「東日本大震災と協調介入」G7の協調介入はなぜ行われたのかを解説

まだ記憶に新しい2011年3月11日、M9クラスの地震が東日本を襲いました。この地震では、津波による死者や福島原発の原発事故の発生など、大きな爪痕を日本に残す大災害となりました。

「東日本大震災」の影響は日本経済、そして為替にも大きな影響をもたらしました。その中でも印象的なのが、「急激な円高」と「G7の協調介入」です。

本記事では、東日本大震災後に行われたG7の協調介入はなぜ行われたのか、どんな効果があったのかを中心に解説していきます。

毎年のように震災や自然災害が発生する日本において、過去の大災害後のマーケットの動きを知っておくことは、投資におけるリスク回避などのヒントとなり得ます。

1.東日本大震災発生後の日本の株式・為替市場

最初に、東日本大震災発生後の株式・為替市場はどのような値動きをしていたのか、確認しておきましょう。

1-1.日経平均は暴落

3月10日(木)までは値動きが緩やかなレンジ相場でしたが、東日本大震災発生直後(午後2時45分)に売り注文が殺到し日経平均は急落。わずか10分あまりで、100円以上の下げ幅を記録しました。終値は前日比179円安の1万0254円をつけました。この株価は、約1カ月半ぶりの低水準でした。

大震災の影響はこれだけでは終わりません。週明け3月14日(月)には633円安の9620円、3月15日(火)には、福島第1原発の放射線事故の影響を受けて投資家心理はさらに悪化、終値は1015円安(-10.55%)の8605円をつけました。これは海外投資家が、震災よりも「放射能」にリスクを覚えたためと言われています。

この下落率は、ブラックマンデー(1987年)、リーマンショック(2008)に続いて3番目に大きいものでした。

1-2.東日本大震災後は円高に

東日本大震災が発生直後は、米ドル円は日本売りから円安に振れました。しかし、徐々に被害規模が判明するにつれて、円高が急激に進みました。

特に、福島第一原発の放射能漏れが発覚すると、リスクオフの動きが一気に加速していき、一時的に円高は約76.2円まで進みました。

この急激な円高の背景には、生命・損害保険会社と海外ファンドも関係していると言われています。

▼東日本大震災で円高が進んが理由

1.生命・損害保険会社が保険金の支払いのため円を調達する必要が生じた
2.生命・損害保険会社は、円調達のため海外資産を売却するという噂が流れる
3.この噂を聞いた海外の投機的なファンドが大量に米ドル/円を空売り
4.震災の影響でマーケット参加者が減っており、急激な円高を招いた

つまり、震災直後の米ドル円の価格は適正な価格ではなく、海外の投機的なファンドによって意図的に操作された価格になっていたというわけです。

そして、この適正価格から乖離した円高を止めようと行われたのが、「G7による協調介入」です。

2.G7の協調介入とは

G7による協調介入とは何なのか、どのような目的で行われたのか、また、結果はどうたったのか解説していきます。

協調介入

協調介入とは、為替相場の急激な変動により、世界経済が混乱することを防ぐため、主に先進国の中央銀行が協力して為替市場に介入し、適正な為替相場に戻そうとする政策のことを指します。

東日本大震災の際に行われた協調介入は、G7(フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダ)の7カ国によって行われたため、「G7による協調介入」と言われています。

各国の中銀による協調介入の内容は以下の通りです。こうして、日本円を大量に売ることで過度に進んだ円高を抑えようとしました。なお、NY連銀の為替報告書によると、介入規模は10億ドルだったそうです。

介入内容と規模
日銀円売りドル買い|6925億円
米連邦準備理事会(FRB)円売りドル買い|830億円
欧州中央銀行(ECB)円売りユーロ買い
英中銀(イングランド銀行)円売り英ポンド買い|約120億円
カナダ中銀円売りドル買い|約100億円

3.G7の協調介入はなぜ行われたのか

G7による協調介入の目的ははっきりとしており「円相場を安定させ日本の経済・金融への悪影響を最小限にするため」です。

日本の基軸通貨である「日本円」の価値が急激に変動すると、輸出産業は特に大打撃を受けます。円の価値が上がると、日本からの輸出品の価格は上がり、その結果、日本企業の商品は相対的に高くなり、国際競争において不利になってしまいます。

国際競争で不利になると、日本製品が売れにくくなり、日本経済にも大きなダメージを与えてしまうというわけです。

そして、日本経済は米国やEU圏の国々とも深い繋がりをもっています。その日本経済が混乱に陥ったとすれば、経済的繋がりのある海外諸国にも悪影響を及ぼしかねません。

そこで、先進国のG7は、日本経済にこれ以上深手を負わせないためにも「協調介入」という手段をとるに至りました。

4.G7の協調介入の効果は

日銀を含めたG7による協調介入の効果は、すぐ現れました。3月18日の朝に、G7による電話会合が行われ、協調介入をするという姿勢で各国の合意が得られると、ドル高・円安がすすみました。

一時は約76円まで円高になっていましたが、協調介入後にはトレンドが転換。3週間後には、85円にまで円安がすすみました。

また、G7による電話会合では、「日本の経済・金融市場は強靭である」といった内容も話されたため、円相場は一旦落ち着きを取り戻しました。

協調介入には、マーケット参加者の冷静さを取り戻させる意味合いもあるため、その点でもG7の協調介入は非常に意味のある行動だったといえます。

株式投資においては「国策に売りなし」とよく言われます。為替市場において、為替介入は一定の効果がありますが、複数の国が強調する介入では、非常に大きな効果を生むことが分かります。

5.まとめ

今回は、東日本大震災がきっかけで起きた「急激な円高」と「G7による協調介入」について紹介してきました。

未曾有の事態には、マーケットの混乱がしばしば起こりますが、その度に世界各国は混乱を収束させようと様々な政策を行こなってきました。

こうした過去のマーケットを学ぶことは、長く相場の世界で収益を上げ続けていくためには必要なのではないでしょうか。

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