外国為替取引に特化した老舗のFX会社で、情報力、スプレッドの狭さ、安心感でおすすめのFX会社です。
外為どっとコムは、FXニュースやアナリストレポート、動画、情報ツールなど、さまざまな情報を提供しています。
スワップポイントの受け取りを目的とした長期トレードの場合、中長期の展望を見通しておくことも大事ですから、マーケット情報の多い外為どっとコムは開設しておきたい口座の一つと言えるのではないでしょうか。
ここで紹介している他社と比べると米ドル/円のスワップポイントは見劣りますが、外為どっとコムでは定期的にスワップポイント増額キャンペーンを実施しています。
増額中は最高水準になることが多いので、チェックしておきたいですね。
【まとめ】米ドル/円のスワップポイント日米の金融政策に注目
この記事のポイント
- 米ドル/円は先進国通貨の中でも高いスワップポイントを狙える
- 米ドル/円はすべてのFX会社で取引でき、情報量も豊富でスプレッドも狭い
- 米ドル/円のスワップポイントは日米の金利差で決まるので、日米の金融政策に注目
- 為替差損やマイナススワップなどのデメリットもあるので、注意が必要
米ドル/円はスワップポイントが高く、取引しやすいのが魅力です。スワップポイント狙いで長期保有すれば、高いリターンを得られる可能性があります。
その際は日米の金利動向をつねにチェックするようにしましょう。
また、スワップポイントやFXそのもののリスクがあることも覚えておいてください。
スワップポイントは今後下がる可能性もありますし、為替差損のリスクもあります。慣れるまではレバレッジは5倍以内にし、リスクを抑えた運用を心がけるようにしてください。