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新NISAで人気の「オルカン」もベンチマークとするMSCI ACWI
株価指数算出のモルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル(MSCI)は5月15日、代表的な全世界株指数「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)」の銘柄入れ替えをおこないました。
今回の銘柄入れ替えにより、42銘柄を追加、121銘柄を削除しており、変更は5月31日の取引終了時点で反映されます。
ACWIは先進国23か国、新興国24か国の大型株と中型株を対象とし、時価総額が大きい順に2,840銘柄で構成され、世界の株式市場の時価総額全体の約85%をカバーする株価指数です(2024年4月30日時点)。
国別内訳では米国が63.32%を占めています。組み入れ上位銘柄は、大多数が米国を代表するグローバル企業です。
ポイント
- 新たに追加される銘柄に資金流入期待
- マイクロストラテジーやエムコアなど追加
- 5月31日の取引終了時点から反映
MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスの組入上位10銘柄
銘柄 | 比率(%) | |
---|---|---|
1 | マイクロソフト | 3.95 |
2 | アップル | 3.59 |
3 | エヌビディア | 3.06 |
4 | アマゾン | 2.34 |
5 | アルファベットA | 1.38 |
6 | メタ・プラットフォームズ | 1.37 |
7 | アルファベットC | 1.22 |
8 | イーライ・リリー | 0.90 |
9 | 台湾積体電路製造(TSMC) | 0.86 |
10 | ブロードコム | 0.83 |
AWCIは、2024年1月からはじまった新NISA(少額投資非課税制度)で人気度の高い「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー、オルカン)」もベンチマークとする指数です。AWCIに新たに追加される銘柄は、同指数をベンチマークとするファンドを運用する機関投資家などからの資金流入が期待できるでしょう。
注目の入替銘柄[3選]の株価見通し
ここからは、今回「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)」が銘柄入れ替えをおこなった中から注目の米国株3選をご紹介します。
業種 | 会社名 | ティッカーシンボル |
---|---|---|
IT・通信 | マイクロストラテジー | MSTR |
IT・通信 | ピュア・ストレージ | PSTG |
工業 | エムコア・グループ | EME |
①マイクロストラテジー
1銘柄目はIT(情報技術)会社のマイクロストラテジーです。1989年に設立された、ビジネス・インテリジェンス(BI)業界のパイオニアになります。「データマイニング」という言葉がまだ珍しかった設立当時より、企業がビジネスデータを効率的に分析し、可視化するためのプラットフォームを提供しています。
マイクロストラテジーはインフレヘッジを目的に、上場企業で最大のビットコインを保有する企業としての一面も持ち合わせており、「ビットコインヘッジファンド」との異名を持っています。
<マイクロストラテジーのビットコイン保有量の推移>

ビットコインのドル建て価格が2024年3月に史上初めて7万ドルを突破して騰勢を強める中、同社の株価は5月20日終値時点の年初来で2.5倍と、大きく値上がりしています。これはAIブームをリードするエヌビディアの92%高を大きく上回っている状況です。
背景としては、米証券取引委員会(SEC)が2024年1月、ビットコインを運用対象とする上場投資信託(ETF)を承認したことにより、これまで取引に参加できなかった機関投資家資金のビットコインへの流入期待が挙げられます。
もう1つの背景としては、年内2回と見られている米連邦準備理事会(FRB)の利下げ期待です。ビットコインは金利や配当を受け取れないため、基本的には金利低下が追い風になるでしょう。
ウォール街のアナリストによるマイクロストラテジー株の目標株価を見ていきます。
アナリスト4名のコンセンサス・レーティングは「Strong Buy(強い買い推奨)」です。目標株価の平均値(12か月後)は1,678.75ドルであり、5月20日終値と比較して16.6%の値上がり余地があります。アナリスト予想の最高値は1,875ドル、最安値は1,450ドルです。
マイクロストラテジーの株価推移
出典:TradingView
価格 | |
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目標株価の平均値(12か月後) | 1,678.75ドル |
2024年5月20日終値 | 1,439.98ドル |
アナリスト予想
株価 | |
---|---|
最高値 | 1,875ドル |
最安値 | 1,450ドル |
②ピュア・ストレージ
2つ目の注目株は外部記憶装置メーカーのピュア・ストレージです。
同社は、すべてのストレージにフラッシュメモリーを使った「オールフラッシュストレージ」の専業メーカーになります。「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」や「アジュール(Azure)」といったクラウドと連携したストレージサービスを提供しています。
常に最新のストレージを用いる「Evergreen」と呼ばれるサブスクリプションの採用が拡大している状況です。Evergreenストレージを活用することで、企業はストレージの買い替えやそれに伴うデータの移行などの手間を省き、データの損失などのリスクも抑えることができます。
<サブスクリプションモデルのアニュアルリカーリングレベニュー(ARR)の推移>

ピュア・ストレージのソリューションは、従来は高価だったフラッシュメモリーを、ハードディスク(HDD)と同程度の単価で提供し、HDDと比較して消費電力量やスペース効率の面で優れています。
例えば、データセンターでは同社のフラッシュストレージを活用すれば、電力消費を80%抑えることができます。オートメーション化したクラウド運用による省人化などのアウトカム(成果)も期待できます。
企業がHDDで構成される従来のストレージからフラッシュストレージに置き換える動きが広がる中、大きなアウトカムを期待できる同社のサービス活用が進んでいる状況です。
2024年第4四半期時点で、顧客数は1万2500社超、全米売上高ランキング「フォーチュン500」構成企業の60%が顧客となります。
さらに人工知能(AI)や機械学習向けの需要拡大が見込まれています。メタ(旧フェイスブック)をはじめ、自動運転や宇宙開発を手掛ける企業など100社以上のAI関連顧客のプロジェクトをサポートしています。
ウォール街のアナリストによるピュア・ストレージ株の目標株価を見ていきましょう。
アナリスト18名のコンセンサス・レーティングは「Strong Buy(強い買い推奨)」です。目標株価の平均値(12か月後)は56.21ドルであり、5月20日終値(60.12ドル)はすでに目標株価の平均を上回っています。アナリスト予想の最高値は67ドル、最安値は44ドルです。
ピュア・ストレージの株価推移
出典:TradingView
価格 | |
---|---|
目標株価の平均値(12か月後) | 56.21ドル |
2024年5月20日終値 | 60.12ドル |
アナリスト予想
株価 | |
---|---|
最高値 | 67ドル |
最安値 | 44ドル |
③エムコア・グループ
3銘柄目はエンジニアリング会社のエムコア・グループです。
同社は、ビル施設の電気・空調(HVAC)、上下水道、配管、防火設備、セキュリティ、送配電など、インフラの建設や保守に関わるサービスを手掛けています。2023年に126億ドルの売上高を上げ、フォーチュン500に選出されている有力企業です。
現在は、生産拠点の「リショアリング(国内回帰)」銘柄の一角として株価が大きく上昇しており、史上最高値を更新する展開が続いています。
エムコアの株価上昇を後押しするのが、米バイデン政権による3つの政策です。具体的には、米国のインフラの刷新に1兆ドル規模を投じる「インフラ投資・雇用法(IIJA)」、半導体産業支援策「CHIPS法」、米国最大の気候変動対策となる「インフレ抑制法(IRA)」です。
これらの政策を通じ、同社はデータセンターや半導体工場向けなどの保守点検サービス需要を取り込み、業績を拡大させています。
<AIデータセンターの電気工事や機械設備工事の需要が強い>

今年は4年に1度実施される米大統領選(投開票日は11月5日)の年です。仮に「もしトラ(もしトランプ氏が勝てば)」が実現した場合、生産拠点の国内回帰の動きがさらに強まるとの見方が多く、エムコアにとっては更なる業容拡大を期待できるでしょう。
さらに「電化・EVバリューチェーン」、「ヘルスケア」、「エネルギー効率(サステナビリティ)」といったメガトレンドに関連したビジネスチャンスも広がっています。
ウォール街のアナリストによるエムコア株の目標株価を見ていきましょう。
アナリスト4名のコンセンサス・レーティングは「Buy(買い推奨)」です。目標株価の平均値(12か月後)は2ドルであり、5月20日終値と比較して6.8%の値上がり余地があります。アナリスト予想の最高値も最安値は410ドルです。
エムコアの株価推移
出典:TradingView
価格 | |
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目標株価の平均値(12か月後) | 410ドル |
2024年5月20日終値 | 383.83ドル |
アナリスト予想
株価 | |
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最高値 | 410ドル |
最安値 | 410ドル |