
この記事のポイント
- 新興国ETFは先進国ETFより高いリターンが狙える
- 新興国ETFはボラティリティが高いため銘柄選定が重要
- 今後の将来性に期待できる新興国にはインドやエチオピアなどがある
新興国ETFは成長性の高い国に投資でき割安な銘柄が多いため、長期投資と相性が良いETFです。
しかしこれから成長する可能性が高い国を予想しなければならないのでグローバルなマクロリサーチが必要になり、ボラティリティが高いため失敗すれば大きな損失を被るリスクもあります。
本記事では新興国ETFに投資するメリット・デメリットを解説し、今後の成長性に期待できる新興国やおすすめの新興国ETFを紹介します。
※この記事は2024年1月の情報をもとに作成しています。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
目次 ー Contents
新興国ETFとは
新興国ETFとは、先進国のように経済は発展していないものの、高い成長率に期待できる新興国の銘柄に投資するETFです。
新興国の個別銘柄に投資するには、先進国の銘柄より情報が少なく発展途上の段階のため、将来性に期待できる銘柄選定の難易度が高くなります。
しかしETFであればインデックスに連動した銘柄に投資できたり、複数の銘柄で構成されていたりするため、銘柄選定の手間を省け分散性を高められます。
ただ、新興国は発展途上のため数年の投資で高いリターンが得られる可能性は低く、数十年スパンの超長期投資が前提となるでしょう。
【ワンポイント】新興国にはどんな国がある?
一般的にBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の4か国がエマージング経済の大国と呼ばれています。その他には、BRICsに続くグループのVISTA(ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン)、NEXT11(メキシコ、ベトナム、インドネシア、韓国、バングラディッシュ、パキスタン、フィリピン、トルコ、イラン、エジプト、ナイジェリア)などが挙げられます。
新興国ETFに投資するメリット3つ
新興国ETFに投資するメリットを考えてみましょう。先進国と比べて次のメリットが挙げられます。
- 成長性の高い国に投資できる
- 高いリターンに期待できる
- 割安な銘柄が多い
メリット① 成長性の高い国に投資できる
新興国ETFへ投資する一番のメリットは、成長性の高い国に投資できることでしょう。
例えば新興国の一つであるガイアナは、2022年の経済成長率((当年のGDP − 前年のGDP) ÷ 前年のGDP × 100)が前年比で約62%も増加しています。
代表的な先進国である米国の2022年の経済成長率は約2%、日本は約1%ということから、新興国の成長性の高さがわかるでしょう。
メリット② 高いリターンを期待できる
成長性の高い新興国に投資できれば、高いリターンを期待できます。
先進国への投資であれば数十年かけて数十%のリターンであるのに対し、新興国への投資はタイミング次第ではありますが数年で数十倍のリターンが得られる可能性があります。
ただし、新興国のすべてが成長性に期待できるというわけではありません。
高いリターンを狙うには相当のリスクを伴うため、よりハイリスク・ハイリターンな個別銘柄に投資するよりETFの方がおすすめなのです。
メリット③ 割安な銘柄が多い
先進国銘柄のように多くの人が投資していないため、新興国銘柄は割安な銘柄が多くなっています。
特に新興国の経済が不況になっている場合は、よりリスクの低い先進国銘柄や債券などに資産を移す投資家が多くなるので、新興国銘柄が売られさらに割安になります。
新興国ETFに投資するデメリット3つ
新興国ETFに投資するデメリットは以下の3つです。
- ボラティリティが激しい
- 新興国が成長せず衰退していく可能性がある
- 先進国に比べて流動性が少ない
デメリット① ボラティリティが高い
新興国ETFは先進国ETFと比べてボラティリティが高い傾向があります。
理由は、新興国経済は自国の経済状況や金融政策に左右されやすく、先進国よりリスクが高いと市場が考えているため資金が動きやすいからです。
ボラティリティが高いというリスクはありますがリターンも大きいため、タイミングによっては短期取引で利益を狙うこともできます。
ポートフォリオの損失をできるだけ抑えたい方は、新興国ETFの割合は10〜20%以内に抑えておくとよいでしょう。
デメリット② 新興国が成長せずに衰退していく可能性がある
新興国は成長性に期待できる国が多いのですが、衰退していくリスクも孕んでいます。
市場が成熟していないので、衰退する国の銘柄は下落率が大きくなるでしょう。
また、新興国の経済成長率が株式市場の上昇と相関せず株式市場が停滞してしまうケースもあるため、過去のチャートを見てどのように変動しているかの確認も必須になります。
中国のように、政治動向が大きく変わりやすい国は経済状況も変わりやすいため、政治動向は特に注意深く見ておくとよいでしょう。
デメリット③ 先進国に比べて流動性が少ない
新興国ETFは先進国ETFと比べて流動性が少ない傾向があります。
流動性が少ないと、機関投資家のような大口投資家からの資金流入・流出でボラティリティが高くなります。
また、取引している投資家が少なく、取引量も少ないため、板が薄くなり自分の注文が約定しづらくなるデメリットがあります。
例えば、新興国のリスクに直面して保有しているETFが暴落してしまった場合。手放したいのに手放せない状況になってしまうかもしれません。
おすすめ新興国ETF3選
おすすめの新興国ETFとして、次の3つを紹介します。
- iシェアーズ MSCI エマージング・マーケット ETF(EEM)
- ウィズダムツリー インド株収益ファンド(EPI)
- iシェアーズ 米ドル建て新興国債券 ETF
iシェアーズ MSCI エマージング・マーケット ETF(EEM)
運用会社 | BlackRock |
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1年トータルリターン (2022年7~2023年7月) | 9.18% |
経費率 | 0.69% |
iシェアーズ MSCI エマージング・マーケット ETF(EEM)は、新興国の大型、中型株式で構成されている「MSCI エマージング・マーケット・インデックス」に価格が連動しているETFです。
構成銘柄の中で最も多くの割合を占めているのは台湾銘柄の「TSMC」で、国別では中国銘柄が約30%と最も多くの割合を占めています。
直近1年のリターンは9%と高く、TSMCの直近1年リターンが22%と高くなっているため牽引したといえるでしょう。
ウィズダムツリー インド株収益ファンド(EPI)
運用会社 | WisdomTree |
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1年トータルリターン (2022年7~2023年7月) | 19.79% |
経費率 | 0.84% |
ウィズダムツリー インド株収益ファンド(EPI)は、ウィズダムツリーインド収益指数と連動しているETFです。
ウィズダムツリーインド収益指数は、インドの株式市場に上場している大型~小型含め約300銘柄で構成されている指数のため、インド市場に分散投資したい方におすすめです。
インド市場に集中していますが直近1年のリターンは約20%と高く、直近3年のリターンも22%を超えているのでインド市場の成長性は高い可能性があります。
iシェアーズ 米ドル建て新興国債券 ETF
運用会社 | BlackRock |
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1年トータルリターン (2022年7~2023年7月) | 3.45% |
経費率 | 0.45% |
iシェアーズ 米ドル建て新興国債券 ETFは、ドル建ての新興国債券を投資対象としている債券ETFです。これ一つで新興国の債券市場に投資できます。
2020年に誕生したばかりのため長期的な価格推移はまだ不透明ですが、世界的に高金利であった2022年を含んだ直近1年リターンは3%程度になっています。
さらに配当金は年4回あり、直近の配当利回りは4.20%と申し分ないリターンが得られているので、新興国債券に投資したい方は検討してみるとよいでしょう。
今後の将来性に期待できる新興国
BRICs、VISTA、NEXT11にカテゴライズされる新興国の中で、特に今後の将来性に期待できる国をピックアップしました。
- インド
- エチオピア
- フィリピン
インド

インドは新興国の中で最も注目されている国です。
IMFの世界経済の2024年成長率予測では以下のようになっており、インドの期待値の高さがわかります。
- 米国:1.1%
- ユーロ圏:1.4%
- 中国:4.5%
- インド:6.3%
出典:IMF
インドは人口数で中国を抜いているので今後の将来性に期待できるでしょう。
裏付けとして、インドの株式市場に投資できるウィズダムツリー インド株収益ファンドは20%超のリターンを出しています。
エチオピア

エチオピアはコロナショックで世界的に経済が暴落した2020年にも6%の成長をしている注目の新興国です。
人口が2049年末までに2億人を超えると予想されており、国立社会保障・人口問題研究所によると平均年齢は2021年時点で24歳となっています。同年でインドは28歳のため、さらに若い層が多いとわかります。
エチオピアの主要産業は農業になっており、食糧危機が懸念されている現代社会では食糧価格の高騰による影響を分析する必要があるでしょう。
フィリピン

フィリピンは、IMFが発表している名目GDPで以下のように安定した上昇が見込まれている国です。
- 2023年:24,561.34
- 2024年:26,687.08
- 2025年:29,018.53
- 2026年:31,588.75
- 2027年:34,424.48
- 2028年:37,542.73
※単位は10億フィリピンペソ
出典:IMF
国立社会保障・人口問題研究所によると平均年齢は2021年時点で28歳となっていますが、人口の増加に伴い失業者の増加・低賃金化が進んでいる側面もあるようです。
ただ、新興国として成長すれば雇用の機会は創出されるため、IMFのGDP予測のように推移すれば解決されるでしょう。
フィリピン人は約80%の人が英語を理解しているので、グローバルビジネスにも対応できる魅力があります。
新興国ETFに投資できるおすすめ証券会社3選
新興国ETFに投資できるおすすめの証券会社は以下の3つです。
- SBI証券
- 楽天証券
- IG証券
SBI証券

SBI証券は新興国ETFで以下の国に対応しています。
- 中国
- シンガポール
- 韓国
インド市場のETFはありませんが、「SBI ETFセレクション」という商品があり、「ウィズダムツリー インド株収益ファンド(EPI)」が含まれているため投資は可能です。
SBI証券は新興国ETF以外にも幅広い金融商品を取り扱っているため、メイン口座として持っておくとよいでしょう。
楽天証券

楽天証券は新興国ETFで以下の国などに対応しています。
- 中国
- ブラジル
- ベトナム
- シンガポール
- インドネシア
- タイ
- マレーシア
楽天証券は楽天ポイントでの投資が行えるため、リスクが高い新興国ETFをポイント投資にすれば、実質的に損失を発生させずに済みます。
楽天経済圏を日常生活で活用している方はメイン口座として持っておくとよいでしょう。
IG証券

IG証券はCFD取引に特化した証券会社です。ETFのCFD取引ができる銘柄もありますが、新興国ETFはCFD取引に対応していません。
そのため、新興国ETF投資と合わせて他の銘柄のCFD取引をするためのサブ口座としておすすめです。
株式以外にも債券やコモディティ、通貨など17,000種類以上を取り扱っています。
新興国ETFについてよくある質問
新興国ETFについてよくある質問をまとめました。
- 新興国ETFのFM(フロンティアマーケット)はおすすめ?
- 新興国ETFはポートフォリオの何割にしておくべき?
- 中国はもう経済成長しないの?
新興国ETFのFM(フロンティアマーケット)はおすすめ?
新興国ETFにはFM(フロンティアマーケット)と呼ばれるETFがあります。
新興国の中でも特に市場規模が小さいベトナムやナイジェリアなどの国々に投資するETFです。
フロンティアマーケット銘柄は新興国よりもさらにハイリスク・ハイリターンの投資になるので、投資する場合はポートフォリオの10%以下の割合で投資することをおすすめします。
フロンティアマーケットは不確実性が高い市場の中から将来性に期待できる国を予測しなければならないため、分析に多くの時間を割けない方は行わない方がよいでしょう。
新興国ETFはポートフォリオの何割にしておくべき?
新興国ETFはリスクが高いので、ポートフォリオの3割以下にしておくのがおすすめといわれています。
長期投資の場合は、ポートフォリオの大半は先進国への投資や債券などのリスクの低い資産にしておくのが基本になります。
中国はもう経済成長しないの?
中国の経済成長率は、IMFが2024年に4.5%成長すると見込んでいるため、数字上ではまだまだ期待できます。
しかし、人口増加のペースは徐々に鈍化しており、人口数はインドに抜かれているため、より高いリターンを求めるのであればインドの方がおすすめだといえるかもしれません。
中国は政治動向が急変しやすく、それにより株式市場も変動しやすいのでポートフォリオに含める割合は少なくしておきましょう。
【まとめ】新興国ETF
この記事のポイント
- 新興国ETFは先進国ETFより高いリターンが狙える
- 新興国ETFはボラティリティが高いため銘柄選定が重要
- 今後の将来性に期待できる新興国にはインドやエチオピアなどがある
新興国ETFは、先進国ETFより高いリターンが期待できますが、発展途上のまま衰退してしまう国もあるのでETFの選定は慎重に行いましょう。
国の選定が難しく、あまり時間が割けない方はさまざまな新興国に投資できるETFに投資しておくのがおすすめです。