
バイデン政権の政策運営が思った以上に支持率が上がっていないことと、相変わらず大衆からのトランプ人気が高いことでトランプ氏が2024年の米国大統領選挙で勝利する可能性が高まっています。
トランプ氏が大統領選挙に勝利し、2期目を迎えた場合、米国株式市場、世界の金融市場にはどのような影響が出るのでしょうか?
目次 ー Contents
主なトランプ氏の主張・公約
インフレ政策
トランプ氏は連邦準備制度理事会(FRB)の利上げを繰り返し批判し、利上げは不要で経済に悪影響を及ぼすと主張しています。2024年にトランプ氏が勝利すれば、FRBに低金利を維持するよう圧力をかけ、インフレ率の上昇につながる可能性があります。また、石油利用の緩和が期待されるためエネルギー価格上昇は、インフレ圧力となるでしょう。ただし、規制緩和が進めば、米国内でのエネルギー生産が増加し、需給を弱める可能性もあります。
貿易
トランプは保護主義者で、中国やその他の国からの輸入品に関税を課しています。また、北米自由貿易協定(NAFTA)から米国を離脱させると脅しています。このような政策は、消費者や企業の物価上昇を招き、米国企業がグローバル市場で競争することを困難にする可能性があります。関税の上昇はインフレ圧力を増やします。
税金
トランプ氏は企業や個人に対する減税を約束しています。しかし、こうした減税は富裕層や企業に恩恵をもたらし、中間層の経済活性化にはほとんどつながらないと思われます。
規制
トランプ大統領は大統領在任中、企業に対する規制をいくつか撤廃しました。また、自身の規制緩和政策に同調する規制当局者を任命しています。仮に2024年にトランプ氏が勝利した場合、規制の撤廃を継続する可能性があり、それは企業に利益をもたらし、環境破壊や財務リスクにつながる可能性があります。バイデン大統領が行ってきた環境(地球温暖化)対策はほとんど破棄される可能性があります。そうなれば、アメリカのおける電気自動車の導入は大きく遅れる可能性があります。また、ソーラー発電関連も悪影響を受けるでしょう。
外交政策
トランプは孤立主義的な外交政策をとっています。環太平洋経済連携協定(TPP)やイラン核合意から離脱。また、イランとベネズエラに制裁を課しています。これらの政策は原油価格の上昇を招き、アメリカ企業が世界の特定地域で事業を展開することを困難にする可能性があります。
さらに、NATOからの脱退さえも提唱しています。実際に脱退することは不可能でしょうが、アメリカの孤立志向は強まるでしょう。台湾や、日本、韓国と関係もこれまでのようなコミットは薄まる可能性があります。
対中国政策では、習近平国家主席の出方次第で個人的関係が深まれば、どうなるかは分かりまりません。プーチン露大統領との関係も不確実性は高まります。
外国人イスラム教徒の米国入国禁止、聖域都市への制裁、議会の承認なしの国境の壁建設、ヒスパニック系住民を威嚇するための国勢調査の調査票の変更なども気に掛けたいところです。
株式市場参加者が注意すべきトランプ氏の行動
様々な報道、彼のアドバイザー、そして彼自身の言葉によると、彼は司法省に対して大統領的支配力を行使したいと考えており、政治的訴追を行うと脅しています。
彼のチームは、公務員を “粛清 “し、忠誠心のある人物に入れ替えること、国内の抗議行動に対して軍隊を出動させること、何百万人もの移民を収容所に拘束し、強制送還すること、移民に対して思想審査を導入すること、米国生まれの外国人の子どもから自動的に米国市民権を剥奪すること、などを望んでいます。
さらに、トランプはすべての輸入品に高い関税を課し、貿易戦争に戻したいと考えており、NATOには乗り気でないことを示唆しています。米連邦準備制度理事会(FRB)の独立性に疑問を呈し、社会支出を維持または増やす一方で減税を要求する可能性もあります。
しかしながら、トランプは、自身のアジェンダの多くを達成できない可能性が高いと思われます。最初の任期中、トランプは正統派の穏健派メンバーによって抑えられていたと言われています。2期目では、より急進的な人々が彼のために働く可能性が高いと予想されます。
しかし、トランプが1期目で発見したように、政府を大改革しても、硬直化した官僚機構やその他の制度によって泥沼にはまるでしょう。
トランプ氏再選による米国社会と金融市場への影響
もしトランプが自分のプログラムを実行に移した場合、米国社会と金融市場には次のような影響が予想されます。
● 企業(ひいては株式市場)は大きな不確実性に直面するでしょう。公務員制度改革は闘争なくして進まないでしょう。膨大な制度的知識が失われるでしょう。その結果、多くの企業が投資を延期し、人材確保に消極的になるでしょう。
● IMFの予測によると、米国の財政見通しはすでにかなり落ち込んでおり、赤字は拡大し、公的債務はGDPの123%と憂慮すべき水準にあり、2028年まで137%まで上昇する見込みです。トランプ大統領の下では、赤字はさらに拡大し、政府は国債の増発を余儀なくされるでしょう(一方で、今後3年間で国債の60%が借り換えの対象となります)。そのため、投資家は米国債に対してより高いリスク・プレミアムを要求する可能性が高くなります。トランプ大統領は連邦準備制度理事会(FRB)に短期金利を引き下げるよう圧力をかけると示唆しています。このため、米国の長期金利には上昇圧力がかかり、保護主義的な政策が強化されるでしょう。
● 金利の上昇はドルの魅力を高めます。しかし、米国の巨額の双子の赤字の拡大はドルの信認を損ない、トランプ政権下でFRBが政治的圧力をさらに受けるのではないかという懸念も出てくるかもしれません。
● FRBに対する信頼が損なわれれば、金(ゴールド)は良いパフォーマンスを示すでしょう。また、不確実性の高い地政学的情勢においても、ゴールドは良好なパフォーマンスを示すでしょう。さらに、トランプ大統領の脱グローバリズムの推進は、インフレ率の上昇につながり、金の支援材料となるでしょう。
● トランプ大統領の誕生は原油価格に二重の影響を与えそうです。トランプ大統領は気候変動にほとんど関心がないため、エネルギー転換は大きく妨げられ、その結果、化石燃料への依存度は高まるでしょう。その結果、化石燃料への依存度は高まるでしょう。しかし、トランプは連邦の土地を新たな石油掘削に開放し、供給を増やすでしょう。電気自動車やソーラー発電への補助金は撤廃される可能性があります。
● 現実には、トランプ大統領の急進的な計画は、2期目には実現しない可能性が高いと思われます。トランプ大統領の1期目は、アメリカのチェック・アンド・バランス・システムがまだ機能していることを示したので、議会、裁判所、官僚機構は間違いなくトランプ大統領の計画の荒削りな部分を滑らかにするでしょう。
元CIAアナリストのマーティン・グーリが書いているように、「トランプは独裁を狙うには年を取りすぎ、孤立しすぎ、ADDになりすぎている。その結果、トランプが2期目を得た場合、金融市場への影響は、水増しされた形で起こる可能性が高いだろう。」また、トランプ氏がワシントンを支配することはないと市場が判断すれば、当初のボラティリティは緩和されるでしょう。
トランプ氏再選で上がる米国株個別銘柄、下がる米国株個別銘柄を予想する
化石燃料関連企業は大きく恩恵を受ける
エクソンモービル(XOM)、シェブロン(CVX)、ピーボディ・エナジー(BTU)、アーチ・リソーシズ(ARCH)、アライアンス・リソーシズ・パートナーズ(ARLP)、コンソル・エナジー(CEIX)、ベーカー・ヒューズ(BKR)、フロントライン(FRO)、ユーロナビ(EURN)、ティーケータンカー(TNK)、ゴラールLNG(GLNG)、パイプラインを運営するMLPなど。
最低賃金の引き下げで恩恵を受ける企業
ウォルマート(WMT)、マクドナルド(MCD)、クローガー(KR)、ターゲット(TGT)など
防衛関連銘柄は恩恵を受ける可能性
ロッキード・マーチン(LMT)、レイセオン・テクノロジーズ(RTX)、ノースロップ・グラマン(NOC)、ゼネラル・ダイナミクス(GD)など。
トランプに関係深いメディア
デジタル・ワールド・アクイジション・コーポレーション(DWAC)、フォックス・ニュース(FOX)、ウォール・ストリート・ジャーナルのオーナーであるニューズ・コーポレーション(NWS)など。
米国に上場している中国系企業は大きく下落する可能性も
アリババ(BABA)、JD(JD)、バイドウ(BIDU)、PDD(PDD)、NIO(NIO)、ネットイーズ(NTES)など
環境関連銘柄は大きく下落する可能性
テスラ(TSLA)、ファーストソ-ラー(FSLR)、エンフェイス・エナジー(ENPH)など