この記事のポイント
- 全世界株式は成長率が低い国にも投資してしまうデメリットがある
- 全世界株式は1つの国に依存しないので分散効果は高まる
- 全世界株式とS&P500では全世界株式の方がおすすめ
- 全世界株式に投資できる銘柄はeMAXIS Slim全世界株式がある
「全世界株式はおすすめしない」世間ではこのような声もありますが、実はS&P500よりも今後は良い投資対象先として考えられる可能性があります。
本記事では、なぜ「全世界株式はおすすめしない」と言われているのか、その原因を解説します。そしてS&P500と比較した上で、全世界株式のおすすめ銘柄を紹介します。
【ワンポイント】全世界株式とは?
簡単に説明すると「全世界の株式に投資すること」です。1つの国に投資するよりリスクを軽減できる可能性が高くなり、個人投資家から長期保有の対象銘柄として人気を集めています。
多くの場合は、ファンドを購入すると全世界株式投資を行えます。全世界株式に投資できる銘柄には、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)(0331418A)」や「バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT)」などがあります。
※この記事は2024年5月時点の情報をもとに作成しています。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
目次 ー Contents
全世界株式はおすすめしない?デメリットを解説
全世界株式はおすすめしないと言われている理由は以下の4つです。
- 成長率が低い国にも投資される
- 米国株投資よりリターンが少ない
- 新興国株のリターンは米国株でも得られる
- 運用コストが高くなる可能性がある
成長率が低い国にも投資される
全世界株式は先進国だけでなく新興国や後進国などすべての国に投資されるため、成長率が低い国にも投資してしまいます。
成長率が低い国は当然投資リターンは低いので、状況によっては米国株投資や先進国投資などよりもリターンが低下するでしょう。
それぞれの国の組み入れ割合は多くないため成長率が低い国に大きく投資されるわけではありませんが、どの国に投資されているのかは事前に確認しておきましょう。
米国株投資よりリターンが少ない
全世界株式は米国株式と比較すると、リターンが少なくなる可能性が高くなります。
前述の通り、全世界株式はさまざまな国に投資しているため、一定のリターンを犠牲にして分散効果を優先しているからです。
ただ、米国の経済状況によってはリターンが今後全世界株式より低下する可能性もあるため、必ずしも米国株投資の方が投資対象として優れているわけではありません。
直近5年のリターンで比較すると、米国株と全世界株式は以下のようになっています。
- 全世界株式(バンガード・トータル・ワールドストックETF) :8.03%
- S&P500(iシェアーズS&P500米国株ETF) :17.78%
直近のリターンは米国経済が上向きだったため、全世界株式の倍以上のリターンを獲得しています。
新興国株のリターンは米国株でも得られる
全世界株式はさまざまな国に投資でき、今後の成長性に期待できる新興国の株式にも投資できるのですが、実は新興国株のリターンは米国株でも得られます。
理由は、米国の大企業はグローバル企業であり、新興国でもビジネスを始めているからです。
新興国ビジネスに一定の割合を割いている企業であれば、他の米国株とは異なるリターンを得られる可能性があるでしょう。
運用コストが高くなる可能性がある
全世界株式銘柄は、他の銘柄と比較して運用コストが高くなる可能性があります。
例えばS&P500に価格が連動しているETFのVOO(バンガード・S&P500 ETF)と、全世界株式に投資できるETFのVTの経費率(純資産総額に対して運用経費がどれくらいの割合かを示したもの)を比較すると以下のようになっています。
- VOOの経費率:0.03%
- VTの経費率:0.07%
上記の場合、全世界株式はS&P500より0.04%以上高いリターンを獲得しないとリターンは少なくなってしまいます。
費用を最小限に抑えることは投資において重要になるので、投資リターンだけでなくコスト面も考えるようにしましょう。
全世界株式に投資するメリット
全世界株式に投資するデメリットを紹介しましたが、以下のメリットもあります。
- 1つの国に依存しない投資が行える
- 米国を中心に投資できる全世界株式ETFがある
1つの国に依存しない投資が行える
全世界株式の最大のメリットは「さまざまな国へ分散投資できる」ことです。
さまざまな国へ分散投資することでリターンが少なくなる可能性がありますが、その分特定銘柄の株価下落に影響されてしまうリスクも分散できます。
ポートフォリオの考え方によっては、全世界株式投資で安定した利益を得ながら米国の個別株投資でリターンを最大化させるような戦略も狙えます。
米国を中心に投資できる全世界株式ETFがある
全世界株式に投資できる銘柄の中には、米国を中心に投資できるETFがあります。
例えば、VTはポートフォリオの約6割が米国株で構成されており、一定程度の米国株投資を行いながら残りの40%で分散投資を行えるのです。
VTであれば米国株も全世界株もどちらもある程度実現できるため、どちらに投資すべきか判断に迷っている方向きの銘柄といえるでしょう。
ただ、「半分以上が米国株で構成されている=米国経済に損益がある程度左右される」という点は理解しておきましょう。
全世界株式とS&P500はどっちに投資するべき?
全世界株式とS&P500ではどっちに投資するべきなのか?
今後の株価を完璧に予想するのはできないため一概には言えませんが、リスクを抑えるなら全世界株式がおすすめです。
理由は以下の通りです。
- 20年以上米国株式は上昇しない時期があった
- 米国経済の衰退が懸念されている
- 新興国の成長率が高まる可能性が高い
20年以上米国株式は上昇しない時期があった
米国は1929年に起きた世界恐慌の影響で、400ドルほどまで上昇していたダウ平均の価格は40ドル付近まで80%下落し、1954年まで400ドルまで戻すことはありませんでした。
つまり、400ドル付近でダウ平均を購入した投資家は20年以上ずっと損失を抱えている状態だったのです。
近年は米国が低金利の経済を続けていたため※株価は長期的に上昇しやすくなっていたのですが、1929年の状況が起こり得るため米国株投資の長期投資で失敗する可能性は0ではありません。
※2008年12月に米国FRBはFF金利を0〜0.25%に引き下げ事実上のゼロ金利となった。
そのため、米国株だけに依存しない全世界株式の方が損失を軽減する観点では優秀な選択になる可能性があります。
米国経済の衰退が懸念されている
2023年現在、米国経済の衰退が懸念されています。主な要因は以下の通りです。
- 急激な利上げによる景気後退
- 世界的な米ドル離脱
2022年から米国はインフレを抑えるために急激な利上げを行っており、すでに銀行株では倒産が起きているので今後は米国の景気後退が懸念されています。
また、世界的なトレンドとして脱米ドルが始まりつつあるようです。
2022年に起きたロシアのウクライナ侵攻で、米国は制裁としてロシアのドル資産を凍結させました。
米ドルは世界の基軸通貨としてさまざまな場面で利用されるので多くの国が保有していますが、資産凍結のリスクが浮き彫りとなったためドルから資金流出が進む可能性があると言われています。
米ドルが使われなくなれば米国経済はさらに衰退していくでしょう。
新興国の成長率が高まる可能性が高い
新興国の成長率はさらに高まる可能性が高いです。
新興国の代表国であるインドは、2022年7-9月期の実質GDP成長率が前年同期比+6.3%と、8四半期連続のプラス成長となっています。
参考:ニッセイ基礎研究所
人口数も中国を抜き世界1位になり、労働者は今後10年間で毎年1,000万人のペースで増えると考えられているので米国経済より投資リターンが高くなる可能性はあり得ます。
全世界株式に投資できるおすすめ銘柄
全世界株式に投資できる銘柄として、次の2つをご紹介します。
- eMAXIS Slim全世界株式(0331418A)
- バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT)
eMAXIS Slim全世界株式(0331418A)
| 運用会社 | 三菱UFJ国際投信 |
| 1年トータルリターン | +31.64% |
| 信託報酬 | 0.05775% |
eMAXIS Slim全世界株式は投資信託の1つで、「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2022」で1位を獲得しているファンドです。
つみたてNISAにも対応しており、純資産合計総額は3兆円と、多くの投資家から人気を集めています。
バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT)
| 運用会社 | バンガード・グループ |
| 1年トータルリターン | 16.18% |
| 経費率 | 0.07% |
バンガード・トータル・ワールド・ストックETFは、投資信託ではなくETFになります。
ETFは投資信託よりコストが低い特徴があり、プロも投資している人気商品です。
VTは構成銘柄も約6割が米国株になっているので、リターンは米国経済にある程度左右される点を注意しましょう。
また、IG証券であればVTのCFD取引を行うことも可能です。CFD取引は下落相場でも稼げる投資手法のため、損失を軽減したい方はチャレンジしてみるのもよいでしょう。
全世界株式に投資できる証券会社3選
全世界株式に投資できるおすすめの証券会社は以下の3つです。
- マネックス証券
- SBI証券
- 楽天証券
マネックス証券

マネックス証券は全世界株式のような長期投資を前提とした銘柄だけでなく、FXや暗号資産CFDなど、中級者以上の方向けの金融商品も揃っている証券会社です。
特に外国株のラインナップが充実しており、銘柄は約7,000銘柄以上。積立NISAやiDeCoを利用した長期投資だけでなく、短期投資でも利益を狙ってみたい方におすすめです。
SBI証券

SBI証券は日本株の個人取引では国内シェア率No.1の実績がある、業界最大規模の証券会社です。
投資信託からETF、その他商品まで幅広い銘柄を取り扱っており、取引手数料は種類によって異なるものの無料が多いです。
口座開設時に積立NISAやiDeCoなどの口座も同時に開設できるので、簡単に全世界株式に投資できます。
楽天証券

楽天証券は楽天ポイントで投資が行える証券会社。ポイント投資であれば資金を減らさずに投資できるため、おトクに投資をしたい方におすすめです。
楽天カード決済で株式を購入するだけでもポイントが付与されるので、全世界株式を長期的に購入すれば継続してポイントを得られます。
ポイントを使用して他の銘柄を購入すれば、資金を使うことなく投資を楽しめるため初心者の方でも安心です。
全世界株式についてよくある質問
全世界株式についてよくある質問をまとめました。
- 全世界株式(オールカントリー)とS&P500を両方買うのはあり?
- 全世界株式で積立NISAをするのはおすすめ?
- そもそも全世界株式とは何?
全世界株式(オールカントリー)とS&P500を両方買うのはあり?
全世界株式とS&P500を両方買うのは、米国株式のリターンをさらに狙いたいのであれば「あり」ではないでしょうか。
しかし、VTのような半分以上が米国株で構成されている銘柄は、より米国株の割合を増やしてしまうので、全世界株式でもどの銘柄を選択するのかは考えておきましょう。
各銘柄の構成銘柄は、銘柄を販売している企業の公式サイトなどで確認できます。
全世界株式でつみたて(積立)NISAをするのはおすすめ?
全世界株式でつみたてNISAをするのはおすすめといえます。
つみたてNISAは非課税で行えるので、長期投資を前提とする場合が多い全世界株式投資と相性がよいでしょう。
そもそも全世界株式とは何?
全世界株式とは、全世界の株式に投資することです。多くの場合は、ファンドを購入すると全世界株式投資を行えます。
全世界株式に投資できる銘柄には以下があります。
- eMAXIS Slim全世界株式(0331418A)
- バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT)
1つの国に投資するよりリスクを軽減できる可能性が高くなり、個人投資家から長期保有の対象銘柄として人気を集めています。
【まとめ】全世界株式はおすすめしない?
この記事のポイント
- 全世界株式は成長率が低い国にも投資してしまうデメリットがある
- 全世界株式は1つの国に依存しないので分散効果は高まる
- 全世界株式とS&P500では全世界株式の方がおすすめ
- 全世界株式に投資できる銘柄はeMAXIS Slim全世界株式がある
「全世界株式はおすすめしない」という声がありますが、分散投資ができて、損失をおさえられるのでおすすめの投資対象といえます。
米国経済が今後も強い場合は米国株投資の方が高いリターンを得られますが、ご自身で今後の世界がどう動いていくのか予想しながら投資してみましょう。リスクを抑えられる全世界株式とリターンを狙える米国投資を使い分ける(自身の投資スタイルに合わせたポートフォリオを組む)スタイルなどを模索してみてはいかがでしょうか。