
この記事のポイント
- FXを含む副業の年間合計が20万円以上の場合は確定申告が必要
- FXで損失が出た場合は繰越控除が受けられるので確定申告をした方が得
- FXの損益は株式や他の先物取引などの損益と損益通算ができる
- 確定申告はe-Taxを使えば自宅から手続きができて便利
FXの確定申告について詳しく知りたい、という方は多いと思います。
本記事では、FXの税率、確定申告の方法、損失の繰越控除、損益通算、確定申告しないとどうなるか、などFXの確定申告に関わる詳細についてわかりやすく解説します。
参考文献
・金融庁ホームページ
・国税庁ホームページ|所得税の確定申告
目次 ー Contents
FXの確定申告とは?
FXである程度の利益が出た場合は、その利益に応じて納税が必要です。まずは以下の項目から見ていきましょう。
- 確定申告とは?
- FXの税率について
- FXの税金が発生する利益とは?
確定申告とは?
確定申告とは所得税の申告のことで、毎年1月1日から12月31日までの1年間の所得とそれに応じた所得税を計算して納税することです。
会社員などで源泉徴収された税金や予定納税などがある人はそれに対する過不足を精算する手続きでもあります。
FXの税率について
日本国内のFX会社でFX取引を行い1年を通算して利益が出た場合には、他の所得金額に関わらず一律で20%(所得税15%、住民税5%)の税金が課されます。これを申告分離課税といいます。
また、2013年1月1日から2037年までの25年間は東日本大震災の復興特別所得税2.1%が課せられます
したがって、申告分離課税の所得税15%に2.1%の復興特別所得税が課せられ「15%×2.1%=0.315%」となり、合計で「15%+ 5%+ 0.315%=20.315%」がFXの税率です。
FXで課税される利益とは?
FXの利益には「為替差益によって発生した利益」と「スワップポイントによる利益」の2種類があり、そのどちらも課税対象です。ただし、個人の場合は12月31日から1月1日をまたぐ形で保有しているポジションの含み益やスワップポイントはその年の課税対象ではありません。
法人の場合は12月31日時点で保有しているポジションの含み損益は税務申告の対象です。
FXの確定申告が必要な人と必要のない人
FX取引で1円でもプラスになっていれば確定申告が必要かというとそうではありません。ここでは確定申告が必要な人と必要ではない人についてそれぞれ解説します。
FXの確定申告が必要な人
FXで利益が出た人で以下の項目に該当する人は確定申告が必要です。
- FXの利益を含む給与所得および退職所得以外の所得の年間の合計金額が20万円以上の場合
- 年間給与所得が2,000万円を超える場合
- 2か所以上から給与所得がある場合
- 医療費控除や住宅ローン控除の適用を受ける場合
FXの確定申告が必要ない人
以下のような人の場合は確定申告は必要ありません。
- 年収2,000万円未満の給与所得者で、1か所のみから給与所得があり、給与および退職所得以外の所得の年間合計金額が20万円以下の場合
- 公的年金などによる年間収入の合計が400万円以下の年金生活者、かつFXを含む公的年金以外の所得の年間合計金額が20万円以下の場合
- 給与所得のない扶養家族で、FXを含む所得の年間合計金額が48万円以下の場合
ただし、これらは一般的な場合なので、その他の条件次第では確定申告が必要になる場合もあります。また、所得税の確定申告のみが不要で住民税の確定申告は必要なことも。判断がつかないケースは所轄の税務署や税理士に相談してみるのが解決の近道です。
FXは損が出ても確定申告が必要?
FXで年間を通して損失が出た場合は確定申告は必要ありません。ただし、確定申告をした方が有利な2つの理由があります。
- FXの損失は繰越控除が受けられる
- FXの損益は損益通算ができる
それぞれ解説します。
FXの損失は繰越控除が受けられる
損失の繰越控除とは、損失を翌年以降の3年間にわたり繰り越すことをいいます。損失が繰り越せるため翌年の利益から繰り越した損失分が差し引かれ、課税対象利益が少なくなるため節税ができます。
下図のように今年120万円の損失が出たとします。翌年40万円の利益が出たとしても120万円の損失を繰り越していれば、まだ80万円のマイナス収支となり、税金はかかりません。
2年目に30万円の利益が出たとしても80万円の損失が繰り越されているため、まだ50万円のマイナス収支のため、この年も税金はかかりません。
3年目に35万円の利益が出た場合も、50万円の損失が繰り越されるのでマイナス15万円の収支となり、税金はかかりません。

このように損失を繰り越すことで翌年以降の節税が可能です。この損失の繰越控除を行うためには確定申告が毎年必要です。
FXの損益は損益通算ができる
損益通算とは、FXの損益と他の先物取引の損益を合算して申告することをいいます。例えば、FXで100万円の利益が出ても株の先物で200万円の損失が出た場合は、損益通算でマイナス100万円になるため、FXで出た100万円に税金はかかりません。
また損失は翌年以降に繰り越せるため、翌年以降も節税ができます。この損益通算を行うためには確定申告が必要です。
【ワンポイント】海外FX業者のケース
金融庁に認可を受けていない海外に拠点のある(もしくは体裁で運営している)、いわゆる「海外FX業者」は損益通算ができません。
FXの確定申告に必要な書類
FXの確定申告に必要な書類は以下の通りです。
- 申告書第一表、二表、三表
- 先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書
- 本人確認書類
- 所得税の確定申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)
それぞれ解説します。
必要書類① 申告書第一表、二表、三表
申告書第一表は収入、所得、所得から差し引かれる金額、税金の計算などの金額を記入する書類です。

申告書第二表は、所得の内訳、総合課税の譲渡所得や一時所得、社会保険控除等に関する事項、配偶者や親族に関する事項などを記入する書類です。

申告書第三表は申告分離課税用の書類で、FXの確定申告にはこれが必要です。FXで得られた収入、税金の計算などを記入します。

必要書類② 先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書
先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書は、先物取引の取引内容、収入金額、必要経費などを記入する書類です。

必要書類③ 本人確認書類
本人確認書類は2点必要です。
- 身元確認書類
- マイナンバー確認書類
【1】身元確認書類 運転免許証、マイナンバーカード、パスポート、健康保険証、住民票などのコピーを添付します。 |
【2】マイナンバー確認書類 マイナンバーカードがない場合は、マイナンバー番号確認書類としてマイナンバー通知カード、またはマイナンバーが記載された住民票なども添付する必要があります。 マイナンバーカードがあれば、マイナンバーカードのコピーのみで1と2を兼用できるため、その他書類のコピーは必要ありません。 |
必要書類④ 所得税の確定申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)
所得税の確定申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)は損失を繰り越す場合に必要な書類です。
翌年以降に繰り越す損失などを記入します。

FXの確定申告書の書き方
次にそれぞれの書類の具体的な記入方法について解説します。
申告書第一表
申告書第一表には収入、所得、社会保険料控除などを記入します。会社員の場合は勤務先から発行された源泉徴収票に書いてある金額を転記します。


申告書第二表
申告書第二表には所得の内訳に源泉徴収票に書かれてある金額を転記します。
「所得の内訳」の「所得の種類」と「種目」には「給与」と記入し、給与を支払っている会社の名前を記入して「収入金額」と「源泉徴収税額」は源泉徴収票に書かれてある源泉徴収税額を記入します。
「社会保険料控除等に関する事項」には、社会保険や生命保険などに支払った金額を記入します。
社会保険料は源泉徴収票に記載してある金額を記入し、生命保険などの場合は、実際に支払った金額を記入します。

先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書
申告書第三表を書くためにはこの書類が必要なので、先に作成します。
最初に所得の種類で、「雑所得用」を〇で囲みます。
「取引の内容」の「種類」には「FX」、「決済の方法」は「仕切」と記入します。
「総収入金額」の「差金等決済に係る利益または損失の額」には、為替差益による損益の合計金額を記入します。「その他収入」にはスワップポイントによる利益を記入します。
「必要経費等」の「その他の経費」には経費があれば記入します。FXの経費としては以下のようなものが認められる可能性があります。
FXの経費の例
・売買手数料、家賃の一部、光熱費、パソコン購入費、PC周辺機器、スマホ、インターネット通信料、セミナー参加費、セミナー参加費に係る交通費等、筆記用具購入費、図書費、借金の利息、FX関連ソフト代など

申告書第三表
申告書第三表は「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」で出た金額を記入します。
「収入金額」と「所得金額」には以下の要領で記入します。
・「収入金額」の「先物取引」には、「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」にある「総収入金額」の「計」④の金額を記入します。
・「所得金額」の「先物取引」には、「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」にある「所得金額」を記入します。
「税金の計算」は以下の要領で記入します。
・「総合課税の合計額」に申告書第一表の「所得金額等」の合計額を記入します。
・「所得から差し引かれる金額」には申告書第一表の「所得から差し引かれる金額」の合計額を記入します。
・「⑫対応分」には「総合課税の合計額⑫」から「所得から差し引かれる金額㉙」を差し引いた金額を記入します。
・「(72)対応分」には「所得金額」の「先物取引」に記入した金額を記入します。
・「(75)対応分」には「⑫対応分」に記入した雑所得の金額と以下の表を元に税額を計算して記入します。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
・「(80)対応分」には「所得金額」の「先物取引」に記入した金額に、所得税率である15%をかけた金額を記入します。
・「(83)から(90)までの合計」に「(75)対応分」と「(80)対応分」の合計金額を記入します。

所得税の確定申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)
所得税の確定申告付表(先物取引に係る繰越損失用)は記入項目ごとに記載要領が書いてあるので、それに従って記入します。

FXの確定申告書類の提出
FXの確定申告書類の提出方法は以下の3種類です。
- e-Tax(国税電子申告・納税システム)
- 税務署へ持参して提出
- 郵送して提出
それぞれ解説します。
e-Tax(国税電子申告・納税システム)

e-Taxとは、所得税、消費税、贈与税、印紙税、酒税などの申告や法定調書の提出、届出、申請などの手続きをインターネットを通じて行うシステムのことです。
e-Taxを利用すれば、自宅や事務所から確定申告を行うことができます。またここで紹介した申請書類などの計算も自動的に行ってくれるため計算ミスを最小限にできるメリットもあります。
e-Taxを利用するためには事前に準備が必要な場合があるので、はじめてe-Taxを利用する人は国税庁のe-Taxをよく読んで必要書類などを確認しておきしましょう。
税務署へ持参して提出
確定申告書類を作成し、添付書類など必要書類をすべて準備して税務署や税務署指定の確定申告会場に持参して確定申告を行うこともできます。
ただし確定申告会場は混み合うことが予想されます。特に申告期限間近や土日などは非常に混雑し、何時間も待ち時間が発生することもあります。
混雑を避けるためにも、e-Taxを利用することをおすすめします。
郵送して提出
作成した確定申告書類は郵送で税務署に提出することもできます。確定申告書を郵送で提出する場合は、通信日付印によって表示された日が提出日とみなされますが、申告期限には余裕をもって提出することを心がけましょう。
FXの確定申告をしないとどうなる?
FXで利益が出たにもかかわらず、確定申告をしないとどうなるのでしょうか? 結論からいいますと、デメリットしかありません。
顧客の情報は税務署に筒抜け
FX会社は毎年顧客の情報を税務署に報告する義務があります。そのためすべての顧客の損益状況は税務署に提出されています。あなたがFX取引で得た利益は税務署に把握されていると思ってください。
確定申告をする必要があるだけの利益が出ているにもかかわらず、申告も納税もしないと脱税になります。
確定申告を忘れていたり意図的に申告していない場合で、税務署から何も連絡がない場合でも、税務署は見逃してくれているわけではなく、数年後に税務調査が来る可能性は十分にあり得ます。
無申告加算税が課せられる
申告しなければならない利益があるのに確定申告を行わないと、無申告加算税が課せられます。
無申告加算税の税率は未納税額が50万円までの場合は15%、50万円を超えると20%です。
また期限を過ぎた後に税務署の調査を受ける前に自主的に申告すると、無申告加算税率は5%に軽減されます。もし確定申告期限に間に合わなかった正当な理由が認められれば、無申告加算税は課せられません。
延滞税が課せられる
期限内に納税されなかった場合は延滞税が課せられます。延滞税率は申告期限を過ぎて2か月までは原則7.3%、それ以降は原則14.6%です。
期限内に確定申告を行わなかったり行えなかった場合の無申告加算税は免除される場合がありますが、延滞税の免除はありません。
延滞税(令和3年1月1日以後の割合)
2か月経過する日まで | いずれかの低い方 a)7.3% b)延滞税特例基準割合+1% | bの割合 年2.4% |
2か月経過した日以降 | いずれかの低い方 a)14.6% b)延滞税特例基準割合+7.3% | bの割合 年8.7% |
重加算税が課されることもある
確定申告と納税を行わず税務調査を受けた際に、申告内容を偽装したり事実を隠ぺいしたりして脱税の事実が認められると重加算税が課せられます。
重加算税は非常に重いペナルティで、本来支払うべき納税額に対して35%〜50%が上乗せされます。
差押えの可能性がある
納付期限を過ぎても税金が納付されない場合は、税務署から督促状が送付されます。その後も税金の納付が行われない場合は、給与や財産の差押えが行われます。
刑事罰の可能性がある
所得を過少申告したり、所得を隠ぺいしたりして「脱税」と判断されると、所得税法違反を問われ、刑事罰が科される可能性があります。
脱税の刑事罰は10年以下の懲役か1,000万円以下の罰金、またはその両方です。
FXの確定申告に関するFAQ
FXの確定申告に関するよくある質問を見ていきましょう。
未決済ポジションは課税対象になる?
いいえ。個人の場合は12月31日〜1月1日をまたぐ未決済ポジションの含み益はその年の課税対象にはなりません。ただし、年をまたぐ未決済ポジションとは、日本時間の1月1日のNYクローズの時点でポジションを保有している必要があります。日本時間の1月1日00:00を過ぎればよいわけではないので注意が必要です。
また、法人の場合の未決済ポジションの含み益はその年の課税対象になります。
未決済ポジションのスワップは課税対象?
いいえ。個人の場合は12月31日〜1月1日をまたぐ未決済ポジションのスワップポイントはその年の課税対象にはなりません。ただし、年をまたぐ未決済ポジションとは、日本時間の1月1日のNYクローズの時点でポジションを保有している必要があります。日本時間の1月1日00:00を過ぎれば良いわけではないので注意が必要です。
また、法人の場合の未決済ポジションのスワップポイントはその年の課税対象になります。
課税対象期間はいつからいつまで?
毎年1月1日から12月31日までの1年が課税対象期間です。
確定申告の期限はいつまで?
翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告を行う必要があります。
複数のFX会社の口座は合算できる?
はい、できます。損益通算といい、すべてのFX会社の口座で発生した損益を合算した金額に対して課税されます。
またFX以外ではCFD(差金決済取引)、バイナリーオプション、商品先物、日経225先物、TOPIX先物などが損益通算対象です。
なお、仮想通貨や上場株式、海外FXなどの「先物取引に係る雑所得等」に属さない取引の損益とは損益通算できないので注意してください。
何が経費として認められる?
一般的には以下の費用が経費として認められると考えられます。
売買手数料、家賃の一部、光熱費、パソコン購入費、PC周辺機器、スマホ、インターネット通信料、セミナー参加費、セミナー参加費に係る交通費等、筆記用具購入費、図書費、借金の利息、FX関連ソフト代など
ただし、最終的には所轄の税務署の判断になるので、これらすべてが認められることが保証されているわけではありません。
法人口座の税金はどうなる?
法人口座の利益は原則的に「事業所得」となるため法人税の課税対象となります。FXで得た利益とその他事業所得を合算して課税所得を計算して納税してください。
また課税所得がマイナス収支となった場合は、青色申告の届出が出されている場合は損失は10年間繰り越すことができます。
個人口座と法人口座は合算できる?
いいえ。個人口座と法人口座を合算して確定申告することはできません。個人口座は所得税、法人口座は法人税の課税区分なので、それぞれの手続きでの納税が必要です。
確定申告にマイナンバーは必要?
はい。確定申告書類を提出する際にはマイナンバーの記載が必要です。
くりっく365の損益は合算できる?
はい。くりっく365の取引で得られた利益は申告分離課税区分なので、くりっく365以外のFXの損益と合算して課税所得を計算できます。
専業主婦や学生などの扶養家族も確定申告は必要?
FXを含めた年間所得が48万円(基礎控除額)を超えている場合は、基本的に確定申告が必要になります。
なお、申告の必要がないケースもあるので、詳しくは所轄の税務署や税理士に確認しましょう。
【まとめ】FXの確定申告は損失が出た場合こそやるべき
この記事のポイント
- FXを含む副業の年間合計が20万円以上の場合は確定申告が必要
- FXで損失が出た場合は繰越控除が受けられるので確定申告をした方が得
- FXの損益は株式や他の先物取引などの損益と損益通算ができる
- 確定申告はe-Taxを使えば自宅から手続きができて便利
FXで得られた利益が一定水準を超えた場合は確定申告が必要です。また損失が出た場合には繰越控除が受けられ、損益は他の先物取引との損益通算もできます。
e-Taxを利用すれば自宅から簡単に確定申告ができるので時間も手間も節約できておすすめです。