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はじめに
2024年の株式相場にはどのようなトレードチャンスが眠っているでしょうか。2023年は日本株が非常に強い年でした。日経平均株価は、12月19日時点で年初来25.70%のリターンを記録しました。一方でS&P500の年初来リターンは23.47%、DAX30(ドイツ株価指数)は19.59%でした。
各国の株式指数は年初来リターンをプラスで推移していますが、2023年は株式相場に悪影響を与えるような出来事が数多く発生しました。もっとも注目すべきトピックは各国が歴史的なインフレに対応するため、急速な利上げを実施したことです。ただし急速な金融引き締めを行っても、前述のように株式相場は年初来から好調に推移しています。
また武装組織ハマスがイスラエルを攻撃したことにより、世界中に混乱が広がりました。加えてロシアのウクライナ侵攻がいまだに続いており、2024年の株式相場に悪影響を与える可能性があります。
さらに中国の不動産バブル崩壊の懸念があります。中国当局は広範な財政支援を行うとしており、見通しは不透明です。仮に中国の不動産バブルが崩壊すると、中国の金融機関や企業が資金を回収できなくなり、中国経済全体が傾く恐れがあります。
当レポートでは、2024年の投資戦略を考えている方、これから投資を始めようと考えている方に向けて、投資商品別の投資戦略をお届けします。
1.2024年の金融市場に影響を与える出来事
はじめに現在の情報から、2024年の金融市場に影響を与える以下4つの出来事について解説します。
米国の利上げストップ・利下げ
米国の中央銀行であるFRBは2024年に利上げをストップし、利下げを開始するとの見通しが大方の予想です。事実として12月12日・13日に開催されたFOMCでは金利を据え置き、追加利上げの見通しが示されませんでした。
また先述のFOMCでは「2024年に複数回の利下げを行うこと」を示唆しました。具体的な利上げの回数、どの程度利下げを行うのかは示されていません。ただ市場関係者の多くは、2024年に0.25ポイントずつの利下げを計4回行うと予想しています。
基本的に利下げは株式にとってポジティブな要因となるため、2024年の株式市場は2023年以上の盛り上がりが期待されます。加えて金利の低下は、定期的なインカムがない金にとってもプラス材料です。
一方で金利の低下は、債券にとってはマイナス材料となります。受け取れる利息が減少することで、債券に投資する魅力が薄れるためです。そのため2023年に好調だった債券市場は、2024年に入るとパフォーマンスが悪化する可能性が高いです。
ロシアとウクライナの戦争の行方
2022年2月24日にロシアはウクライナへの侵攻を開始しました。各国はロシアの国際法違反を非難し、大規模な経済制裁を実施しています。ロシアは資源輸出国であるため、各国は天然ガスや原油の新たな輸入先を探すことに奔走しました。
天然ガス・原油の価格はウクライナ侵攻が開始されてから数ヶ月間高騰していましたが、2023年12月時点は落ち着いています。ただ後述する中東地政学リスクの状況によっては、資源価格が再度高騰し、各国がまたインフレ対応に追われる可能性は十分にあります。
イスラム組織ハマスによる中東地政学リスク
2023年10月7日にイスラム組織ハマスが、イスラエルに大規模な攻撃を仕掛けました。複数回の停戦はあるものの、事態収束の見通しはいまだに立っていません。ハマスとイスラエルの戦闘が激化すれば、世界経済がリセッションする恐れがあります。
中東地域はエネルギーの供給源であるとともに、船舶のメイン輸送経路でもあります。そのため中東地域の紛争の状況によっては、世界各国でエネルギーをはじめとしたコモディティの価格が高騰し、落ち着いたインフレが再燃する可能性は十分に残されているといえるでしょう。
またアフリカ北東部とアラビア半島に挟まれた紅海を通る商船に対して、イエメンの反政府武装組織フーシ派が攻撃しています。フーシ派幹部は、攻撃対象を「イスラエルの船舶」と「イスラエルに向かう船舶」としています。フーシ派の攻撃の影響で、運行を一時中止している物流会社もあります。このまま運行中止が続くと、世界経済に大きな打撃を与えるでしょう。つまり輸送にかかる時間と費用が増加するため、インフレにつながり各国の利下げ判断に影響を与える恐れがあります。
中国の不動産バブル崩壊
中国の不動産バブル崩壊懸念は、中国不動産開発大手企業の恒大集団の利払い滞納が発端となり顕在化しました。恒大集団は2023年8月にニューヨークの裁判所へ破産法の申請をしています。2022年12月31日時点の恒大集団の貸借対照表によると、純資産は日本円で約36兆6,883億円なのに対し、負債総額は約48兆6,441億円にも上ります。
また恒大集団以外にも、碧桂園や融創をはじめとした不動産開発大手企業も経営危機に陥っています。不動産開発大手企業の問題が業界全体に波及し、市場全体が機能しなくなれば、他業界にも影響が及ぶことは十分に考えられます。経営危機に陥っている不動産開発企業に投資・出資している投資家は、大部分の資金を回収できなくなるでしょう。
この影響は中国国内だけでなく、外国企業や外国人投資家にも波及する可能性は十分にあります。中国当局は不動産バブル崩壊を回避するために、大手不動産開発企業の資金調達支援に乗り出していますが、どの程度の効果があるのかは不透明です。
2.2024年の米国と世界の株式市場
次に2024年の株式相場の展望を、各株式のチャートや注目の材料をもとに解説します。
日本株
はじめに日経平均株価とトピックスのチャートをそれぞれ見てみましょう。
日経平均株価 週足チャート

TOPIX 週足チャート

2023年の日経平均株価は6月まで、TOPIXは9月中頃まで右肩上がりで上昇しました。それ以降は一定のレンジ相場で推移しています。日本株が好調な理由は次の2つが考えられます。
- 東証のPBR(株価純資産倍率)1倍割れ企業への是正要求
- 著名投資家バフェット氏による日本株への追加投資表明
PBR1倍割れの企業は「必要以上に現金を溜め込んでいる」「事業へ投資しておらず資金効率が悪い」と投資家から判断され、敬遠されやすくなります。東京証券取引所上場部「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議第五回参考資料」によると、PBR1倍割れの企業はプライム市場で50%(922社)、スタンダード市場では64%(934社)と半分以上を占めると指摘されています。
この数字は米国や欧州と比べても多く、TOPIX500・S&P500・STOXX600それぞれの指数を構成する銘柄の中で、PBR1倍割れの企業の比率は以下の通りです。
- TOPIX500:43%
- S&P500:5%
- STOXX600:24%
資金効率が悪い企業が多く上場している市場は、投資家にとって魅力的とはいえません。そうなれば資金を集めにくくなるので、東証はこのような状況を改善するために該当企業へ要請を出しました。
各企業は東証の要請に対応するため、株主還元の拡充や事業戦略の見直し、ガバナンスの強化などの対策を行うことが求められます。2024年も引き続きこの流れは継続するので、日本株、特にバリュー株の株価上昇には期待できるでしょう。
米国株(主要な米国株価指数)
米国株主要3指数のチャートを確認しましょう。
NYダウ 週足チャート

S&P500 週足チャート

NASDAQ 週足チャート

どの指数も年初来のリターンはプラスです。上昇の要因はさまざまありますが、1つ挙げるとすればAIブームを背景としたハイテク株の上昇です。米国の主要な半導体関連30銘柄で構成されている「SOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)」は、年初来50%以上も上昇しています。最強指数と呼ばれるS&P500の年初来リターンが23.47%だったことを踏まえると、いかにハイテク銘柄が強かったのかお分かりいただけるでしょう。
また夏以降は金融引き締めが長期化するとの見通しにより、レンジ相場で推移していました。しかし年の後半はCPIの上昇率が鈍化したことで、利下げの期待が高まり株価が上昇トレンド入りしています。先述したように、12月12日・13日に開催されたFOMCでは追加利上げ見通しが発表されなかっただけでなく、2024年には複数回の利下げを行うとの示唆がありました。
米国にはリセッション懸念があるものの、利下げ期待と堅調な企業業績を背景に2024年も米国株にはトレードチャンスが眠っているといえそうです。
欧州株(主要な欧州株価指数)
次に欧州株について解説します。イタリア・ドイツ・フランス・イタリア各国の株価指数を見てみましょう。
イギリス:FTSE100種総合株価指数 週足チャート

ドイツ:DAX30(GER30)指数 週足チャート

フランス:CAC40指数 週足チャート

イタリア:ミラノ・イタリア・ボルサ指数(FTSE MIB) 週足チャート

欧州主要各国の年初来リターンは下記の通りです。
- イギリス:3.54%
- ドイツ:20.18%
- フランス:17.14%
- イタリア:28.07%
2023年の成績はプラスですが、イギリスのみリターンが一桁台と大きく出遅れています。その原因と考えられるのは特段と高いインフレ率でしょう。イギリスの消費者物価指数は前年比7.9%と、欧州各国の中でもインフレが進行していました。参考までにユーロ圏は5.5%の上昇と、イギリスよりインフレは進行していません。
現在イギリスを除く3カ国は、上昇トレンド入りしています。一方でイギリスは、レンジ相場で推移しておりチャートに力強さがありません。ただし11月のCPIは前年同月比3.9%と10月4.6%から大きく鈍化したため、イングランド銀行(イギリスの中央銀行)が利下げに転じるとの見通しが市場関係者の間で広まっています。物価上昇の原則により経済が正常化し、利下げが行われれば株式にとってプラスです。
ユーロ圏のインフレ率も鈍化しています。11月のHICP(ユーロ圏消費者物価指数)は前年比2.4%の上昇と、10月の2.9%から鈍化しています。これは市場予想の2.7%も下回った数字です。そのため市場関係者は早期の利下げを期待していますが、ECBは利下げを示唆していません。事実として12月14日の理事会で金利を据え置きましたが、利下げを期待させる発言はありませんでした。ラガルド総裁は「物価圧力は依然として高い」と発言しており、まだまだ警戒感を持って対応するべきだとの認識を持っています。
2023年のドイツ・フランス・イタリア株式は非常に力強いものでした。しかし物価が高止まりし、利下げが行われなければ、2024年は2023年のような成長が見込めないでしょう。
新興国株(主要な新興国株価指数)
バンガードFTSEエマージング・マーケッツETF(VWO) 週足チャート

VWOは新興国の大型・中型・小型株式に投資しており、主要な投資対象国は以下の通りです。
- 中国
- インド
- ブラジル
- 台湾
- 南アフリカ
計24カ国に投資しており、およそ4,300銘柄と多くの銘柄で構成されているのが特徴です。VWOの年初来リターンは5.36%です。2023年の新興国株式のリターンは、イギリスを除く先進国に大きく劣っています。そのため、相対的に新興国株は割安水準にあるといえるでしょう。また今後3年間の新興国の成長率は、先進国を3%上回るとの予想もあり、新興国への投資妙味が増しています。
バリュー投資家だけでなく、米国をはじめとして先進国以外への分散投資を検討している方にとって、2024年の新興国は十分に投資対象になりうるといえるでしょう。
3.2024年の株式投資で注目すべきセクター銘柄
ここでは2024年の投資における注目分野について以下3つを解説します。
- AI銘柄
- 半導体銘柄
- 環境銘柄
AI銘柄
1つ目の注目分野は「AI銘柄」です。2023年はChatGPTやGoogle Bardをはじめとした「生成AI業界」が大いに盛り上がりました。生成AI市場は今後10年間は42%のペースで成長していき、およそ180億円規模になると予想されています。
AI銘柄は生成AIを作成している会社に留まりません。米アマゾン・ドット・コムのクラウド部門は、AIや機械学習の専門家と顧客をつなぐサービスを立ち上げると発表しています。顧客は金融や製造業、ヘルスケアなど幅広い層を想定しています。米アマゾンはアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)の顧客に対し無償で専門家とのマッチングを行い、生成AIの本格活用を支援し、クラウドサービスの売上促進を狙っています。投資額はおよそ140億円です。
AI銘柄は生成AIだけでなく、顧客と専門家をつなぐサービスや後述する半導体など多岐に渡ります。2024年は2023年以上にAI銘柄が盛り上がると予想されるため、さまざまなトレードチャンスがあるでしょう。
半導体銘柄
2つ目の注目分野は「半導体銘柄」です。半導体はパソコンやスマートフォン、生成AIだけでなく自動車や各種家電などさまざまなものに使用されています。2024年はこれまで以上にIoT・5G・ビッグデータの活用などで、半導体の需要がさらに高まります。
特に半導体の需要増加は日本に恩恵があります。日本は半導体素材・装置大国で、世界の半導体素材市場の50%を占めるとされているからです。半導体需要増加に対応するためには、半導体素材と装置のどちらも欠かせません。そのため2024年は特に日本の半導体銘柄が上昇する可能性が高いです。
すでに日本の半導体銘柄に厳選投資している「グローバルX 半導体関連-日本株式 ETF」は日経平均株価を大幅にアウトパフォームしています。こちらのETFの年初来リターンは86.32%と、日経平均株価の3倍以上のリターンを叩き出しており、投資家の注目度合いが分かります。
環境銘柄
3つ目の注目分野は「環境銘柄」です。環境銘柄の中でも特に注目なのは、EV関連銘柄です。現在各国は脱炭素の流れを受けて、ガソリン車の販売を禁止しEV車の販売義務付けを進めています。12月20日のニュースによると、カナダは2035年までに乗用車の全EV化を目指すと発表しました。発表に合わせて、自動車メーカーに二酸化炭素が出ない乗用車にすることを義務付ける規則も出しました。
またEUはガソリンを燃料とするエンジン車の新規販売を全て禁止にするとしていましたが、環境負荷の少ない燃料を使うエンジン車は対象外とすると方針転換しました。この方針転換は日本のハイブリッド車に良い影響を与える可能性が高いです。つまり2035年以降も日本のハイブリッド車をEUで販売できる可能性が高く、日本の自動車メーカーの業績にプラスとなるでしょう。
EUの方針転換がありつつも、脱炭素をはじめとした環境保護の流れは変わらないでしょう。そのため2024年以降もEVなどの環境銘柄にはトレードチャンスが眠っているといえます。
4.2024年の為替市場が金融市場に与える影響
ここでは2024年の為替市場が、金融市場にどのような影響を与えるのか考察していきます。
米ドル/円

2023年の米ドル/円相場は、11月13日に「1ドル=150円80銭」まで値下がりし、記録的な円安となりました。円安の背景にあるのが、米国の利上げによる金融引き締めと、日本の大規模な金融緩和です。この両者によって日米の金利差が拡大し、金利の付かない円を売却し、高金利の高いドルを購入する流れが強まりました。
円安は基本的に日本企業の業績にとってプラスです。日本にはトヨタや東京エレクトロンのような輸出企業が多く、円安は日本企業の価格競争力を高めるためです。そのため取引先に外国企業をもつ日本企業の業績は、非常に好調でした。
一方で米ドル/円は最安値を記録した後、12月21日現在「1ドル142円台」まで値上がりしています。2024年にFRBが利上げを複数回行うとの期待と、日銀の金融政策変更による利上げ期待の2つが背景にあります。
そのため2024年は円高がトレンドとなる可能性が高いです。これまでより円高になれば、日本企業の業績にとってマイナスのインパクトがあるため、2023年のような好業績は期待できないでしょう。一方で米国にとってはプラスの影響が考えられるため、好調な米国株がさらに上昇する可能性があります。
ユーロ/米ドル

直近のユーロ/米ドルのトレンドはドル安ユーロ高です。原因の1つとして考えられるのが、ユーロ各国の財政リスクへの懸念です。特にイタリア政府の財政赤字が注目されています。イタリア政府によると、2024年の財政赤字見通しはGDP比4.3%になる見込みです。一時はイタリアの信用格付けが引き下げられるとの見通しもありました。
加えてドイツは憲法裁判所の判決により、財政危機が深刻化しています。この判決で新型コロナウイルス対策予算の未使用金を、他用途への転用を認めないと判断しました。そのため代替財源の確保を急ピッチで進めています。
基本的に財政の悪化は国債利回りの上昇につながるため、ドル売りユーロ買いの動きが強まります。ドル安ユーロ高は米企業にとってプラス要因で、欧州企業にとってはマイナス要因です。そのため米ドル/円でも解説したように2024年は、米国企業の上昇に期待できます。
5.2024年のコモディティ市場が株式市場に与える影響
最後に株式市場に与える影響が大きいコモディティ市場について、以下の4つを解説します。
- 金(ゴールド)
- 原油
- 小麦
- とうもろこし
金(ゴールド)

金(ゴールド)は「有事の金」と呼ばれ、景気後退局面や世界情勢が不安定になると買われやすい商品です。2023年の金価格はレンジ相場で推移しています。現在は10月に起こったイスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃、イエメンの反政府武装組織フーシ派による紅海を通る商船への攻撃などを背景に上昇トレンドです。
中東地政学リスクやロシアのウクライナ侵攻が激化すれば、投資家はリスクヘッジの観点から株式よりも金に投資する可能性が高いです。このまま金価格の上昇トレンドが変わらなければ、投資資金が株式市場に流れにくくなり、株式の上昇余地が限られてしまう恐れがあります。
そのため金(ゴールド)に投資していない方であっても、金価格の動向には警戒しておきましょう。
原油

原油価格は株価と相関関係にあるといわれています。理由は2つあり、経済が活発になると原料やガソリンとしての需要が高まるため、原油価格と株価が上昇するためです。また原油価格の上昇は、産油国にとって石油収入が増えることを意味します。そのため原油価格の上昇によって豊富なオイルマネーが株式市場に流れ込むので、原油価格と株価は相関関係にあるといわれます。
ただ現在の原油価格は下落トレンドにあり、上昇トレンドの株式市場とは逆相関の関係にあります。この背景にあるのは、OPECプラスで合意された自主減産がどこまで実施されるか不透明なこと、中国経済に懸念があることです。
OPECプラスでは、日量220万バレルの自主減産について合意しました。しかし加盟国の足並みが揃っておらず、減産に合意したにもかかわらず、原油価格は下がっています。また中国経済は不動産バブルの崩壊や若者の失業率の増加などの理由から、見通しが不透明となっており、原油の需要が高まらないのではと市場関係者は見ています。これらの理由から株価は上昇していても原油価格は下落しています。
このまま原油価格が下落し続ければ、株式市場にオイルマネーが入ってこないため、長期的に見ると株価にとってはマイナスです。一方で原油価格が一転して上昇トレンド入りすれば、さらなる株価上昇を見込めるので、株式投資においても原油価格のトレンドを見逃さないようにしましょう。
小麦

小麦価格も原油価格と同様に株価に相関関係があるといわれています。ただ現在の小麦価格は下落トレンドで、株価とは逆相関の動きを見せています。理由としては、前述の中国経済の不透明感と生産量が予想を上回っているためです。
中国経済はバブル崩壊の危機を迎えています。仮にバブルが崩壊すると小麦の需要が減り、消費されなくなるとの見通しから小麦価格が下落しています。また2024年は小麦やとうもろこしを含めた穀物の生産が好調でした。世界の穀物生産予測は28億1,900万トンでしたが、実際は28億2,300万トンと予想を上回りました。この数字は前年比で0.9%増です。供給量が増える一方で、需要は落ち込むとの見通しから、小麦価格は下落しています。
今後小麦価格が下落を続ける場合、下落要因が供給量の増加であれば、株式相場にそれほど悪影響はないでしょう。一方で中国をはじめとした各国の経済状況の落ち込みにより小麦価格が下落した場合は、株式相場も下落トレンド入りする可能性があります。
とうもろこし

2023年のとうもろこし価格は年初から下落が続いています。理由としては小麦価格で解説した予想を上回る生産量と、原油価格の下落です。とうもろこし価格は原油価格と深い関係があります。
とうもろこしは、ガソリンの代用として活用されるエタノールの原料となるためです。そのため原油の需要が高まると、とうもろこしの需要も同時に高まり価格も上昇します。原油価格やとうもろこし価格は、景気が好調なとき上昇するのが一般的です。
つまり原油価格やとうもろこし価格は、現在の経済状況を判断できる1つの指標となります。とうもろこし価格のトレンドが変化せずに下落し続けるのであれば、株式相場も近いうちに下落トレンドに転じる可能性があります。そのため株式投資家であっても、とうもろこし価格の動向には注意が必要です。
最後に:2024年の株式相場について
2024年の株式相場は、各国によって明暗が分かれる可能性が高いです。最後に相場予想についてまとめます。
株式名銘柄 | 方向性 | コメント |
---|---|---|
日本株 | 上昇↗️ | 東証の施策と著名投資家バフェットの影響で上昇する見込み |
米国株 | 上昇↗️ | 想定通り実施されれば、米国株にとってプラス |
欧州株 | 下落 ↘ | 物価の高止まりが解消しなければ、株式相場にとってマイナス |
新興国株 | 上昇↗️ | 先進国株に比べて割安水準 |
2024年の投資戦略として王道なのは、日本株と米国株への投資でしょう。この2カ国の株式は、上昇する見込みが高く、投資家としては必ずチェックしておきたいです。ただ米国株は景気後退の懸念があるため、仮にFRBの金融政策が失敗し、株価が下落した場合はCFDを活用して売りから入っても良いでしょう。特にCFD取引であれば、多数の投資アセット、銘柄が取引できるので、様々なチャンスにアプローチすることが可能です。
欧州株への投資を検討されている方は物価状況を確認しましょう。物価が高止まり続ける場合は、利下げの可能性は低く株式にとってマイナスです。その場合は様子見をするのが無難でしょう。
バリュー株投資家は、新興国株への投資も検討してみてください。2023年は日本株と米国株をはじめとして先進国株式が大きく上昇しました。そのため新興国株式は相対的に割安となっており、上昇余地が残されていると見ることができます。
※2023年12月20日時点のマーケット状況をもとにした予想です。