
この記事のポイント
- FXの年末年始は「元日休業」が基本
- クリスマスも一部休業になるFX会社が多い
- 年末年始は流動性の低下に注意が必要
- 年末年始は新規取引を控え、ポジション持ち越しもしないのが無難
平日の24時間いつでも取引が可能というのは、FXのメリットのひとつです。それゆえに取引時間がとても長いイメージがあるわけですが、年末年始の取引時間はどうなるのでしょうか?
これからFXを始めようと考えている人にとって「FXの年末年始」は未知の世界であり、知らないことによる不利があるのではないかとの不安もあるかもしれません。
そこで当記事では年末年始のFXがどうなるのかを解説しつつ、年末年始にある特有のリスクやその対策についても解説します。
FXの年末年始はどうなる?
FXの正式名称は、外国為替証拠金取引です。外国為替市場と関わりのある投資なので、年末年始などの休日も外国為替市場に準じたものとなります。
最初に、FXの年末年始はどんな扱いになるのかについて解説します。また、株式など他の投資との違いについても紹介したいと思います。
多くのFX会社は元日のみ休みになる
年末年始は多くの会社や学校などが休暇になりますが、そのなかでFXは元旦のみ休みになるのが一般的です。
こちらは、2023年の年末から2024年の年始にかけての、GMOクリック証券の営業スケジュールです。

2023年の年末はちょうど週末になったため、30日(土)と31日(日)は休みになりました。そして元旦は本来であれば平日ですが、休みです。
もう一点、12月25日も休みではないものの、「通常通り」ではなく取引時間が短くなっています。これについては、後述します。
主要FX会社の年末年始営業日(2023年〜2024年)
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---|---|---|---|---|
2023年 12月29日(金) | 通常通り | |||
12月30日(土) | 休業 | |||
12月31日(日) | 休業 | |||
2024年 1月1日(月) | 休業 | |||
1月2日(火) | 通常通り | |||
1月3日(水) | 通常通り | |||
1月4日(木) | 通常通り |
年末年始が週末になる場合
先ほどご覧いただいたGMOクリック証券の年末年始スケジュールでは、元旦が休みでした。年末の30日から元旦まで3連休となっていますが、これは30日と31日が土日だからです。大晦日が平日であれば通常通りの営業となり、元旦のみ休みになるFX会社が大半です。
これは多くのFX会社が申し合わせをして休みになっているわけではなく、元旦だけは世界中が祝日となり外国為替市場が休場となることが理由です。
クリスマスが休暇になる場合もある
先ほどのGMOクリック証券のスケジュールで述べたもうひとつの注目ポイントは、クリスマスの取引時間です。
「通常通り」であれば朝の7時から翌朝の7時まで、つまり24時間取引可能になるところですが、12月25日だけは朝の7時から15時30分までとなっています。
12月25日は、クリスマスです。日本では祝日ではありませんが、欧米諸国では重要な祝日になるため、外国為替市場のうちヨーロッパやアメリカの市場が休場になります。これらの市場の取引高が突出して大きいことを踏まえて、日本のFX会社の多くは日本時間のみの営業にして、欧州時間以降を休みにするケースが多いようです。
仮にクリスマスの取引が可能なFX会社があったとしても、この日は流動性が極端に低下するため、少し売買量が増えただけで大きな値動きにつながる可能性があります。突発的な値動きに振り回されて思わぬダメージを被る恐れもあるので、余程のことがない限り取引を控えたほうが無難です。こうした流動性低下にまつわるリスクについては後述します。
なお、クリスマスの翌日である12月26日についても英連邦諸国ではボクシングデーという祝日になるため、イギリスをはじめ英連邦諸国は休場になります。ただしクリスマス当日ほど流動性が低下することはないため、日本のFX会社の多くは通常どおりの取引時間になります。
年末年始のスワップポイントはカレンダー通り
FXのスワップポイントは、年末年始であっても基本的にカレンダーどおりです。一般的に土日はスワップポイントが付与されないため、その分平日に多めに付与する仕組みになっていますが、年末年始もそれと同様です。
先述のGMOクリック証券の場合、多くの通貨ペアでは年末の12月27日に6日分が付与され、年始には1月3日に4日分が付与され、付与されていない日の分を調整しています。
このように年末年始はイレギュラーになるものの、スワップポイントが毎日付与されるペースが変わるわけではありません。
株式投資とFXの違い
FXと並んで人気の株式投資は、証券取引所に上場している株式の売買をするため、取引時間は証券取引所の営業時間に準じます。
東京証券取引所の場合、年末の最終取引日は12月30日です。この日は大納会と呼ばれ、ゲストとして登場した著名人がその年の取引終了と同時に鐘を鳴らすのが通例となっています。ただし、12月30日が土日に当たる場合は、最終の平日が大納会になります。
新年は1月4日から取引開始となり、この日は大発会(だいはっかい)と呼ばれています。
FXのように元旦のみ休みになるわけではなく、おおむね社会全体の年末年始休暇に近いスケジュールです。
CFDやバイナリーオプションは証券会社によって対応が異なる
24時間取引が可能な投資商品は、FX以外にもあります。CFDやバイナリーオプションなどがその代表格ですが、これらのサービスについてはFX会社や証券会社によって年末年始の対応が異なります。
該当する口座を保有している人にはそれぞれの会社からメールで告知がありますし、公式サイトや取引画面などにも告知が表示されます。
こちらはFX会社から筆者のもとに届いた告知メールです。


メール本文だけでなく、メール内にあるリンク先に年末年始に関する詳しい告知があるので、こうしたメールが届いたら詳細情報もチェックしておきましょう。
年末年始のFX取引で注意したいこと
年末年始は取引が休みになる日に加えて、流動性の低下に注意する必要があります。流動性の低下とは取引量や市場参加者が減少することですが、それによって何が起きるのでしょうか?
ここでは、年末年始特有の注意点について解説します。
注意点① スプレッドが拡大しやすい
FXは取引量が少なくなると、売りと買いそれぞれの注文がマッチングしにくくなり、流動性が低下します。年末年始は市場参加者が少なくなるため、流動性が低下することによってスプレッドが拡大しやすくなります。
スプレッドはFXの実質的なコストなので、スプレッドが拡大すると取引コストが増大します。スイングトレードなどトレードの頻度が少ないのであれば影響は少ないですが、スキャルピングなどの短期売買を頻繁に行う投資スタイルでは不利になります。
注意点② 年始の寄り付きでの窓開け
FXは24時間相場が動いているため、日付が変わっても値動きに連続性があります。しかし、週末は相場が休みになるため、週末に大きなニュースなどがあると週明けの早朝時間に「窓開け」といって先週末から大きくレートが乖離した値が付くことがあります。
これと同様に年末年始にも相場が休みになるタイミングがあるため、休み明けの寄り付きでは前年末のレートと大きく乖離することがあります。しかも年が変わることで相場のトレンドや地合いが変わることも珍しくなく、通常の週末よりも年明けの寄り付きはレートの乖離が起きやすくなります。
ポジションを持ったまま年を越すと、思わぬレート変動で損失を被ってしまうリスクがあります。
注意点③ 薄商いを狙ったフラッシュクラッシュ
薄商い、つまり取引量が少なく流動性が低下しているときには、投機筋や大口投資家の仕掛け的な売買によって相場が大きく動くことがあります。年末年始は流動性が低下しているためこうした投機的な投資家に狙われやすく、フラッシュクラッシュへの注意が必要です。
代表的な事例が、2019年1月3日早朝に起きた米ドル/円のフラッシュクラッシュです。

こちらはその日を含む米ドル/円の日足チャートです。念のために矢印をつけましたが、もはやどこでフラッシュクラッシュが起きたのか言うまでもないと思います。108円台後半から104円台後半まで、わずかな時間で4円も下落しました。
日本はまだ正月休みだったこともあって不意をつかれた投資家は多く、「気づけばロスカットされていた」という投資家も少なくありません。
これは明らかに薄商いを狙った仕掛けであり、さらに近年はアルゴリズム取引によって相場に動意が生まれるとその方向に傾きやすいため、相場の動きが加速したものと思われます。
以後、年末年始はこうした動きに対して警戒する投資家が多くなりました。2024年の時点で年末年始にこうしたことは起きていませんが、今後また起きる可能性は大いにあるため、要注意です。
クリスマス休暇の急激な値動き
上記と同じ理由から、欧米がクリスマス休暇になる12月25日前後も薄商いであるがゆえに急激な値動きが起きやすくなります。欧米勢が休暇になるため投機筋の仕掛けは入りにくいですが、仕掛けがなくても流動性の低さによる極端な値動きはあり得ます。
このことを踏まえて、多くのFX会社は12月25日の15時前後から取引を休みにする措置をとっています。平日であっても15時以降は取引ができないことが多いため、いつもの感覚で注文を出していたとしても約定しないことがあります。その点にも注意してください。
年末年始のリスクに向けた対策
先ほど解説したFXの年末年始にひそむリスクを踏まえ、思わぬダメージを受けてしまわないための対策を紹介します。
年末年始は新規取引を控えたほうが無難
流動性の低さやイレギュラーな取引時間などの影響で荒い値動きに巻き込まれやすくなるため、年末年始に新たなポジションを建てることは控えたほうが無難でしょう。
スプレッドの拡大によって不利なレートで約定する可能性もあるため、敢えて新規取引をする時期ではないと思います。
年末年始のポジション持ち越しも控えるべき
特に必要性がない場合、年末年始のポジション持越しは控えたほうが無難です。スワップポイントがマイナスになるようなポジションの場合、年末年始は急激な値動きによる損失のリスクとマイナススワップの両方と戦うことになります。
リピート系自動売買を稼働させている場合やスワップポイント狙いでポジションを保有している場合を除けば、年末年始はできるだけポジションを持ち越さないことをおすすめします。
ポジションがある場合はストップ注文を入れておく
年末年始にポジションを持ち越す場合は、極端な値動きが起きたり年末までのトレンドが転換してしまうようなことがあるため、ストップ注文を入れてリスク管理を徹底しましょう。
ただし、ストップ注文をしておけば万全というわけではなく、フラッシュクラッシュのような一瞬の値動きがあった場合、その価格で約定するとは限らないのでご注意ください。
大切な資金を守るために「できる対策はすべてしておく」というスタンスは年始年末に関わらずつねに意識しておきたいところです。
スワップ狙いのポジションは証拠金維持率を高めておく
スワップポイント狙いで高金利通貨などのポジションを保有したまま年末年始を迎える場合は、一時的であっても資金を補充して証拠金維持率を高めておくのも有効な対策です。
というのもスワップポイント狙いで人気の高い高金利通貨は新興国通貨が多いため、流動性の問題で年末年始には値が飛びやすいリスクがあります。
そこで年末年始を乗り越えるために、一時的であっても資金的な余裕を積み増しておくことがリスク対策となります。
FXの年末年始対策はいつまでやるべき?
ここで解説しているFXの年末年始対策は、おおむね日本の正月休みが終わる1月3日まででよいでしょう。年末年始休暇が1月4日や1月5日までという会社は多いと思いますが、年末年始の特殊な相場環境は1月3日までと考えておいて問題ありません。
万全を期すのであれば1月4日までを年末年始と見なし、1月5日から通常の状態になるという考え方でもよいと思います。
海外FX業者の年末年始はどうなる?
ここまでは日本国内のFX会社の年末年始について解説しました。後述する理由から利用をおすすめしませんが、海外FX業者の年末年始対応についても解説しておきたいと思います。
日本国内に拠点がなく金融庁への登録もしていない無登録業者ですが、日本語で日本人向けにサービスを提供しています。そこで日本国内にある正規のFX会社との違いがあるのかという点についても解説します。
基本的に日本のFX会社と同じ
海外FX業者も、年末年始の取引時間などについてはほぼ日本国内のFX会社と同じです。クリスマスや元旦は取引が休みになりますし、それ以外については平日であれば営業しています。
ただし、英連邦のボクシングデーの影響もあってか12月25日だけでなく26日も休みになる業者が多いようです。
海外FX業者をおすすめしない理由
日本人向けにサービスを提供していることから海外FX業者の年末年始対応について触れましたが、当メディアでは海外FX業者の利用はおすすめしていません。理由はたくさんありますが、最も投資家にとってリスクだといえるのは出金トラブルや計画倒産を疑われるような事例があるからです。
海外FX業者の多くはゼロカットといって、ロスカットになって口座の残高がゼロになる以上の損失があったとしても、超過分は業者が負担するという仕組みを採用しています。これなら年末年始の急激な相場変動でロスカットになったとしても口座残高以上のマイナスになることはない、と安心してしまいそうになりますが、そもそも口座にある資金を出金できないようだと何のメリットにもなりません。
1,000倍を超えるようなハイレバレッジ取引も可能なので目立ちますが、これもギャンブル性を高めるだけでFXの本質ではありません。
【まとめ】FXの年末年始は要注意!
この記事のポイント
- FXの年末年始は「元日休業」が基本
- クリスマスも一部休業になるFX会社が多い
- 年末年始は流動性の低下に注意が必要
- 年末年始は新規取引を控え、ポジション持ち越しもしないのが無難
FX初心者、もしくはこれからFXを始めようと考えている人に向けて、FXの年末年始はどうなっているのか?という疑問にお答えしました。元旦が休みになるだけという意味ではそれほど通常時との違いはありませんが、流動性が低下する特殊な相場環境が生まれる時期でもあります。
こうした情報をしっかりと理解し、年末年始の思わぬ値動きに巻き込まれたり、正月休みの間にロスカットになってしまった、といったことがないようにしましょう。